2024年9月24日 9月定例議会《代表質問》

県政クラブの石黒覚でございます。

 私くしからも令和6年度9月定例会、県政クラブを代表致しまして質問を申し上げさせて頂きたいと存じます。

 去る7月25日に本県を襲いました大雨による甚大な被害にあわれました皆様方に、改めまして心よりのお見舞いを申し上げますと共に、犠牲になられました三名の方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

 そして先週末から、またしても全国各地、県内各地で大雨による被害が発生、中でも今年元日に能登半島地震に襲われ、甚大な被害にあわれ今なお避難生活の中にあり、復旧工事が進められる能登半島を大雨が容赦なく襲い、仮設住宅まで床上浸水という惨状、復旧工事にあたる作業員が犠牲になった報道に、お掛けする言葉もみつかりません。

 地球温暖化に起因する過去に経験したことのないような大雨をはじめとする自然災害への対応は、地球規模での対応が求められていることは言うまでもないところでございます。

吉村美栄子知事におかれましては、令和2年8月6日全国知事会「第1回ゼロカーボン社会構築プロジェクトチーム会議」におきまして、2050年までに二酸化炭素排出の実質ゼロを目指す「ゼロカーボンやまがた2050」を宣言されました。このことは、国に先駆けてのご決断であったと同時に、その後の全国的なゼロカーボンへの取組みを加速させる力となったものと高く評価致しております。こうした取組を加速することが、災害に苦しむ県民の安全・安心に大きくつながることを、改めて肝に銘じなければなりません。

一方で、こうした災害に見舞われました多くの被災者の皆様方に対しまして、フランス、パリで開催されましたオリンピック・パラリンピックにおきましては、我が国選手の大活躍に勇気づけられたものと思います。本県選手団の活躍も目覚ましく、中でもレスリング女子76kg級金メダリストの鏡優翔(ゆうか)選手におかれましては、県民栄誉賞が贈られることが決定されました。誠にご同慶の至りに存じます。

 それでは、通告に従いまして質問に入らせて頂きます。

1 吉村県政4期16年の総括と成果について(知事)

はじめに、吉村知事4期16年の県政運営の成果と本県をさらに発展させる方向について、知事にお伺い致したいと存じます。

 1期目のマニフェストには、プラスの県政へ向かう県政運営の4つの基本方針、

1.ムダを廃し、すべては県民のために

2.一律削減から脱却、メリハリのある予算編成

3.県民優先主義、県内経済のための地産地消

4.県民・市町村・現場が求める政策を最優先

を掲げられ、目標値も定めながら、的確な施策展開によって厳しい中にも、着実に成果を上げました。

 2期目は、「県民一人ひとりが喜びと幸せを実感し、活き活きと輝いて生きていける山形県」の実現を掲げられ、

 1.県勢の発展を担い、未来を築く子育て支援・人づくりの充実

 2.いのちと暮らしを守る安全・安心な社会の構築

 3.強みと特色を活かした産業振興・雇用創出

 4.高い競争力を持ち、豊かな地域をつくる農林水産業の展開

 5.エネルギーを安定供給し、持続的な発展を可能にする

環境資産の保全・創造・活用

 6.地域活力を生み出し災害に強い県土基盤の形成

を掲げられました。一方で、「持続可能な財政基盤の確立のための行財政改革の推進」を打ち出し、

 1.県民参加による県づくりの推進

 2.県民視点に立った県政運営の推進

 3.自主性・自立性の高い県政運営を支える基盤づくり

に力を入れてこられました。直近の状況では、待機児童ゼロの実現や私立学校運営費補助全国6位、県審議会等における女性委員の割合50%以上達成、山形県受動喫煙防止条例制定、自主防災組織率92.4%。産業面では、有機EL開発から市場拡大、慶應先端研発ベンチャー企業創出、中国・台湾はじめ世界各国へ輸出拡大。農業分野では、農林水産業を起点とする産出額3千億円達成、新規就農者8年連続300人以上で東北ナンバーワン。国際チャーター便就航と通年化の実現、外航クルーズ船の本県初寄港と寄港拡大、など枚挙にいとまがありません。

 3期目は、「自然と文明が調和した新理想郷山形」を掲げ「5つのチャレンジ」を展開しています。

 1.県民総活躍

 2.産業イノベーション

 3.若者の希望実現

 4.健康安心社会

 5.県土強靭化

でございます。また、令和2年3月には「人と自然がいきいきと調和し、真の豊かさと幸せを実感できる山形」を基本目標とした「第4次山形県総合発展計画」を策定されております。吉村県政12年の成果を踏まえた、新たな本県の未来を切り拓くための「発展計画」に他なりません。

 そして4期目は、「コロナ克服・山形経済再生!県民とともにさらに輝かしい山形の未来を創る!」を掲げられ、

 1.「子育てするなら山形県」の実現

 2.「健康長寿日本一」の実現

 3.県民幸せデジタル化

 4.「1人当たり県民所得」の向上

 5.やまがた強靭化

をめざし、世界的なパンデミックに襲われた「新型コロナウイルス感染症」との闘いの日々が続く四期目は、県民の恐怖と不安を和らげる、まさに県民に寄り添った的確な施策を国と共に進め大きな評価を頂いたことは、記憶に新しいところでございます。

 2009年2月14日、第17代山形県知事にご就任以来、4期16年にわたる県政運営は、激動の荒海の中でのかじ取り役であったと存じます。

 1期目のスタートは、2008年9月、ご就任の前年に発生した「リーマンショック」により、世界的に金融危機に瀕している時でございました。就任2年後の2011年3月11日には、千年に一度と言われた「東日本大震災」そして「福島第一原発事故」発生という、あの日から13年6ヶ月の歳月が流れる中においても、今なお故郷に帰ることができない避難者と被災地を支え続けております。その後も、地球温暖化に起因すると言われる、これまで経験したことがない巨大な自然災害の発生が続く中、本県におきましても「爆弾低気圧」「巨大台風」「山形県沖地震」「ゲリラ豪雨」そして「新型コロナウイルス感染症」など。

 吉村美栄子知事の16年は、言葉では言い表せないほどの社会的不安が拡大した地球規模での変革の16年であったという他はありません。しかしながら、こうした中においても一貫して「心の通うあったかい県政」を推し進め、県民皆様方に寄り添いながら、「安心・安全」な県づくりに、まっすぐに取り組んでこられ、しなやかな感性と視点から、本県における重要な課題解決のための施策展開が、大きく前進した16年であったと高く評価致すものでございます。そこで吉村知事ご自身が、4期16年の県政運営をどのように振り返り、次代を担う若者や子供たちが、さらに大きな希望を描いて愛する郷土を生き抜くための未来に成果を届けてこられたのか、お伺い致したいと存じます。

                   

2 今後の県政運営について(知事)

次に、令和7年度の県政運営の基本的考え方についてお伺い致します。

 昨年5月に、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類に移行されたことを契機に、コロナ後の新たな県づくりが本格的に進んでいるものと認識致しております。この間、社会経済活動の正常化が進み、観光や飲食の現場では、人々の賑わいや個人消費の回復などもみられるようになったと思います。

 一方、足元では、原油価格・物価の高騰は依然として継続しており、収束の見通しは立たず、地域経済や県民生活への影響が長期化致しております。これに加え、地球温暖化を通り越し、「地球沸騰化」とも形容される、近年の気候変動は、農作物の生育への影響や、この夏、山形県北部を中心に甚大な被害をもたらした大規模な自然災害を引き起こすなど、新型コロナの感染拡大が収束したとは言え、大きな脅威として我々の目の前に立ちはだかっております。

 また、本県の構造的な課題である人口減少の加速にも歯止めがかからず、今年6月に厚生労働省が公表した「人口動態統計(概数)」の結果によりますと、山形県の1人の女性が一生のうちに産む子どもの数の指標となる「合計特殊出生率」は、前の年から0.1ポイント減って1.22となり、これまでで最も低くなり、去年1年間に、県内で生まれた子どもの数も5,151人と、過去最少の結果となりました。山形県の総人口は今年8月1日現在で、101万2,728人となっております。総人口100万人を維持することは、本県にとっては心理的な防波堤のようなものでありますが、100万人を割り込むことは、現実のこととして、受け入れていかなければならない事実と思われます。こうした現実をしっかりと受け止めながらも、一方でこれに一喜一憂することなく、県政を前に進めていくことが、吉村県政にとって最も重要なことであり、ここ山形県でいつまでも安心して住み続けたいという県民の希望を叶えていくことが、使命であると考えております。デジタル技術の進展や多様な働き方や暮らし方、価値観の多様化、さらには、地方生活の良さの再認識など、新型コロナは負の側面だけでなく、これからの地方の発展のために追い風となる産物も多く残したと思います。

 吉村知事は、こうした状況を捉えられて、今年2月定例会の知事説明において、「本県が持続的に発展していくために必要となるのは、『変革への果敢な挑戦』である」と力強く述べられました。時代の変化に正面から向き合い、逆境の中にこそチャンスがあると捉え、県執行部と県議会が、県政推進の両翼として、建設的な議論を重ね、県民がいつまでも安心して山形で暮らし、県民一人ひとりが夢や希望を実現できるよう、県民のチャレンジを後押ししていくことが大変重要であると考えているところでございます。本定例会において、令和7年度の県政運営の基本的考え方の案が示されました。中長期を見据えた「人口減少対策」などの方向性が掲げられております。

 私くしは、来年度、吉村県政継続の強いリーダーシップのもとに進むものと考えておりますが、「100万県民の未来を切り拓く」ため、具体的にどのような点を重視して県政を運営していくお考えなのか、また、来るべき来年1月の知事選挙に向かうお覚悟について、併せて吉村知事にお伺いいたしたいと存じます。

3 東北公益文科大学の機能強化の方向性と公立化に向けた進め方について(総務部長)

 次に、東北公益文科大学の機能強化の方向性と公立化に向けた進め方についてお伺い致します。

 去る8月8日、県と庄内2市3町そして学校法人東北公益文科大学が「公立化及び機能強化に関する基本合意」に至り、基本合意書の取り交わしが行われました。まずは本県高等教育の重要性に鑑み「教育は100年の大計」をまさにご判断され、ご決断頂いた吉村知事はじめ2市3町の首長の皆様、学校法人の新田理事長には、衷心より深く敬意を申し上げる次第でございます。また、ここまで様々な課題を見事にクリアする手配をされました全ての関係職員の方々にも、改めまして衷心より敬意と感謝を申し上げたいと存じます。

 東北公益文科大学の公立化につきましては、2017年4月頃に、非公式ではあったと思いますが大学法人側から「公立化の検討」の要請がなされたと記憶いたしております。以来2年後の2019年に庄内広域行政組合として2市3町による勉強会が開始され、県もオブザーバー出席し本格的議論が動き出しました。7年半の歳月を越えて、本県の未来を創る人材の育成が、さらに安定的に進められることになりましたことは、この間、様々な場面で発言させて頂いた者と致しまして、心より嬉しく思うところでございます。

 さて、「公立化及び機能強化に関する基本合意」は、まさにスタートラインに立ったということだと思います。吉村知事は「より魅力的で特色ある大学として地域課題の解決に一層貢献できるよう、公立化と機能強化に向けて、関係者一丸となって取り組む」とご挨拶されました。大学ではこれまで、「(ぎょう)レ業(をおこす)研究所」を立ち上げ、起業家を育てる教育の必要性を強調してきたところでございます。また、大学側では、国際学部国際コミュニケーション学科の新設の準備も進められております。機能強化の視点としましては、「地域の企業・自治体等との連携強化による地域課題解決」、「デジタル化をリードする人材の育成」、「国内外を開拓する人材の育成」を掲げているようでございますが、公立化後の大学の機能強化についてどのように考えておられるのか、また、2026年4月を目指し、公立化を進めることになるわけですが、残り1年半、申請業務などの準備をどう進めていくのか、現段階でのお考えを総務部長にお伺い致します。

4 山形県エネルギー戦略の方向について(環境エネルギー部長)

 次に、本県エネルギー戦略の新たな目標の考え方と今後の取組みについてお伺い致します。

 本県では、平成24年3月に「山形県エネルギー戦略」を策定し、再生可能エネルギーの導入拡大を進めてきております。東日本大震災に伴う大規模停電や燃料の供給不足という状況、そして福島第一原発事故を踏まえ、エネルギーの安定確保と安全で持続可能な再生可能エネルギーの導入拡大が課題となる中において、「卒原発社会」の実現をめざし、101.5万kWという高い目標を掲げた「山形県エネルギー戦略」がスタートしたのでございます。 当時としましては、極めてハードルが高いと感じられた101.5万kWの開発目標でありますが、令和5年度末現在で72万kWまで開発が進んでおり、エネルギー戦略の策定からこれまでの12年間、取組みがしっかりと進められたことにより、目標達成に向けて順調に推移してきたものと認識を致しております。しかしながら、短時間に降る強い雨の増加や、気温の上昇など、地球温暖化の影響が極めて顕著に感じられる今、カーボンニュートラルの実現は、私たちに課せられた大きな使命であると、ますます強く感じているところでございます。

 カーボンニュートラル実現に向けましては、様々な取組みが必要となってまいりますが、その中でも最も有力な手段は、再生可能エネルギーの活用であると考えますので、その導入拡大は非常に重要となってまいります。こうした中で、吉村知事はエネルギー戦略を見直し、新たな開発目標を153万kWとされました。これは、これまでの約1.5倍となる高い目標でありますし、まさしく求められているものであると同時に、その実現までには高いハードルがあるチャレンジングな目標でもあると考えるところでございます。新たな開発目標達成までに必要な開発量をエネルギー種別にみますと、主に、電源では風力発電について、熱源では太陽熱や地中熱等について、今後大きく開発していくこととされております。この新たな開発目標について、その設定にあたっての考え方はどのようなものか、また、目標達成に向けて今後どのように取り組んでいかれるのか、環境エネルギー部長にお伺い致します。

5 7月豪雨災害における山地災害の復旧と営農継続支援について(農林水産部長)

 次に、7月豪雨災害における山地災害の復旧と営農継続支援についてお伺い致します。

 前段でも触れさせて頂きましたが、本県における自然災害の記録の中で最大の被害額となりました、この度の豪雨災害。7月29日に国道344号が通行止めとなっている中、地元の方の案内で林道を抜け北青沢に入ると、克雪センターに避難されている自治会役員の方々に話を伺おうと致しましたら「まずみでこい、わらうすかねいがら」と言われ、集落の中に向いました。間もなく目に入ってきた目の前の惨事は、筆舌にしがたいものでございました。

 建築士の私にとりましては、数々の地震を経験して耐震性能を強化したり、台風など風圧力に対して強化したり、建築基準法の度重なる改正に従った建物の強化が進む一方で荒瀬川本流に至る手前の集落背後から流れる小さな沢が、想像すらできない雨によって、山が崩壊し、土砂が激流に運ばれ、建物の1階を埋め尽くす、建物は建っているのに水と土砂による破壊、現建築基準法では対処の方法がないと言っても過言ではない。自治会役員さんが「まずみでこい、わらうすかねいがら」という心境に、その状況を目の当たりにして涙が流れました。

(1) 山地災害の状況と復旧に向けた取組みについて

 さて、この度の豪雨災害の状況の中で、河川本流の堤防決壊や越水等はもちろんですが、山の崩壊とその土砂を運ぶ小さな沢の氾濫による異様な土砂流出による集落破壊が気になるところでございました。素人の私が、とやかく言える立場にないことは承知いたしながらも、県土面積の約7割を占めている山で、何が変わっているのか、本県に止まらず全国の山が、地球環境の変化の中で、山が持つと言われてきた、木材を始めとする私たちの生活の営みへの恵みや保水力による水量の調節など、あるいは度重なる巨大地震で山が緩んでしまうことなどあるのでしょうか。吉村知事におかれましては、本県における災害で最も甚大なこの度の豪雨災害後に、ヘリコプターで上空から被災状況を調査されたと伺っております。

 こうした状況を踏まえ、山地災害の発生箇所の治山事業による早期復旧の進め方、山地災害発生の要因に関する検証の必要性、やまがた緑環境税等を活用した森林の有する公益的機能の更なる発揮について、農林水産部長にお伺い致します。

(2) 被災農業者の営農継続に向けた取組みについて

 そして、この惨事は農地も同様で、あの時、あと一月半もすると頭を垂れた実りの秋を迎え、収穫の喜びを分かち合えたことを考えると、胸が締め付けられる思いでございます。農地を埋め尽くした土砂、流木など、水路や河川からの用水施設など、復旧に何年要するのかすら予想できない状況に、農業を継続することが極めて厳しいとの判断を、口にされる農家の方々へ、返す言葉さえみつからず、黙って聞くことしかできない無力さを痛感いたしたところでございます。今年の初めに、全国農業協同組合中央会が農林業センサスを基に「基幹的農業従事者数」の推計を発表しました。2005年に224万1千人であったものが、2020年には136万3千人まで減少し、内65歳以上の方々が70%です。2050年、今から約25年後、驚くことに36万人に減少するとあります。

 ここでこのことについて論じることは致しません。この度の本県を襲った豪雨災害で、心が折れてしまい、この先、農地が復旧しても農業を続けることができない方々が多くいらっしゃるとすれば、本県農業の基盤が揺らぎかねない事態になるのではないかと、考えてしまうのは大げさな事なのでしょうか。

 私くしは、少なくとも復旧までの耕作できない期間に、農業者の方々のモチベーションを維持するための、施策が必要不可欠ではないかと考えるところでございます。デジタル社会の急速な進展によって、第一次産業である農林水産業も、確かに農作業のデジタル化は進展していると考えます。しかしながら、農林水産物を生産するのはどんな時代になっても「人」なのだということをもう一度肝に銘じなければ、25年後の推計値は、はるかに速いスピードで進むことになると言わざるを得ません。

 先日、私たち県政クラブ「やまがた農林水産所得向上・元気戦略会議」主催の林業現地調査が実施されました。最上町の隣県との県境に近い国有林で働く、高校卒業から間もない10代、農林大学校卒業の20代前半の若者たちが意欲的に間伐作業に従事する姿に感動させられました。農業でも本県は若い方々の新規就農者が東北で一番という実績もあります。

 しかしながら、近年激増する自然災害や異常気象によって様々な影響が生じています。ここ数年で発生した豪雨災害による農地被害や、山地被害、サクランボをはじめとする果樹の凍霜害や高温障害、昨年のような高温少雨による米の品質低下、そしてこの度の豪雨災害と度重なる災害に農業者は心身が疲労困憊状態にあるのではないでしょうか。

 こうした状況をどのように捉えておられるのか、そしてこの度の豪雨災害の被災農業者の方々の「心のケア」を含めた農業を続けて頂くための施策は、どのように進めていかれるのか、農林水産部長にお伺い致します。

6 本県漁業の現状と今後の振興策について(農林水産部長)

 次に漁業の現状と今後の振興策についてお伺いいたします。

 今年の庄内は記録的な大雨に見舞われましたが、それでも夏の庄内を代表する味覚である「岩ガキ」を求めて、海鮮市場や道の駅には、多くの観光客などが訪れておりました。庄内浜で水揚げされる魚介類は、全国的に見れば少量であるものの、多品種であることが特徴であり、春のサクラマスにはじまり、夏は岩ガキのほかにも、スルメイカや口細カレイ、ノドグロなどを味わうことができます。秋になればサワラやアオリイカ、冬には寒ダラをはじめとする白身魚など、1年を通して、様々な旬の魚介類を味わうことができるのが、庄内浜の特色であり、観光資源としての強みでもあります。

 しかし、近年の漁業を取り巻く環境は資源の減少や海水温度の上昇など厳しいものとなっており、獲れる魚種や量が急激に変化してきております。気象庁によれば、昨年の日本海中部の平均海面水温は平年より2℃以上高かったということであり、魚にとっては水温が2℃上がるという事態は相当な環境変化なのだと、県漁協の関係者からお聞きいたしております。

 主力魚種であるスルメイカをはじめ、多くの魚種で漁獲量の深刻な減少が見られているほか、漁業の担い手不足や高齢化も進行しており、先月30日に公表されました2023年漁業センサスの概数値によりますと、令和5年の本県における漁業就業者数は292人であり、前回調査の平成30年と比較し76人、率にして約20%の減少という厳しい結果が示されたところでございます。

 一方で、県ではこれまで、「庄内北前ガニ」、「庄内おばこサワラ」、「天然トラフグ」などといった魚種のブランド化や漁業試験調査船「最上丸」を活用した漁場開拓や漁況の情報発信、船上での活〆技術の開発及び普及による水産物の高鮮度・高付加価値化、さらには行政と飲食店が一体となった魚食普及キャンペーンの展開など、庄内浜の水産物の価値向上に向けた様々な取組みは評価に値すべきものであり、今日の庄内浜ブランドの確立と認知度向上に寄与しているものと認識致しております。

 漁業を取り巻く環境が厳しいのは、本県のみではなく、全国的なものでありますので、ピンチをチャンスと捉え、庄内浜の漁業振興を力強く推し進めていかなければならないとの思いでございます。

 そこで、現在の本県の漁業の現状をどう捉えておられるのか、これを踏まえて今後の水産業の成長産業化に向けて、どのような戦略を持って漁業振興策及び担い手確保策に取り組んでいかれるのか、農林水産部長にお伺い申し上げ、私くしからの代表質問とさせて頂きます。

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2024年6月定例議会 7月5日最終日【発議13号山形県笑いで健康づくり推進条例に対する反対討論述べる】

ただ今議題となっております「発議第13号 山形県笑いで健康づくり推進条例の設定について」県政クラブを代表して反対の立場から討論申し上げます

 私たちの健康増進に、効果が高いとされる日常活動は、多数存在することが近年、多くの調査や研究で明らかになってきていることは、承知致しております。当条例案で扱われております「笑い」もそうでありましょう。涙を流すことはストレスホルモンを体外に排出する効果があると言われます。かつて訪れた中国紹興市では早朝に小高い丘で「腹から大声を上げる」健康法を教えて頂いたことがあります。

 いずれも、個々の判断によって、自らにふさわしい健康法を選び遂行することが、好ましく、その効果をさらに高めるものであろうと思うところであります。

 この度の「発議第13号 山形県笑いで健康づくり推進条例の設定について」は、笑いに特化し、毎月8日を県民笑いで健康づくり推進の日に定め、県、事業者、県民にそれぞれ役割を課すものになっており、県民は1日1回笑うことに努めるとあります。

 人は生まれながらにして笑うことが困難な障がいを抱えている方もいます。病気やケガによって、笑うことが困難になった方もいます。本県サクランボ農家の方々は今笑える状況にありますでしょうか。人はそれぞれが持つ困難に立ち向かいながら懸命に生きているものであります。

 笑うことが健康に良いことを否定するものではありません。しかし、県民の最高規範である条例に定めることによって、笑うことが困難な方々の人権を損なうことがあってはならないと強く考えるところであります。他県の取組みについての提出者の説明には、北海道、福井県、大阪府いずれも条例ではなく、健康増進計画や県民の理解推進など、決して笑いを課すものではなく、活動、運動の方向を共有するものだと理解致します。

 改めてもう一度申し上げます、笑うことが健康に良いことを否定するものではありません。しかし、県民の最高規範である条例に定めることによって、笑うことが困難な方々の人権を損なうことがあってはならないと強く考えるところであります。

よって、発議第13号山形県笑いで健康づくり推進条例案については、反対の意を強く示し、討論とさせて頂きます。

  令和6年6月定例会 7月5日(金)本会議

  討論者  県政クラブ  石黒 覚

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令和6年7月9日

山形県条例第59号

山形県笑いで健康づくり推進条例

県民一人一人が心身ともに健康で充実した生活を送ることは、県民の幸福にとって基本となるものである。近年、少子高齢化の進行や疾病構造の変化等、県民の健康を取り巻く環境は変化しており、県民が明るく健康的に暮らしていくため、心身の健康づくりに取り組むことが求められている。

笑うことが健康に良いということは経験的に知られてきたところであるが、県民を対象とした研究によれば、声を出して笑う頻度が高い人は死亡のリスクが低いという結果も出ており、他にも笑いによる運動効果、心理的負担の軽減効果、他者とのつながりを豊かにする社会的な効果等が様々な研究において示されているところである。

このことから、県民一人一人が笑うことによる効果等に関心を持ち、理解を深めることで、健康の増進に生かすとともに、笑いが伝わり、笑いで人と人とがより良い関係を構築することが期待される。家庭や職場等で笑いによる心身の健康づくりを推進することにより、明るく健康的な県民生活の実現を目指して、この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、笑いによる心身の健康づくりの推進に関し、県民笑いで健康づくり推進の日を設けるとともに、県、事業者及び県民の役割を明らかにすることにより、明るく健康的な県民生活の実現に寄与することを目的とする。

(県民笑いで健康づくり推進の日)

第2条 笑いによる心身の健康づくりについて、県民の関心と理解を深めるとともに、笑いによる心身の健康づくりへの取組が積極的に行われるようにするため、県民笑いで健康づくり推進の日を設ける。

2 県民笑いで健康づくり推進の日は、毎月8日とする。

(県の役割)

第3条 県は、この条例の目的を達成するため、健康、医療、福祉等に関する団体、笑いに満ちたまちづくりに取り組む者等と連携し、県民の笑いによる心身の健康づくりに関する意識の啓発に努めるものとする。

(事業者の役割)

第4条 事業者は、その業務の遂行に支障のない範囲内において、笑いに満ちた職場環境の整備等、従業員の笑いによる心身の健康づくりを推進するよう努めるものとする。

(県民の役割)

第5条 県民は、笑うことが健康にもたらす効果について理解を深めるとともに、1日1回は笑う等、笑いによる心身の健康づくりに取り組むよう努めるものとする。

(個人の意思の尊重等)

第6条 県、事業者及び県民は、この条例の実施に当たっては、個人の意思を尊重し、及びその置かれている状況に配慮するものとする。

附 則

この条例は、公布の日から施行する。

2023年6月定例議会 7月10日最終日【反対討論述べる】

請願4号「マイナンバーカードの性急・拙速な運用拡大を行わないことを求める意見書の提出について」不採択とする委員長報告に対する【反対討論】

 県政クラブを代表いたしまして、ただ今議題になっております、「マイナンバーカードの性急・拙速な運用拡大を行わないことを求める意見書の提出について」提出された請願4号は、極めて願意妥当とする立場から、これを不採択とする総務常任委員長報告に反対の立場から討論申し上げます。

 まず、本請願におきましては、マイナンバー制度そのものに反対するものではないということを、改めて申し上げておきます。その上で、現時点でもトラブルが後を絶たない状況にある中で、2024年秋には現行の健康保険証を原則廃止、また年金預貯金口座をひもづける制度をつくることも盛り込まれているのであります。

 相次ぐトラブルは、個人情報保護法に基づき、そのことを最も尊重しなければならない、政府行政においてのトラブルであります。請願にも記されておりますが、国税庁が今年2月にデジタル庁に伝えたにもかかわらず、放置するデジタル庁の体質改善から始めるべきだと申し上げたい。

 つい先日の地方紙記事で、登録事務を担う自治体などの態勢が整わないのに普及を急いだこと、カード普及を優先するあまり、現場の事務作業過程でのミス防止策がおろそかになったのではないかと指摘しています。国民、県民の利便性を向上させる基盤であるとした上で、国民、県民誰もが納得するものでなければならないし、運用当初からつまづきなど許されなかったとしています。ましてや、その総点検作業を最も担わなければならないのは地方自治体なのであります。岸田政権政府は、今ここで一度誤った進め方を反省し、国民に安心と、信頼を求めるために、しっかりと説明をする時なのです。

 以上の点を踏まえ、請願4号は採択すべきものであり、不採択とする総務常任委員長の報告には、強く憤りを覚えるものであります。山形県民にとって、日本国民にとって、社会保障制度の根幹にかかわる内容を含む極めて重要な請願であり、これを不採択にするなど言語道断と言わざるを得ないことを付して、反対討論と致します。 

2023年6月26日 6月定例議会《代表質問》

 県政クラブの石黒覚でございます。

 県民皆様の安全安心な日常生活を守り、次の世代が誇りをもって引き継ぐことができる、平和で安心・安全な山形県づくりに、微力を尽くしてまいる所存でございます。

 ロシアによるウクライナ侵攻から1年4ヵ月が経過いたしました。去る6月12日に「ウクライナへ使い捨てカイロを送る会」が全国から寄せられた使い捨てカイロ295,000個が山形市から出発しました。今年1月と2月に送られた分と合わせて、365,000個が送られたことになります。12年前に福島第一原発事故により、米沢市に避難され11年間本県で避難生活をされた、元高校教師の武田徹先生が、本県での避難生活でご自身が受けた温かい支援に感謝する気持ちから、何か恩返しができないかと考えた末にウクライナ国民にほんの少しでも温かさを届けたいとはじめられ、NHK全国ニュースでも取り上げられ、支援の輪がここまで大きくなったものでございます。福島の方々や山形県平和センターの仲間の皆様、そして、本県河北町出身の吉田はるみ衆議院議員のお力添えで、輸送を引き受けて下さった第一貨物、郵船ロジスティックスなどの皆様の力が一つになって、使い捨てカイロという小さな温かさが、大きな心を温める支援になったものと、改めて関係各位に敬意を申し上げる次第でございます。

 ロシアによるウクライナ侵略戦争をはじめ、各地の紛争や内乱が1日も早く終結することを願いながら質問に入らせて頂きます。

【質  問】

1 コロナ後の県づくりについて

 約3年半前の2019年12月に中国武漢で発症したとされる新型コロナウイルス感染症は、今を生きる私たち人類にとって極めて多くの教訓を残しました。我が国におきましては、去る5月8日から感染症法上の5類に位置付けられ、完全収束とは言えないまでも、私たちの日常生活も急速にコロナ前に戻りつつあります。

 残るデータをみますと、厚生労働省の発表によれば、3月10日時点で、世界198か国で6億7,492万7,337人感染、死者679万9,438人に達しています。我が国におきましては、5月8日までの感染者数が3,380万2,739人を数え、死亡者数は7万4,669人。そして本県におきましては、感染者数が23万1,254人となり、死亡者数が370人となっています。

 今年3月13日からは、マスクの着用は個人の判断に任せることとなりました。子供たちの笑顔がまっすぐに届く日常を期待致しておりますが、現在でもかなりの率でマスク着用が続いているようであります。

 1年前の昨年6月定例会代表質問において、本県のこれまでの新型コロナウイルス感染症に対する対応は、私は総じて評価できる。吉村知事の県民の皆様方に対する発信力は、不安な日常へ少しでも安心感を届けてきたものと考える。また、医療従事者を中心とする方々への感謝や支援体制の構築、療養施設確保への迅速な対応、さらには経済支援対策の機敏な対応など、日常生活や社会情勢の不安を少しでも取り除くことに最善策を講じてきたものと評価を申し上げました。

 一方で、コロナ禍3年数か月の中で、地域コミュニティの希薄化が進んだことも事実ではないかと考えます。「コロナ禍だから無理して出なくていい」という風潮が、地域行事や祭りの再開、地域での共同作業、ボランティア活動など等の足かせになってはいないのか、少し心配致しているものでございます。

 吉村知事におかれましては、「コロナ克服・山形経済再生」を掲げ、まさにその実現に向けて「令和5年度県政運営の基本的考え方」並びに「新型コロナをはじめとする社会の変化を受けた今後の施策展開」に表しておられます。先日はインバウンド復活・県産農産物輸出復活を目指して台湾にトップセールス。また東京・大阪での「やまがた紅王」本格デビューのトップセールスと、そのエネルギッシュなお姿は、県民皆様方に大きな元気と勇気を与えているものと評価致します。そこで、「コロナ後の県づくりについて」吉村美栄子知事のめざす方向についてお伺い致したいと存じます。

【吉村知事答弁】

 新型コロナの感染拡大防止のための「新しい生活様式」への転換や国内外における移動の制限などにより、観光業をはじめ、飲食業や地域交通などで深刻な影響を受けるなど、新型コロナは、私たちの日常の暮らしや企業の経済活動、地域社会の有り様に至る様々な面で、大きな影響や変化をもたらしました。

 他方、「非接触・非対面」というコロナ禍での行動規範は、ライフスタイルを劇的に変化させ、キャッシュレス決済やテレワークが普及するなど、急速かつ強制的に社会全体のデジタル化が進んだところであります。

 さらには、時間や場所にとらわれない自由な働き方の拡大に伴って、暮らしの質を重視する考えが広まるとともに、若者を中心に地方移住への関心や、環境問題に対する意識が高まりを見せるなど、価値観の多様化も進みました。

 こうしたコロナ禍による影響や変化に対し、目の前の対応として、疲弊した地域経済の早期回復に取り組みつつ、コロナ後の時代の転換の先を見据えた未来志向の県づくりを力強く進めてまいりたいと考えております。

 まず、地域経済の早期回復につきましては、観光の復活に取り組み、国内外の観光需要をいち早く本県に取り込んでまいります。観光は地域の様々な産業との結びつきが強く裾野の広い産業でありますので、社会経済活動が本格的に再始動しつつある今こそ、官民が連携して、交流人口の拡大を図っていくことで、飲食店や交通事業者などへも経済効果を波及させ、地域の賑わいや活力の向上に結びつけてまいりたいと考えております。

 コロナ後の未来を見据えた県づくりに向けましては、デジタルやグリーンなど、本県の新たな成長に繋がる技術を積極的に取り込み、国内外の活力を呼び込みながら、持続可能な山形県を創っていくことが重要であります。対話型人工知能「チャットGPT」に見られるように、デジタル技術は目覚ましいスピードで進歩しております。本県でも変化の先を見据えながら、暮らしの質の向上や産業振興のためにDXを推進するとともに、カーボンニュートラルの実現に向けた流れを経済発展へと結びつけるGXにも積極的に取り組んでまいります。

 変化の激しい時代にありましても、いえ、そういう時代であるからこそ、県民の皆様が本県で安心して暮らし、幸せを実感できる県づくりが重要であります。このため、医療・福祉の充実や、デジタル技術も活用した生活サービスの利便性向上を図っていくとともに、近年、激甚・頻発化する自然災害に強い強靭な県土づくりにハード・ソフト両面から取り組んでまいります。

 そうした暮らしの安心安全を土台に、誰もが個性や能力を発揮できる地域社会の実現に向けて、誰一人取り残さない包摂性や、多様な価値観を認め合う寛容性を高めていくとともに、本県の将来を担う若者の県内定着・回帰や子育て世代等の移住、さらには留学生を含む外国人材の受入れ拡大に向けて、美しい自然環境や子育て環境、高い精神性に基づく文化など、多くの人々を惹き付ける本県の魅力をさらに磨き上げ、発信を強化してまいります。

 先人たちが様々な困難を乗り越えてきてくれたからこそ、現在の私たちの生活があります。私たちも未来に向けて、市町村、事業者・団体、県議会、そして県民の皆様と一緒になって常に前向きなチャレンジを続けることで、真の豊かさと幸せに満ち、輝き続ける山形県の実現を目指してまいります。

【質  問】

2 本県産業における企業支援の方向性と今後のあり方について

 次に、本県産業における企業支援の方向性と今後のあり方についてお伺い致します。

 新型コロナウイルス感染症を契機として、本県産業を取り巻く状況は、県民の消費行動や市場ニーズが大きく変化しているとともに、DXやGXといった社会経済の大きな変化が加速致しております。

 それに加えて、人手不足や資源価格の高騰などの影響もあることから、県内の中小企業・小規模事業者は今、将来への生き残りをかけた道のりの『岐路』に立っているものと、認識しております。

 実際に県内企業の経営者の皆様のお話を伺うと、「DXやリスキリングなどの変化へどのように対応していけばいいか分からない」、「原材料等の価格高騰を価格転嫁していく判断が難しい」「消費者の流れが大きく変わり、選ばれる商品と選ばれない商品が明確になっている」など、状況の変化やこれからの対応について悩んでいるというお話など、様々な切実な声が届いて参ります。

 一方で、「新しい時代の変化に対応していかなければ、企業として生き残っていけない」という強い危機感を抱き、企業自らを変えていこうとする経営者も、もちろん、県内各地にいらっしゃいます。

 しかしながら、そうした前向きな経営者であったとしても、中小企業・小規模事業者にとっては資金も人材もノウハウも不足しているわけでございますので、様々な変化に対応していくうえで、何から手を付けていいのか分からない中で、一歩踏み出すことに躊躇してしまうケースもあるのではないかと思われます。

 イギリスの自然科学者、チャールズ・ダーウィンは、「生き残る種とは、最も強いものではない。最も知的なものでもない。それは、変化に最もよく適応したものである。」と言っております。

 変化の激しい困難な時代である今、本県の中小企業・小規模事業者が今後も生き残っていくためには、大胆かつスピーディに変化に対応していくことが必要であると考えます。

 そこで、県として、これからの企業支援の方向性をどのように考えているのか、そして、どのように実現していくのか、産業振興の道に長年携わってこられました平山副知事へお考えをお伺い致したいと存じます。

【平山副知事答弁】

 今、デジタル社会が進展してきている中で、コロナ禍も相まって、社会経済の大きな変革期を迎えております。こうした中、本県産業が将来に向けて発展していくためには、県内企業の大宗を占める中小企業・小規模事業者の成長・発展が不可欠であると認識しております。

 県内中小企業・小規模事業者の経営者の方々からお話を伺いますと、強い成長意欲を持ち、国内外のマーケットで戦い結果を出している企業がある一方、ポテンシャルも意欲もあるものの、何から取り組んでよいのか分からない、最初の一歩を踏み出せないという企業がたくさん存在すること、また、下請体質にある現状への強い危機感や、原材料価格等の高騰が続く中で、価格決定力の獲得が必要だという思いを強くお持ちである、と受け止めているところであります。

 これら中小企業・小規模事業者が生き残り、更に成長・発展していくためには「戦略性を持った経営」や「新しい事業や領域への挑戦」、そして、それらを実践する「ひとづくり」に積極的に取り組む必要があります。しかしながら、中小企業・小規模事業者は経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)が不十分であり、多種多様な経営課題を抱えている状況であります。こうした課題に対応するためには、県内企業の取組みを強力に推進する体制の再構築が急務であり、この度、来年の春をめどに、経営力強化を支援する「(公財)山形県企業振興公社」と新技術・新製品開発を支援する「(公財)山形県産業技術振興機構」を再編・統合していきたいと考えております。

 この産業支援機関の再編によって、支援機能の集約化と質的向上を図り、多様な経営課題に対する「一元的かつ迅速な支援」を行えるように取り組んでまいりたいと考えております。

 新たな組織では、経営戦略の構築から人的資源の確保、新商品の開発や新たな販路開拓といった一連の企業活動全体に対し、必要とされる最適な支援を、スピード感を持って提供することを目指します。加えて、産業の新しい活力として期待できる創業を目指す人に対しても、その段階やニーズに応じたサポートを提供していきたいと考えております。

 さらに、地域で身近な相談機関である商工会議所・商工会や、技術支援を行う工業技術センターなどの他の産業支援機関との連携を一層強化することで、県内の産業支援機関が一体となった企業支援体制へと再構築してまいります。

 県としましては、県内の中小企業・小規模事業者が確固たる経営基盤を築き、下請け体質から脱却し、新たなビジネスに次々とチャレンジすることで、社会変革や困難を乗り越えていけるよう、支援体制の再構築を進めながら、ありとあらゆる経営課題に対して関係機関が協調して対応することで、本県産業の持続的な発展につなげてまいりたいと考えております。

【質  問】

3 次代を担う人づくりについて

 (1)  東北公益文科大学の公立化の具体的工程について

 次に、次代を担う人づくりについて、はじめに東北公益文科大学の公立化の具体的工程についてお伺い致したいと存じます。

 東北公益文科大学の公立化と機能強化について、昨年2月定例会予算特別委員会の私の質問に対して、実務担当者よりも高いレベルでの議論を行い、公立化と機能強化に係る方向性をまとめるとの吉村知事よりご答弁を頂戴致しました。

 令和5年3月に県と2市3町で公立化と機能強化についてとりまとめられた報告書が作成されました。さらに機能強化については本年2月から公益大において、県のサポートによります、地元経済界等とも連携したシンポジウムを開催しており、具体的な動きもあらわれ、評価致しているところでございます。こうした動きの中におきまして知事以下県庁執行部のご尽力には、頭の下がる思いでございます。改めて敬意と感謝をお伝え申し上げます。

 一方で、今春の公益大は、役職員上げましての「魅力あるカリキュラムの構築」や「学生の自由な発想による地域活動参加」さらには「きめ細かな就職支援」など等、学生確保に向けた取組みを継続されておりましたが、人口減少の進行はもちろん、コロナの落ち着きから都会志向のゆり戻しがあるのか、誠に残念ではありますが、今年度定員割れが生じる結果となりました。また、全国における公立大学が100校を数えるとの報道があり、今後、なんらかの抑制がなされるのではないかと心配をしているところでございます。 

 そうした中におきまして、東北公益文科大学が進めております、令和7年度の国際コミュニケーション学科設置を目前にする中で、これらに合わせて公立化を進める方向も必要ではないかと考えます。現在進められている再生可能エネルギーや地域の持つポテンシャルを活かす機能強化を進めることは、もちろん必要であることは言うまでもありません。

 6月補正予算において、公立化した際の財政負担のシミュレーションや具体的な公立化及び機能強化策の調査費を計上しているようでございますが、この先、県として山形・庄内の高等教育の在り方をどのように考え、機能強化を検討するのか、公立化について2市3町との合意形成をどのように進めていかれるのか、また、今後の具体的工程・スケジュールについて、吉村知事にお伺い致したいと存じます。

【吉村知事答弁】

 はじめに県内及び庄内の高等教育のあり方についてお答えいたします。県内には(総合大学の)山形大学を始め、県立や私立の4年制大学、短期大学など、様々な高等教育機関が存在しておりますが、庄内地方の4年制大学は山大農学部と公益大のみであり、庄内地方の高等教育において公益大の存在は大きいものと考えております。そもそも公益大については、庄内地域に4年制の大学が必要だという庄内の皆様の強い要望があり、庄内2市3町と県が設置したという経緯があります。

 人口の社会減が進む中、(公益大も含め)県内の高等教育機関がそれぞれ特色を生かし、また、横の結びつきを深めながら相互の交流を促進することにより、質の高い教育や研究を進めていくことが重要であります。

 こうした中、公益大の公立化・機能強化に関して、昨年度は副知事と各首長との議論の場を新設したことも含め、様々なレベルでの意見交換を行ってまいりました。これを踏まえて、本年3月には、県と庄内の2市3町との連名で、「公立化と機能強化に係るとりまとめ」の報告書を作成し、その中で、公立化と財政負担に関するロードマップなどを公表しております。現在、2市3町の間でも、財政負担の割合や機能強化の具体的内容について様々なご意見があることから、公立化の年度を決定するためには、丁寧な合意形成が必要と考えております。このためにも、本定例会でご提案をしている委託調査により、公立化する場合の財政負担の選択肢や様々な機能強化策について詳細な分析を行い、関係者間で共有していきたいと思っております。

 今後のスケジュールについてですが、私はこれまでも、公立化は単なる看板の架け替えではない、ということを申し上げてまいりました。公立化と同時に機能強化を行うことで、人口減少の中でも公益大が地域に存続し続けていくことが可能となるものと考えております。このため、今年2月からは県が主導しながら「地域連携シンポジウム」を開催し、地元の経済団体や金融機関、自治体、県内外の企業等とも協力して機能強化の選択肢や方向性を探っているところです。これまでも、再生可能エネルギーや次世代モビリティをテーマに議論するとともに、先週開催のセッションでは、酒田市内の街歩きや、酒田舞娘も交えた地域愛に溢れる討論など、学生と地域の人々が現場に出て、地域と向き合うことにより、地域の持続可能性を探る有意義な教育機会の提供になったものと評価しています。

 また、本年5月と6月には、県及び2市3町の職員が、グローバルな人材育成で有名な秋田県の国際教養大学と、コンピュータ理工学に特化している福島県の会津大学という2つの先進的な公立大学への現地調査を行いました。今後の機能強化に向けた参考事例として活用してまいりたいと考えております。

 全ての学問は哲学から出発していると言われており、文系と理系についても、現在、様々な分野でその境目が消失しつつあります。その意味で、元来、学際的な領域である公益学に再生可能エネルギーやDXといった社会変化を柔軟に取り込みながら発展させていくことは、公益大の公立化及び機能強化の追い風になるものと考えます。今後とも、調査や議論を深めながら、スピード感をもって関係者間の合意形成を図ってまいります。

【質  問】

 (2)  本県における併設型中高一貫教育の成果と課題について

 次に、次代を担う人づくりについての2点目と致しまして、本県における併設型中高一貫教育の成果と課題についてお伺い致します。

 平成9年6月中央教育審議会の第二次答申の中で、従来の中学校・高等学校の制度に加えて、生徒や保護者が6年間の一貫した教育課程や学習環境の下で学ぶ機会をも選択できるようにすることにより、中等教育の一層の多様化を推進し、生徒一人一人の個性をより重視した教育の実現を目指すものとした提言がなされ、のちに「学校教育法等の一部を改正する法律」が成立、平成11年4月より、中高一貫教育を選択的に導入することが可能となりました。

 本県におきましては、平成28年4月に、本県初の併設型中高一貫教育校「県立東桜学館中学校・高等学校」が開校し、当時初めて中学校一年生として入学された生徒たちが、昨年の春、6年間の中高一貫教育を修了され、それぞれの夢に向かって進路を進めたものと思います。そして今年の春には2期生が卒業されました。

 東桜学館は、「高い志 創造的知性 豊かな人間性」を基本理念に、3つの教育目標を掲げ、目指す学校像を「ICTの活用や協働的な学習、探究型の学習活動を展開し、これからの時代に求められる、自律的に活動する力や、多様な人々と協働できる力、持続可能な未来を創造する力、といった

 『21世紀型能力』の養成校として、本県をリードする学校」とし、その実現に向けて教育活動を進めているものと思います。

 昨年度在学した児童生徒の状況をみますと、出身小学校別生徒数は東桜学館の所在地である東根市93名をはじめとして、県内18市町、県外1市と、生徒数に多い少ないはあるものの、学区が県下一円という設置基準がまさに実現している状況のようでございます。

 こうした中で、私が心配致してもどうにもならないところではありますが、多少方言が違ったり、生活習慣が違ったりして子供たちが戸惑うことはないのか、いじめなどの問題はないのか、教職員と保護者のコミュニケーションはうまくとれているのか、他の学校と比較されて必要以上の負担がかかっていないか等、心配の種は尽きないところであります。

 一方で、昨年、本年と中高一貫教育6年間を修了した生徒の進路をみますと、学習面での生徒の頑張りが明らかに見てとれるところではありますが、学習ができるだけでは、東桜学館が掲げる基本理念の到達には足りないものと考えるところでございます。

 令和6年4月には庄内地域初となる併設型中高一貫教育校「県立致道館中学校・高等学校」が開校予定となっており、東桜学館のこれまでの取組みがどのように活かされていくのかも、極めて重要であろうと考えます。今後、最上地域や置賜地域への展開も考えられると思いますが、本県におけるこれまでの中高一貫教育の成果と課題についてどう評価しているのか、教育長にお伺い致したいと存じます。                     

【教育長答弁】

 中高一貫教育校は、6年間の計画的、継続的な教育を通して、生徒の個性や能力をより一層伸ばすとともに、中学生と高校生という異年齢集団での活動により、社会性や豊かな人間性を育成することができるという利点があります。

 県内初の併設型中高一貫教育校として開校した東桜学館は、他校に先駆けて探究型学習に取り組むとともに、文部科学省からスーパーサイエンスハイスクールの指定を受け、中学校段階から一貫した科学人材育成プログラムのもと、生徒全員が課題研究に取り組んでおり、その研究成果を全国的なコンテストや研究発表会で発表し、数々の優秀賞を受賞するなど、優れた成果をあげております。さらに、こうした学習を通して、東京大学や東京工業大学、東北大学などの難関大学をはじめとする国公立大学や、早稲田、慶応などのいわゆる有名私立大学にも合格者を出すなど、高い進学実績もあげております。

 学習面以外においても、中学生と高校生が一緒になって、学校行事や部活動はもとより、生徒達が自ら発案し、市民から募った平和メッセージを店舗に展示するボランティア活動等に取り組んでおり、これらの取組みを通して、生徒達には自主的・主体的に考え行動する姿勢、他者と協働する力、地域へ貢献する心が確実に育っているものと認識しております。

 一方、課題としては、中高一貫生と高校入学生との学習進度の差や、同学年次としての一体感の醸成が挙げられます。学習進度の差に対しては、少人数や習熟度別学級により丁寧に指導しており、一体感の醸成については、生徒同士が交流する機会を積極的に設けることにより、互いに高め合う環境づくりに努めているところです。

 来年度開校予定の致道館中学校・高等学校につきましても、東桜学館の成果を生かして、地域社会や国際社会を牽引するたくましさを身に付け、多様な分野で活躍する人材を輩出する学校となるよう、鋭意取り組んでまいります。

【質  問】

4 「ゼロカーボンやまがた2050」実現に向けた洋上風力発電推進の意義と県民の理解に  ついて 

 次に、「ゼロカーボンやまがた2050」実現に向けた洋上風力発電推進の意義と県民の理解についてお伺い致します。

 12年前、東日本大震災発災と同時に福島第一原発事故発生後、最大ピーク時平成24年5月16万4,865人の福島県民が全国各地で避難生活を強いられていました。この年の3月「山形県エネルギー戦略」が策定されました。

 吉村知事におかれましては「安全性、コストの面で原発は今まで考えられてきたようなエネルギーではない」とのお考えから、東日本大震災発災から間もない平成23年7月に秋田県で開催された全国知事会議におきまして、当時、滋賀県知事でございました嘉田由紀子氏と一緒に、原発への依存度を徐々に少なくしながら、風力や太陽光発電などの導入を進めていくことを旨とする提言を行いました。私は全面的に賛同致します、いわゆる「卒原発」の提唱でございました。そして、風力や太陽光など再生可能エネルギーをもって原発一基分に相当する101.5万kWという2030年度(令和12年度)の開発目標に向かって、これまで歩みを進めております。令和3年度末現在の目標に対する進捗状況は、電源が58.4万kW 66.6%、熱源が6.9万kW 50.2%、合計で65.4万kW 64.4%で、稼働分、計画決定分併せて概ね順調に推移しているものと認識致しております。しかし、この中で風力発電における令和12年度の開発目標45.8万kWに対して令和3年度末8.2万kW 17.9%の進捗率にとどまっています。こうした状況の中で、現在、遊佐町沖並びに酒田市沖における洋上風力発電事業についての取組みが進んでおります。

 去る4月に行われました県議選におきまして、遊佐沖洋上風力発電を考える会、現は鳥海山沖洋上風力発電を考える会に名称変更になったようでございますが、この会から酒田市・飽海郡区の立候補者に、公開質問状が届きました。

 質問は遊佐町沖、酒田市沖の洋上風力発電事業を推進すべきかなどの4項目で、選択肢のほか、いずれの項目にも自由記述欄がございましたので、合わせて3,000文字を越える記述をさせて頂きました。前段述べさせて頂いた通り、吉村知事の「卒原発」に賛同する立場と、原発再稼働に反対する立場を明確にした上で、洋上風力発電事業は推進すべきとし、「今を生きる私たちは、産業革命以降の化石燃料による近代化の中で、物質的な豊かさを享受してきたことが原因で、地球環境破壊が進行していることを、次の時代を生きる世代につけを回すことは、許されないことだと考えます。(中略)私も皆様方と同じく、日本海に沈む夕日の美しさをこよなく愛する一人です。しかしながら、安全な処理方法もない原発再稼働を許すこともできませんし、地球温暖化を今止めないと次の時代が立ち行かないとすれば、今を生きる私たちが『がまん』する必要があるのではないでしょうか」と書かせて頂きました。

 「鳥海山沖洋上風力発電を考える会」の方々のように、洋上風力発電事業に対して意見を持つ県民も多くいらっしゃるものと思われます。一方で、本県における風力発電に関する経過の中には、庄内海浜県立自然公園内で稼働する風力発電計画時において、地域の理解を得るために、運転開始が当初の計画より相当遅れてしまったという教訓もあります。様々な意見調整の中で、お互いに100%納得できる結果を導き出すことの難しさはあるものの、現段階での最善を導き出すために十分に意見を聴く必要がありますし、また、目標実現に向けましては、あらゆる協議をスピーディに進めることが求められているものと思います。

 「ゼロカーボンやまがた2050」実現に向けた洋上風力発電推進の意義と、県民の理解を得ながらどう取り組んでいくお考えか、環境エネルギー部長にお伺い致します。

【環境エネルギー部長答弁】

 近年国内では、集中豪雨などの気象災害が頻発・激甚化しており、その一因とされる地球温暖化の対策として、カーボンニュートラルを目指す動きが大きな潮流となっております。政府では、脱炭素化に向けて再生可能エネルギーを最大限導入することとし、エネルギー基本計画等において、洋上風力を再エネの主力電源化の切り札と位置付け、その導入を国策として進めております。

 本県でも、令和2年8月に「ゼロカーボンやまがた2050」を宣言し、再エネ導入をさらに加速することとし、令和3年3月に策定した「後期エネルギー政策推進プログラム」において、洋上風力発電事業の展開促進を盛り込んだところです。洋上風力発電は、新たな産業、雇用、観光資源の創出など地域活性化の起爆剤になり得るため、遊佐町沖及び酒田市沖への導入に向け、今年度は新たに副知事トップのもと5名の関係部長等が「洋上風力推進監」の任命を受け、関係部局が一体となって取組みを進めております。

 遊佐町沖については、この間、騒音や景観、漁業への影響など様々な声に丁寧に対応しながら、検討を進めてまいりました。この3月には、地元関係者等による法定協議会において、持続可能で魅力あるまちを次の世代に継承することを目的に、全国でも先駆的な洋上風力発電事業を通した遊佐地域の将来像を取りまとめ、促進区域指定に向けた手続きに入ることの合意がなされました。促進区域指定後、公募により選定される事業者には、将来像の実現と併せ、地域の不安の声にもしっかり対応するよう求めることとしております。また、酒田市沖についても、部会での議論を経て、有望な区域への選定に向けたプロセスに進むことの了解がなされており、引き続き、酒田市と連携し、漁業者や地域の理解促進を図ってまいります。

 今後とも、漁業との共存、地域との共生を目指した「地域協調型」の洋上風力発電の導入、ひいては、カーボンニュートラルの実現に向けて、丁寧かつ着実に取り組んでまいります。

【質  問】

5 持続可能な地域医療提供体制を確保するための地域医療構想の推進並びに新たな構想について

 次に、持続可能な地域医療提供体制を確保するための地域医療構想の推進並びに新たな構想について、お伺い致します。

 令和4年3月24日付けで厚生労働省医政局長から地域医療構想の進め方についての通知がなされ、各都道府県において第8次医療計画(2024年度~2029年度)の策定作業が2023年度までにかけて進められる際に、2022年度及び2023年度において地域医療構想に係る民間医療機関も含めた各医療機関の対応方針の策定や検証・見直しを行うこと。その際、新型コロナウイルス感染症拡大により病床の機能分化・連携等の重要性が改めて認識されたことを十分に考慮すること。また、2024年度より医師の時間外労働の上限規制、いわゆる医師の働き方改革を遵守することなどを求められております。また、昨年、同様の質問を致した際にも申し上げましたが、総務省は公立病院経営強化の推進について通知し「持続可能な地域医療提供体制を確保するための公立病院経営強化ガイドライン」を示しました。この件に関しましては、今年3月14日に公益社団法人全国自治体病院協議会から公立病院経営強化に関する説明会の通知がなされ、医師の働き方改革や経営強化プランの取り組み状況等について、去る6月6日に説明会があったとお聞き致しております。

 昨年6月定例会での健康福祉部からの答弁では、ベッド数の調整を評価しながら、各病院の役割分担を明確にし、日本海ヘルスケアネットの取り組み事例のような、医療資源を有効活用し地域全体で連携する医療提供体制の構築に向け、地域医療構想調整会議等で協議が必要、と述べられております。

 地域医療構想は、2年後の2025年問題、申し上げるまでもなく団塊の世代が75歳以上の後期高齢者に達することへの対応のため、平成26年に「医療介護総合確保推進法」成立によって進められているところでございます。

 昨今の医療・介護・福祉を取り巻く環境は、刻々と変化しています。少しそれた話になるかも知れませんが、酒田地区医師会でアンケート調査を実施したところ、2040年頃には現在の開業医の40%がなくなるとの予測をせざるを得ないとのことです。こうした危機感に対して、酒田市では、山形大学や日本海総合病院等と連携して、先進的な取組みも試みられております。高齢化率が高い中山間地域を中心として、オンライン診療システムや医療機器を搭載した自動車で出向いて診療する「医療マース」の実証実験が行われており、来年4月の本格運用を目指していると伺っております。

 このように、医療現場では、2025年問題から、高齢者の数がピークアウトし、担い手の急減とともに労働力不足が深刻化する2040年以降の社会に向け、医師の偏在解消、医師の働き方改革への対応、医療機関の再配置などへの関心が高まっています。例えば日本海総合病院は既に昨年で旧県立日本海病院建設時の起債償還がほぼ終了しており、病院としての機能強化も含め庄内地域における新たな地域医療提供体制の議論も必要との認識をされているようでございます。

 こうした地域医療を取り巻く環境が激しく変化する中で、持続可能な地域医療提供体制を確保するための地域医療構想の進捗状況並びに新たな構想の検討状況などについて、健康福祉部長にお伺い致します。

【健康福祉部長答弁】

 平成28年9月に策定しました本県の地域医療構想では、いわゆる団塊の世代が全て後期高齢者となる2025年の医療需要等を見据え、必要となる医療機能のほか、将来に向けて持続可能な医療提供体制のあり方をお示ししております。現段階においては、策定時と比較して急性期病床が700床以上減少する一方で、高齢化のさらなる進行により必要性が高まる回復期病床が同じく700床程度増加するなど、全体としては、一定の成果があがっているものと認識しております。

 さらに、議員よりお話がありましたとおり、昨年3月に政府より、改めて民間医療機関を含む全ての医療機関に対し、令和5年度末までに病床機能の転換等の対応方針の策定が求められており、現在鋭意検討が進められております。今年3月には、医療法に基づく医療提供体制の確保に関する基本方針が改正され、都道府県は毎年度、各医療機関が策定した対応方針の目標の達成状況を評価するとともに、将来の病床の必要数と報告された病床数との間に著しく差が生じている場合には、その要因を分析し、結果を公表することとされました。

 また、こうした検証を踏まえ、非稼働病棟や稼働率の低い病床のある医療機関に対しては、対応状況や今後の方針等について説明が求められるなど、新たなPDCAサイクルを通して地域医療構想を推進する内容とされております。県としましては、これらの点を着実に実施し、各地域の議論も喚起しながら、持続可能な医療提供体制の確保に向けて引き続き取り組んでまいります。

 また、新たな地域医療構想の検討に向けては、現在、厚生労働省において、高齢者人口がピークアウトする2040年頃を視野に、中長期的課題の整理が行われております。各都道府県の策定作業は令和7年度、2025年度となる見通しでありますが、県としましては、現在の地域医療構想の推進と並行し、政府の動向を注視しながら、引き続き現状や課題の把握・分析に努めてまいります。

【質  問】

6 農林水産政策における今後の方向性について               

 次に、本県の基盤産業であります農林水産業の今後の方向性について、お伺い致します。

 先日6月11日、酒田港の夏の風物詩として広く知られるようになりました「いか釣り船団出航式」に出席致しました。数年前まではあった、山形県籍の船はなく山形船友漁撈長会所属の県外籍4隻が出航いたしました。記憶に残るところでは、17隻が揃って出航したこともあったと思います。船で働く若者たちは、ほぼ全員がインドネシアからの研修生でした。寂しい気持ちになってしまいました。

 また、昨年の秋、私の住む平田地域の中山間地、小林地区で地区内ほぼすべての農地15町歩をたった一人で、転作作物として「そば」を栽培する方の転作田に、そばの花見に出かけた時、偶然に草刈りをしていたその方から声を掛けられ、一昨年、農林水産省が令和4年から5年間、一度も水を入れない転作田には「水田活用の直接支払交付金」を交付しない見直し方針を発表したことについて「自分はもはやここで生きている意味がなくなった」と、下を向いて、小さな声で言われた時は、士農工商の時代から、人間が生きるための基本である食料を生産する農業者の方々が、いかに時の政府のその時々の振る舞いに振り回されてきたのか、なぜ21世紀のこの時代にこんな仕打ちを受けるのか、抑えようのない憤りと、彼の悲しみに応える術のない無力感に襲われたことを思い出します。

 山形新聞3月23日付け朝刊の統一地方選県内の争点という特集記事に「人的基盤の強化 急務~厳しい経営環境、嘆きの声~」という見出しの極めて貴重な記事がございました。記事によりますと、2020年農林業センサスによると県内の基幹的農業従事者のうち個人経営体は3万9,034人で、2015年前回調査と比べて7,026人、15.3%減少とあり、65歳以上の割合は68.3%に上り、前回比8ポイントアップしたとあります。

 現在「食料・農業・農村基本法」の見直しが行われており、先般公表されました「中間とりまとめ」の中でも、農業従事者の急速な減少が課題とされたところでございます。水産業も厳しい状況に変わりはなく、2018年漁業センサスによると本県の海面漁業の就業者数は、2003年に778人でしたが、2018年には368人とほぼ半減したとあります。60歳以上は60%を超えるとあります。林業についても同様の状況であろうと推察いたします。

 私自身もこの度の選挙におきまして、「農林水産業の持続可能性確保に向けた本県独自の支援施策確立」を公約に掲げ、お訴えを致して参りました。このような状況を踏まえ、吉村美栄子知事の政策集にも掲げられた「生産額ベースの食料自給率200%超の実現」「スマート農業の推進・高度な農業経営人材の育成等」「やまがた森林(モリ)ノミクスの加速」「水産業の振興」といった農林水産政策をどのように実現していく方向にあるのか、特に担い手の育成・確保にどのように取り組んでいくのか農林水産部長にお伺い致します。

【農林水産部長答弁】

 本県では、令和3年3月に「第4次農林水産業元気創造戦略」を策定し、戦略の共通目標として「生産額ベース食料自給率200%超」の実現を目指しており、「意欲ある多様な担い手の育成・確保」をはじめとした5つの基本戦略を柱として、様々な目標指標に基づき、成果を検証しながら施策を展開しているところです。

 「担い手の減少」につきましては、県内では、基幹的農業従事者が年間約1,400人、海面漁業就業者が年間約20人減少している中で、令和4年の新規就農者は358人、海面漁業新規就業者は7人に留まっており、担い手の育成・確保が急務であると認識しております。

 そのため、県では、高度な農林業人材を育成する東北農林専門職大学(仮称)の開学準備を進めているほか、農業分野においては、地域農業を牽引するトップランナーをはじめとする高い生産力と経営力を持つ経営体の育成を図っていることに加え、このほかの多様な農業人材の育成・確保に向けたきめ細かな支援を行っております。

 また、漁業分野では、新規就業者確保に向けた就業体験の実施や基礎技術の習得などの就業支援に加え、新規就業者の独立後の経営の安定化・高度化に向けた支援などを行っており、令和5年4月には「山形県漁業経営・就業支援センター」を開設し、就業相談や独立後のフォローアップなど段階に応じた支援を実施しているところです。

 さらに、林業分野でも新規就業者の確保に向けて「山形県林業労働力確保支援センター」と連携し、就業体験の実施や求人情報の収集提供等に加え、林業事業体への求職者斡旋にも取り組んでいます。

 今後とも、本県の基盤産業である農林水産業の維持・発展に向け、これらの取組みを通して、担い手の育成・確保に重点的に取り組んでいくとともに、元気創造戦略に掲げる目標の実現を図ってまいります。

【質  問】

7 酒田港の基地港湾指定に向けた取組みの状況について

次に、令和3年12月定例会においても、洋上風力発電の拠点となる基地港湾の指定に向けた取組みについて質問しておりますが、現在の指定に向けた取組みの状況についてお伺いいたします。

本県がカーボンニュートラルを実現する上で、洋上風力発電による再生可能エネルギーは、極めて有力なものであると認識しているところであり、また、カーボンニュートラルポートを目指している酒田港にとっても、港湾地域の脱炭素化に向けた新たな再生可能エネルギーとして、その活用が期待できるものと思います。

 さらに、酒田港にとっては洋上風力発電設備の設置と維持管理の拠点、いわゆる基地港湾としての活用も期待されます。

 洋上風力発電が稼働している秋田県では、秋田港と能代港が基地港湾に指定され、秋田港では既に洋上風力発電設備の設置の拠点として利用されたところです。また、今年4月には新潟港が新たに基地港湾に指定されました。

このような中、山形県沖の海域で洋上風力発電の導入に向けた調整が進められておりますので、これらが順調に進行しますと、次は酒田港が国土交通省から基地港湾の指定を受けることが重要となります。

県では、酒田港が基地港湾に指定される必要性をどのように考え、指定に向けた取組みをどのように進められているのか、県土整備部長にお伺い致します。

【県土整備部長】

 県では、洋上風力発電に伴う経済波及効果を県内に最大限取り込むために、酒田港の基地港湾指定が必要であると考えています。想定される経済波及効果としては、①風車部品の輸入等による酒田港の利用拡大効果、②基地港湾に必要なふ頭の整備工事や風車組立工事等による建設業へのフロー効果、③風車組立に係る仮設部材等の関連産業創出の効果、が見込まれると考えています。

 酒田港の基地港湾指定に向けた取組みとしては、まず必要な2つの条件を整えてまいります。一つ目の条件である「2以上の海域で酒田港が利用される見込み」については、遊佐町沖が促進区域に指定され、酒田市沖が有望な区域に選定されることによって条件が整うことになると考えています。二つ目の条件である「基地港湾に必要な機能を有する見込み」については、促進区域指定後、酒田港の港湾計画に「洋上風力発電設備の基地機能」と「必要な施設の規模や構造」を位置づける変更を行うことで整うことになります。

 また、本年度からの取組みとして、指定を見据え、ふ頭工事で発生する浚渫土砂を受け入れる埋立用護岸の調査設計に着手しました。

 さらには、指定に向けた要望活動の取組みも行っています。今月8日には「令和6年度政府の施策等に対する提案」で、知事が県議会議長とともに、国土交通省へ酒田港の基地港湾指定を要望しました。今後も、適切な時期に、政府へ要望していく予定です。

 県としましては、引き続き、酒田港の基地港湾指定に向けた条件を整えるとともに、基地港湾指定による経済波及効果に対する地元の気運を醸成し、その状況と酒田港の有用性を政府にアピールしていくことが不可欠であると考えておりますので、関係市町や地元関連企業、関係部局と密接に連携して取組みを進めてまいります。

石黒さとる後援会事務所開設のお知らせ

令和5年統一地方選挙に向けた石黒さとる後援会事務所を開設する運びとなりました。その際にお集まり頂きました皆様を前にご挨拶をさせて頂きました。その様子の動画をアップいたします。またYoutubeに石黒さとるチャンネルを準備しております。今後は活動の様子や私の発言等を発信して行きたいと思っております。正式な設置が完了しましたらこのブログサイトにて開設の告知をさせて頂くとともに、多くの皆様からのご視聴・ご意見など頂ければ幸いです。

2023働く仲間と共に前進を!

2023年1月5日大手門パルズにて連合山形旗開きに立憲県連代表祝辞を申し上げました。

 明けましておめでとうございます。本日は「2023新春旗開き」の開催に、心よりの敬意とお祝いを申し上げます。

 昨年末には、本県鶴岡市西目地区におきまして、土砂災害が発生、犠牲となられました方々に、心よりのご冥福と、被災された皆様方にお見舞いを申し上げますとともに、救助活動、復旧活動の陣頭指揮をとられました吉村美栄子知事、皆川治鶴岡市長をはじめ、関係各位のご尽力に改めまして、衷心よりの敬意と御礼を申し上げる次第でございます。

 さて、新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない状況の中ではございますが、規制のない年末年始を故郷山形でご家族と楽しく過ごされた方々も大勢いらっしゃったようでございます。今年こそは、コロナ収束の年になりますことを願うものでございます。

 一方で、昨年二月二十四日にロシアによるウクライナ侵略戦争が始まって、寒さと悲しみの中で震えながら新しい年を迎えた多くの人々がいることも忘れてはならない現実であると、申し上げなければなりませんし、「一刻も早い戦争終結」を、叫ばなければなりません。

 このような中にあって、我が国では「核共有」や「敵基地攻撃能力保持」「自衛隊の9条明記」「防衛費倍増」などなど、議論を軽んじ、説明責任を果たすことなく、これらに対するこれまでの認識すら簡単にくつがえす、民主主義、立憲主義をないがしろにする政権を、これ以上放置するわけにはいかないと、強く思うところでございます。

 さて、連合は「働くことを軸とする安心社会」に向けて、すべての働く仲間とともに「必ずそばにいる存在」を基本理念とし、労働運動に止まらず「自由、平等、公正で平和な社会を建設」「一人ひとりをまもり、地域をつなぎ、人権が尊重され、ジェンダー平等と多様性に満ちた安心社会の構築」へ果敢に挑み続けておられますことは、こうした時代だからこそ、全人類的に普遍的な取り組みでありますことは、申し上げるまでもないところでございます。

 アベノミクスの過ちがもたらした超円安、物価高。さらには、格差拡大、先進国最低の教育予算など等、我が国がめざさなければならない方向は明らかでございます。

 働く仲間の皆様方と一緒に、まずは賃金アップを勝ち取る春闘勝利へ、そして当面、4月の統一地方選勝利へ向けまして、皆様方のご指導、ご支援を賜りますようお願い申し上げる次第でございます。

 結びに、「自由」と「多様性」を尊重し、支え合い、人間が基軸となる「共生社会」を創り「国際協調」をめざし、「未来への責任」を果たすことで、一人ひとりが輝く社会を創るために、本年は、うさぎのように高く飛び跳ねる年となることを願い、皆様方のご健勝、ご活躍を心よりご祈念申し上げましてご挨拶とさせて頂きます。本日は、誠におめでとうございます。

2022年10月28日 令和3年度決算総括質疑

【質 問】

1 令和3年度の県政運営に対する評価について

 まず初めに、令和3年度の県政運営に対する吉村知事ご自身の評価についてお伺い致したいと存じます。令和3年度は、吉村知事におかれましては、平成21年2月に知事就任以来、13年目、4期目スタートの年度でございました。

 振り返りますと、リーマンショックによる世界的な金融危機に始まり、就任2年後の平成23年3月11日には、千年に一度とまで言われました「東日本大震災」さらには「福島第一原発事故」と、極めて厳しい時代の県政運営を強いられてまいりました。そうした中におきまして、一貫して「心の通うあったかい県政」を貫き通され、現場主義、県民目線の県政運営に邁進いたしておられるその姿勢には、頭の下がる思いでございます。そして、今さら申し上げるまでもございませんが、2019年末に中国においてと考えられております、新型コロナウイルス感染症について、2020年1月初旬に厚生労働省から各都道府県等に注意喚起が発せられて以降、WHOがパンデミックとみなしたのが2か月後の3月11日と記憶いたしております。本県で初めて感染者が確認されたのは、3月31日でございました。今夏には第7波に入ったと言われており、10月27日現在、本県における感染者数は121,423名となり、207名の死亡が確認されております。亡くなられた皆様方に改めまして心よりのご冥福をお祈り申し上げますとともに、療養中の皆様方の一日も早いご回復を願うものでございます。

 今日に至る3年近い経過の中で、新型コロナウイルス感染症から、県民の命と健康を守る闘いに挑み続けていると言っても過言ではないと評価致すものでございます。そして、本年8月に発生致しましたかつて経験したことがないような豪雨災害。地球温暖化に起因するともいわれる近年の自然災害への対応もまた県民生活を守るために挑み続けている闘いということでしょう。こうした地球規模での環境変化に対しては令和2年8月に「ゼロカーボンやまがた2050(ニーゼロゴーゼロ)」をいち早く宣言され、国の動きを先導する役割を果たしたものと評価致しております。さらには、コロナ禍やロシアのウクライナ侵略戦争、国の経済・金融政策に起因するかつてない円安、燃油高騰、物価高で、県内企業や農業関係者への打撃が大きく、県民生活が脅かされております。これらすべての対策が、一県だけで解決できるものではないことは、言うまでもないところでございますが、今後とも時宜を捉えた施策展開を期待するものでございます。さて、吉村知事におかれましては、4期目の県政運営にあたり「コロナ克服・山形経済再生!」をうたい、

1.「子育てするなら山形県」の実現

2.「健康長寿日本一」の実現

3.県民幸せデジタル化

4.「1人当たり県民所得」の向上

5.やまがた強靭化  

を掲げました。本県に必要な施策を的確に迅速に発し、実行することこそ、グローバル化した世界で起こる地球規模のあらゆる変化に対応し、県民生活の安定に資するものであることは間違いありません。そこで、令和3年度における県政運営の舵取りをどのように進められて、知事自身はどのように評価されておられるのか、吉村知事にお伺い致したいと存じます。

【吉村知事答弁】

 令和3年度は、新型コロナ感染拡大に直面し、国難とも言える社会経済情勢の中にあって、「コロナ克服・山形経済再生」を掲げ、全力で各種の取組みを進めてまいりました。
 新型コロナにつきましては、県民の皆様の命と暮らしを守ることを最優先に、関係機関と連携して検査・医療提供体制の強化を図ってまいりました。また、度重なる感染拡大の波に対しては、医療専門家や関係団体の御意見をお聞きしながら、県内医療の崩壊を防ぐため、その時々に応じた対策を講じ、現場に携わる関係者の御尽力と県民・事業者の皆様の御協力をいただいて対応してきたところでございます。

  感染防止対策の要となるワクチン接種につきましても、適時適切な情報提供など、市町村における接種が円滑に進むよう支援するとともに、県においても大規模接種を実施した結果、本県の接種率は全国上位で推移しております。
 県内経済につきましては、一部で持ち直しの動きがみられたものの飲食業や宿泊・旅行業などは大変厳しい状況が続いておりました。このため、「山形県新型コロナ対策認証制度」を創設し、県内外の方々が安心して飲食や宿泊ができる環境を整備し、令和3年度は
4,050施設の認証を行いました。加えて、消費喚起策としてプレミアム付きクーポン券の発行や観光キャンペーンを実施するなど、県内経済の回復に向けた取組みを展開するとともに、事業継続や雇用の維持に向けた支援を継続いたしました。あわせて、県総合文化芸術館の利用促進や文化芸術・プロスポーツを支援する入館料等の割引キャンペーンを展開し、コロナ禍にあっても文化・スポーツの振興に取り組んでまいりました。
 農林水産業に関しましては、新型コロナの影響を受けた外食産業の需要減少などにより、米価が大幅に下落しました。このため、政府に対し、全国知事会等を通して対策の必要性を訴えるとともに、県独自に「山形米(マイ)ハート贈ろうキャンペーン」をはじめとする消費拡大策を実施したところであります。あわせまして、人工衛星データを活用した「つや姫」の生育診断といったスマート農林水産業を推進するなど、本県の農林水産業の競争力強化にも取り組みました。
 また、令和3年度は多くの自然災害にも見舞われ、特に、春の降霜・降雹では、さくらんぼをはじめ多くの農作物に被害が発生したことから、「凍霜害・雹害緊急対策パッケージ」による資金面や技術面での総合的な支援を速やかに実施したところでございます。
 一方で、新型コロナを契機とする社会環境の変化に迅速かつ柔軟に対応し、少子高齢化を伴う人口減少や若者・女性の流出、地域経済の維持・発展といった地方が抱える共通の課題にも粘り強く取り組んでまいりました。
 具体的には、子育て環境のさらなる充実に向け、子育て費用の段階的な無償化に向けた取組みを開始するとともに、女性も活躍できる環境づくりに向け、若年女性の現状やニーズを把握するための「オンライン100人女子会」の開催や女性の賃金向上・処遇改善などへの支援を実施いたしました。
 また、地域経済活性化に資する新たなビジネスの創出のための交流拠点・ワンストップ相談窓口として、さらには働き方の変化に対応したコワーキングスペース機能も備えた「スタートアップステーション・ジョージ山形」を昨年の11月に開設したところであります。
 さらには、本県の未来を拓く「山形新幹線米沢トンネル(仮称)」の早期事業化に向けた取組みを推進するとともに、「やまがたワーケーション新幹線」の運行など、関係人口の増大と移住・定住の促進につながる取組みも展開してきたところであります。
 これらの取組みに加え、近年相次ぐ自然災害の一因ともいわれる地球温暖化対策は急務でありますので、本年2月に「カーボンニュートラルやまがたアクションプラン」を策定し、県全体で取組みを進めております。
 このように、令和3年度は、新型コロナや自然災害など喫緊の課題に対応しながら、ウィズコロナ・ポストコロナを見据えて、県勢発展につながる取組みを展開できたものと捉えております。
 今後とも、真の豊かさと幸せを実感できる山形県の実現に向けて、SDGsの視点も生かしながら、誰一人取り残されない持続可能な県づくりを多様な主体との連携により力強く推進したいと考えております。

【質 問】

2 令和3年度決算に関する監査委員の意見について               

 次に、令和3年度決算に関する監査委員の意見についてお伺い致します。県政発展のためには、予算の執行状況に関する監査の重要性は申し上げるまでもないところでございます。PDCAサイクルの中のチェックが機能することによって、次のアクションが起動する、まさに監査の役割は極めて大なるものだという認識でございます。令和3年度の歳入歳出決算審査におきましては、審査に付された歳入歳出決算書、歳入歳出決算事項別明細書、実質収支に関する調書及び財産に関する調書について、

(1)決算の計数は正確であるか

(2)予算の執行は議決の趣旨に沿って適正かつ効率的に行われているか

(3)資金の管理及び運用は適正に行われているか

(4)財産の取得、管理及び処分は適正に行われているか

の4項目を審査の着眼点にして進められたとございます。これらに基づき審査した結果、3点の意見が付されております。

 1点目は、「持続可能な行財政基盤の確立」とありまして、経常収支比率と将来負担比率は改善、調整基金は増加、県債残高は減少、の状況から本県財政は順調のように見えるところでございますが、一方で、公債費が高い水準で推移とあり、財源不足が続き厳しい中で、歳入歳出の両面から持続可能な行財政基盤を確立するため、「山形県行財政改革推進プラン2021(ニーゼロニーイチ)」に基づく取組みが必要であること。

 2点目は、「ウイズコロナ・ポストコロナを見据えた県づくり」とありまして、新型コロナウイルス感染症が長期化する中で、原油価格・物価高騰、国際情勢の変化、人手不足等、地域経済の厳しい状況を踏まえ、DX(デジタルトランスフォーメーション)による業務の効率化、県民サービスの向上など持続可能な県づくりの推進に取り組まれたいこと。

 3点目は、「財務事務の適正な執行」とありまして、「不適正な事務処理を未然に防止するための取組」を重点監査項目に位置付けられ、内部統制が施行され2年が経過したことも踏まえた監査がなされたものと思います。

 令和3年度は、新型コロナウイルス感染症対応などで、職員皆様方が多忙を極める一年だったと思います。そうした中におきましても、県民皆様からお預かりを致します「税金」の適正執行は必要不可欠なところでございます。今回の監査結果において、指摘や注意事項が前年度より増加していることについて、監査委員としてどのように捉え、また、その上で改善に向けて必要な対応策としてどのような点に重点を置いて取り組むべきかについて、代表監査委員にお伺いいたします。

【代表監査委員答弁】

 令和3年度定期監査は、全部で231の機関を対象に実施し、このうち、是正・改善を要するものとして指摘、あるいは注意事項の対象となった事案は76の機関で117件、前年から27件の増加となりました。具体的なものとして特に多いのが、支出事務における支払の遅れ、収入事務における調定の遅れなどのほか、補助金等の交付事務において、交付決定や額の確定の遅れ、変更承認の手続に不備があったことなどであります。また、前年度と同様の不適正な事務処理が繰り返されている所属も、いくつか確認されたところであります。

 こうした不適正な事務処理が発生した背景には、新型コロナへの対応をはじめ、凍霜害や豪雪への対応など、全体的に事務量が増加した中で、関係規程等に対する理解が十分でなかったことや、組織的な確認や進行管理が徹底されていなかったことなどが挙げられます。ひとたび不適正な事務処理が発生すれば、その内容によっては、是正改善のための措置や原因の分析、再発防止策の検討と実施に多くの時間と労力が割かれることになり、その影響は事業者等多方面に及ぶことにもなりかねません。こうした事務処理上のリスクの発現を未然に防止し、事務の適正執行を確保するための内部統制が、知事部局において本格的に導入されて2年余りが経過し、この間、他の任命権者においても同様の取組がはじまり、職員の意識の向上につながっていると捉えておりますが、この度の監査結果を踏まえると、改めて、全ての職員が内部統制の趣旨を十分理解し、主体的に取り組むことが重要であると認識したところです。このため、県政に対する県民からの信頼は、職員一人ひとりの適正な事務の執行の上に成り立っていることを強く自覚し、所属長の適切なマネジメントの下、職員同士のコミュニケーションを活性化させ、風通しの良い職場風土を醸成し、事務事業の進捗状況の共有や、協力体制の一層の強化などに取り組んでいただきたいと考えております。

 監査委員といたしましては、こうした内部統制の実効性を高めるための取組状況について、定期監査の中で重点的に確認を行うとともに、発生事案について、同様の誤りを防止する観点から、その要因と再発防止策も含めて、全庁的に情報を発信し、注意を喚起してまいります。

【質 問】

3 コロナ禍における病院事業の状況と課題について

 (1) 令和3年度病院事業決算の評価と課題について

 次に、コロナ禍における病院事業の状況と課題について、まず令和3年度病院事業決算の評価と課題認識についてお伺い致したいと存じます。

 令和元年度の決算特別委員会で、平成30年度病院事業決算状況について、お尋ねを致したことがございますが、その時点での監査の状況から、6年連続の赤字であり、依然として厳しい経営状況にあるとのご指摘でございました。また、平成28年度に初めて資金不足が生じたことから、平成29年度には資金不足比率が12.1%となり、企業債発行に際し総務大臣の許可が必要となり「資金不足等解消計画」を策定致しました。そして病院事業局あげて経営健全化に動き出した矢先に、新型コロナウイルス感染症への対応に迫られる事態となったところでございます。「県立病院における新型コロナウイルス感染症への対応については、3病院で県内最多(68床)の専用病床を確保するとともに、感染症外来を運営し、多くの感染患者を受け入れました。また河北病院では山形県PCR自主検査センターを運営し、4,326件の検査を実施するなど、感染の収束に向け、県立病院が有する総合力を発揮してきた」との説明がございました。

 こうした新型コロナの影響がある中、患者数は入院外来ともに前年から増加し、医業収益は約17億6千万円の増加。経常収支は、コロナに係る補助金の受入れなどもあり約16億3千万円の黒字と大きく改善致したようでございます。先ほども申し上げましたように、「中期経営計画」や「資金不足等解消計画」を策定し、経営改善に鋭意取り組んでいるところではありますが、県立病院の持続的・安定的な運営基盤の確保のためには、本格的なウイズコロナ・ポストコロナの到来を見据えた、更なる経営改善の取組みが急務と考えるものでございますが、いかがでしょうか。こうしたことを踏まえ、病院事業会計の令和3年度決算の結果をどのように評価されておられるのか、また、課題をどのように認識されておられるのか、病院事業管理者にお伺い致します。

【病院事業管理者答弁】

 令和3年度の病院事業は、前年度に引き続き、多くの新型コロナの感染患者を受け入れて治療に最善を尽くしながら、河北病院では山形県PCR自主検査センターを運営するなど、コロナ対策の中核となって取り組むとともに、県民の皆さんに必要な医療を持続的に提供することにより、県立病院としての役割を積極的に果たしてまいりました。

 そのような中、病院事業会計の令和3年度決算を、前年度と比較しますと、入院では、中央病院や新庄病院において、新型コロナ専用病床を確保しながらも、延期していた予定手術を徐々に再開したことなどにより、患者延数は1,925人の増加となり、外来では、前年度は一般の患者の受診控え等により患者延数が大幅に落ち込みましたが、延期していた治療や検査を徐々に再開したことなどにより、1万7,653人の増加となり、医業収益は、17億6千万円の増収となりました。

 一方で、医業費用は、患者延数の増加に伴う薬品や診療材料の購入に要する材料費の増、退職給付費等の給与費の増、重油の高騰による燃料費の増などにより、9億7千万円の増加となりました。その結果、差引きとなる医業収支は、7億9千万円の増と大きく改善したところであります。また、医業外収益は、河北病院で新型コロナ専用病床を新たに6床設けたことに伴う病床確保料や各病院の院内感染拡大防止対策等に係る新型コロナ補助金の受入れが、6億1千7百万円増加したことなどにより、これを含む経常収支は、6億7千3百万円改善し、16億3千3百万円の黒字となりました。

 この結果、地方公共団体の財政の健全化に関する法律による資金不足比率は、14.1パーセントだったものが10.0パーセントになり、大きく改善したところであります。このように令和3年度の決算は、前年度に引き続き新型コロナへの対応に係る病床確保料等の受入れにより、経常黒字となりましたが、本業である医業収支は、改善はしたものの新型コロナ流行前の令和元年度を依然として下回っており、決して予断を許さない厳しい状況にあるものと認識しております。加えて、令和5年度の新型コロナの病床確保料等の政府による支援は、現時点ではその方針が明確に示されておらず、今後、制度の縮小も想定せざるを得ないほか、不安定な国際情勢に起因する原油価格・物価の高騰によるコスト増が経営を圧迫すると考えられるなど、懸念材料が多く、これまでにも増して経営改善に注力する必要があると考えております。

 こうした新型コロナの収束が依然として見通せない状況や社会情勢の急激な変化の中にあって、持続的に県民医療を守り支えるためには、医師をはじめ専門的な知識等を持った人材の確保・育成も重要であります。その取組みの一環として、新庄病院では、昨年度新たに腫瘍内科の医師を配置し、中央病院やこころの医療センターでは、多くの専門研修医が研修修了後もそのまま病院に定着したほか、今年度にはなりますが、河北病院において新たに総合診療医を配置するなど、医療提供体制の充実を継続的に図っております。

 また、高度化、複雑化が進む医療情報システムに関する実務経験を有する医療情報職を計画的に採用し、各病院への配置を進めるとともに、令和3年度から、病院事務全般を専門的に担当する病院経営職の採用を始めたところであります。加えて、地域の医療需要の変化に的確に対応して、病院の機能や組織体制の見直しを進めるとともに、診療報酬上の加算の上位区分の取得等に努めて収益の向上を図ったことなどにより、令和3年度の診療単価は、入院、外来とも過去最高となりました。さらに、AIによる診療前問診システムの導入などDXの推進による業務の効率化を進めてきており、引き続き、あらゆる角度から経営改善に努めなければならないと考えております。県立病院が、引き続き、本格的なウィズコロナ・ポストコロナを見据えながら、救急医療や高度で専門的な医療など、地域医療提供体制を支える県立病院としての役割を果たせるよう、資金不足等解消計画や中期経営計画に基づき、病院事業の運営基盤の一層の強化にしっかりと取り組んでまいります。

【質 問】

(2) 県立病院における処遇改善手当の実績等について

 次に、県立病院における処遇改善手当の実績等についてお伺い致します。

 昨年、岸田政権におきまして、「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」の中で、「未来社会を切り拓く『新しい資本主義』の起動」と称し「分配戦略~安心と成長を呼ぶ「人」への投資の強化~」として、公的部門における分配機能の強化等を掲げ、看護、介護、保育、幼児教育などの現場で働く方々の収入の引き上げを、閣議決定され、本年2月に衆議院本会議において令和3年度補正予算、令和4年度予算等が可決されました。そのことを受けまして、賃金水準を引き上げることに、異論を申し上げるわけにはいかないと認識しながらも、今回の処遇改善の制度は、例えば、コロナ禍で多数のPCR検査をこなした「臨床検査技師」や、コロナの重症患者に使用するECMO(エクモ:体外式膜型人工肺)の操作に欠くことのできない「臨床工学技士」など、看護職以外の職員を対象にするかどうかの判断は病院に委ねるということになっており、中途半端な印象がぬぐえないのであります。何よりも県民の命と健康を守るために一丸となって対応する同じ職場で働く方々が、この政策によって格差を助長し、あるいは同一職種においても賃金に格差が生じないのか、疑問を申し上げたところでございますし、更には、2月から本年9月までの期間となっていることから、その後の対応に懸念を申し上げたところでございました。

 そこで、昨年度2か月間の手当支給の実績はどのようになっているのか、また、支給対象を看護師のみとしたこと、支給されない病院があることについて、県立病院内においてどのように受けとめられているのか、病院事業管理者にお伺い致しておきたいと存じます。また、本年10月以降の診療報酬で月額12,000円/人を確保するためには、県立中央病院での必要金額はどのくらいになって、その負担をお願いする入院患者一人当たりの負担はどのくらいになるのか、併せてお伺い致します。

【病院事業管理者答弁】

 県立病院では、政府の補助事業を活用した看護職員に対する処遇改善を今年2月から実施しております。その昨年度の実績は、看護師及び助産師に対し一人当たり月額4,000円の手当を支給し、その額は合計で846万円となりました。支給対象については、政府の補助事業の算定対象とされた中央病院、新庄病院及び河北病院に勤務する看護職員としましたが、病院現場からは、①コロナ禍の中で他の病院と同じ様に県民の命と健康を守るために頑張っているこころの医療センターの職員や、②看護職員と一丸となってチーム医療を提供しているコメディカル職員についても、同じように処遇改善するべきだ、との声も聞かれたところです。こうした声に対しては、当局としても真摯に受け止め、政府の補助事業の制度設計などを丁寧に説明したうえで、支給対象者を決定したところであります。

 10月以降は、診療報酬制度の中で看護職員処遇改善評価料という新たな加算が創設され、処遇改善を実施するために必要な財源が措置されることとなりましたが、加算の対象となる職員については従前の国庫補助制度と同様であり、当局として新たに見直すべき要素がなかったことや、近隣県の対応状況なども踏まえ、労働組合との話合いも行ったうえで、処遇改善の対象者を9月までの取扱いと同様とすることとしたものであります。また、中央病院において、この処遇改善を実施するために要する金額は、月962万円であり、入院患者一人当たりの負担額は、3割負担の患者の場合1日当たり246円となっております。

【更 問】

 こうした制度の在り方について、健康福祉部長にお伺い致します。

 政府は、看護職員の処遇改善に必要な金額を診療報酬改定の中で確保するとともに、対象となる施設や職種について引き続き限定的とするという制度にしたのではないかと思っています。健康を害して入院をせざるを得ない患者さんの負担が増えるという考え方が中々理解できないところでございます。ましてやこの10月からは、後期高齢者の医療費2割負担も始まっていること、年金の目減り、物価高騰のこの状況などを考えますと、県民、国民の負担ばかりが大きくなると言わざるを得ないところでございます。

 山形県地域医療構想、新公立病院改革ガイドラインや医師の働き方改革、医療法の改正など、地域医療を巡る状況が大きく変化する時代の中にあり、医療従事者の処遇改善はその中でも重要であると考えております。看護職員の処遇改善については、ただ今述べましたような課題がある訳でございますが、県としてどのように考えているのか健康福祉部長にお伺い致します。

4 令和3年度企業局水道用水供給事業の状況と対応について

 次に、令和3年度企業局水道用水供給事業の状況と対応についてお伺い致します。企業管理者の説明によれば、企業局所管の4事業会計の純利益については、①電気事業会計では約26億6,253万円 ②工業用水道事業会計では約1億180万円 ③公営企業資産運用事業会計では約8,314万円 ④水道用水供給事業会計では約8億6,757万円となっており、4事業会計の純利益の合計は約37億1,506万円と報告されており、順調な経営状況であると受け止めています。

 一方、我々に身近な水道用水供給事業について、監査委員からは、将来の水需要想定に基づき効率的な経営を図り、施設・設備の老朽化対策や管路の耐震化、自然災害対応などを確実に進めていくべきと指摘されております。

 振り返ってみますと、平成25年7月に山形県を襲った豪雨により村山広域水道で給水停止に至った事案があります。西川町大井沢地区では、24時間の雨量が当時の過去最大となる212mmに達し、用水施設そのものが直接被害を受けることはなかったものの、水源の寒河江川では濁度が急激に上昇し、西川浄水場において浄水処理を継続することが困難となったことから、受水市町への給水が停止しました。そのため、村山地域の4市2町では最大8日間の断水となるなど広域的に、県民の生活に甚大な影響が発生しました。とりわけ、近年は、気象災害が激甚化する傾向にあり、日本の各地で線状降水帯やゲリラ豪雨などの大雨被害等が頻発しています。山形県においては、令和2年と本年、最上川が増水して大きな被害が発生し、特に本年8月の大雨では置賜地域を中心に河川の氾濫により甚大な被害を受けました。企業局に確認したところでは、綱木川などで過去最大の濁度を記録したと聞いております。

 こうした頻発し激甚化する自然災害に的確に対応していくための方策として、多くのコストと時間が必要なハード整備を今すぐ行うことは容易ではないと思いますが、ひとたび給水停止となれば県民生活に多大な影響が生じます。このような事態を招かないためにも、濁度対策を始めとするソフト面の備えをしっかりと進めていくことが重要であると考えます。そこで、企業局の水道用水供給事業において、これまでどのような対策を講じてきたか、また安定的な水道用水の供給に向けて、今後どのように対応していくのか、企業管理者に伺います。

【企業管理者答弁】

 平成25年度の豪雨により、村山広域水道では寒河江川の原水濁度が平常時は概ね10度以下のところ、3,000度を超えるまで上昇し、給水停止を余儀なくされ広域・長時間にわたる断水が発生しました。  その要因としては、ハード面では浄水処理のための薬品注入機及び沈殿池の能力が不足していたこと、ソフト面では給水が停止した場合に、受水市町間で融通可能な水量を共有していなかったなど、企業局と受水市町間の連携が不足していたことが挙げられます。こうした事態を受け、県では「浄水機能の強化」と「市町村との連携強化」を図るための検討委員会を設置し、ハード、ソフト両面から高濁度対策の検討を行い、平成25年度から具体的な対策を順次実施してきました。

 まずハード対策については、平成25年から28年にかけ、村山広域水道の浄化機能の強化を図るため、①濁りを除去する薬品を従来の2倍注入できるようPAC等の設備を増設しました。②加えて沈殿池の処理量の増加を図るための「沈殿池中間取出し装置」を新設しました。③さらに、浄水工程で大量に発生する汚泥を乾燥させる「天日乾燥床」を13床から18床に増やしたところです。こうしたハード対策を、他の浄水場の処理能力の強化につなげるため、既に定めていた各浄水場の「機器更新計画」を再整備し、高濁度水でも対応可能な設備投資を順次行ってきております。また、ソフト対策については、①浄水に関する知識と事故発生時の対応力を向上させるための「危機管理研修」を充実・実施するとともに、②防災くらし安心部と連携し「断水対策連携マニュアル」を策定し、高濁度水の発生の恐れがある場合、事前に受水市町の配水池に一定の貯水量を確保するとともに、企業局側が給水制限する場合は、市町間で相互に受水量の調整を行う仕組みを構築しました。③さらには、マニュアルに基づく訓練を、受水市町からも参加を得て全ての浄水場において毎年1回実施しております。

 平成25年度以降も豪雨災害は頻発、激甚化しており、令和2年7月豪雨では村山広域水道において5,000度を、今年8月の豪雨では置賜広域水道で1,900度を超え、それぞれ過去最高の濁度を記録しましたが、ハード、ソフト両面での備えを着実に実施してきたことで、水道用水の供給を継続することができました。広域水道は、県民生活にとりまして最も重要なライフラインの一つでありますので、ハード、ソフト両面での対策を進めることで、危機管理の対応力を高め、安全で安定的な水道用水の供給に万全を期してまいります。

【質 問】

5 水道広域化推進プラン策定に向けた現在の状況について 

 次に、水道広域化推進プラン策定に向けた現在の状況についてお伺い致します。ただ今、水道用水供給事業者としての企業局の対応についてお聞きいたしましたが、県民に水道水を届ける市町村などの事業者も多くの課題を抱えているものと認識致しております。人口減少や水道施設老朽化への対応が待ったなしの状況であり、今後、経営の更なる効率化が求められています。そのため大きな方向性として水道の広域化が継続して議論されてきました。広域化につきましては、県では平成29年度に策定した「山形県水道ビジョン」の中でも有効手段と位置づけ、県等の方向性を示しているところでございます。

 また、国においても広域化を促進するため、今年度中の「広域化推進プラン」の策定が、都道府県に要請されております。6月定例会でもお聞き致したところでございますが、県では、広域化に向けた具体的な検討の場として、県内4地域で「山形県水道事業広域連携検討会」を立ち上げ、令和3年度も委託によるシミュレーションを実施するなどして、検討会での議論を進めてきたと認識致しております。

 そこで、令和3年度を含め、検討会のこれまでの開催状況と、議論されている内容、さらに広域化に係る国の交付金について最大限の活用を目指していくべきと考えますが、そうした視点にたってプランの策定が進んでいるのか、防災くらし安心部長にお伺い致します。

【防災くらし安心部長答弁】

 県では、水道事業の基盤強化を目的とした広域連携を推進するため、県内4地域ごとに、市町村等の水道事業者、水道用水供給事業者である県企業局、「広域連携の推進役」となる防災くらし安心部で構成する「山形県水道事業広域連携検討会」を、平成30年11月に立ち上げ、「水道広域化推進プラン」の策定に向けた検討を重ねてきたところです。令和3年度の17回を含め、令和4年9月末までに合計108回開催しております。

 検討会では、平成30年度に、将来の見通しとして、急激な人口減少や水需要の減少に伴う料金収入の減少、水道施設の更新費用の増大、水道職員数の減少等を想定し、市町村等の水道事業者がこのまま水道事業を単独で継続した場合、水道経営が大変厳しいものになるとの認識を共有したところです。そのうえで、各地域で時期に差はありますが、平成30年度から令和2年度までの間で、経営の一体化や施設の共同利用、システムの共通化など、どのような連携であれば効果があるのかについて、様々な条件を設定し、シミュレーションを実施しております。

 令和3年度には、財源についてより精緻なシミュレーションを実施するとともに、専門家の御意見もいただきながら、各地域における水源、地形及び人口等の要因を踏まえた議論を進めてきました。その結果、①施設の共同利用等のハード面での連携、②資材等の共同購入等のソフト面での連携、③広域化による一体的な経営など、それぞれの地域で目指すべき方向性が見えてきたところです。現在は、県内4地域ごとの広域化の推進方針を「水道広域化推進プラン」にどのように記載していくか、市町村等と最終的な協議を行っているところです。

 一方、広域化による施設の統廃合や老朽化・耐震化対策には莫大な費用を要することから、財源として政府の交付金を最大限活用することは、水道経営にとって極めて有効であります。政府では水道事業の広域化に向け、令和16年度までの時限措置として原則10年間活用できる交付金を準備しております。市町村等がこの交付金を活用するには、「水道広域化推進プラン」に具体的な広域化の方向性を記載することが必要となるため、県としては、市町村等が必要な交付金を十分に活用できるよう、このプランを今年度内に策定したいと考えております。いずれにしましても、県としましては、県民の皆様に安全で安心な水を安定的に供給できるよう、市町村等の事業者と連携しながら、しっかりと取り組んでまいります。

【質 問】

6 本県における環境教育の現状と今後の取組みについて

 次に、本県における環境教育の現状と今後の取組みについてお伺い致します。去る7月の下旬、地元のコミュニティ振興会で長年続けている「水の旅」という水の大切さや環境を守ることについて、魚のつかみ取りや水槽での展示をしながら、子どもたちと楽しむイベントに参加致しました。そのことをTwitterに投稿したのですが、これが後に大炎上するという初めての経験を致しました。私の写真付き投稿の10日後くらいに、どなたかは全く分かりませんが、同じイベントだと思われるTwitter投稿があり、用水路を堰き止めたつかみ取りスペースに、アメリカザリガニと金魚を放流した動画が添付されていたのです。アメリカザリガニが外来生物で生態系に多大な悪影響を及ぼしていることは私も知っていますが、挨拶の後すぐに中座して、その場でのそのようなことがあったことは全く知らずに、8月の後半になって大炎上となったのです。その後、ジオパーク事務局の指導員から、外来種などの状況や環境保全に関する講話をお聞きして、自分の無知さに驚いた次第です。あまりに勉強不足の自分を大いに反省しながら、環境教育の状況についてお伺い致すものでございます。

 私たちは、言うまでもなく地球の環境の中で生きています。大気、水、土、生物が互いにつながり、それぞれの地域で環境を形づくっています。その環境からの大きな恵みに支えられて、初めて健康で文化的な生活を送ることができています。一方で、私たちの日々の生活や経済活動は自然環境に大きな負荷を与えてきたことも事実です。地球温暖化の問題をはじめ海洋プラスチックごみ汚染、生物多様性の損失などの環境問題が、世界中で、また、本県においても深刻さを増しているものと考えます。こうした環境問題を改善するためには、ライフスタイルを見直し、環境に配慮したものへと転換していくことが必要です。つまり、一人ひとりが人間と環境との関わりについて理解を深め、環境に配慮した生活や責任ある行動をとることが、今まさに求められており、環境教育の重要性はますます高まってきていると言わなければなりません。外来生物の問題やゴミの減量・リサイクルさらには水資源の保全、カーボンニュートラルなど、幅広く環境について学べる機会を提供し、環境問題を「自分ごと」として捉え、行動していくための環境教育に、より一層取り組んでいく必要があると考えるところでございます。

 そこで、本県の環境教育における令和3年度を含めたこれまでの取組状況はどうか、そして環境教育における課題をどう認識し、今後どのように取り組んでいくのか、環境エネルギー部長にお伺いします。

【環境エネルギー部長答弁】

 令和3年3月に策定した「第4次山形県環境計画」において、「持続的発展が可能な豊かで美しい山形県」を構築していくには「人づくり」が全ての基盤であるとしていることから、環境教育をすべての施策にかかる重要施策と位置付け、学習機会の提供と普及啓発等に取り組んでおります。

 まず、学習機会の提供については、県内唯一の環境分野の試験研究機関である環境科学研究センターを環境教育の拠点として、環境に関する相談対応や環境教室をはじめ、親子で楽しむ環境科学体験デー、水生生物調査などを実施しており、昨年度は小中学生を中心に延べ7,400名の方々に参加していただいたところです。また、県では高校・大学生を対象としてSDGsの中でも環境分野をテーマとしたワークショップを開催し、昨年度は19校700名の参加をいただきました。

 次に普及啓発については、スマートフォン対応のサイト「環境情報やまがた」を作成し、環境保全に関する高校生の取組みや、カーボンニュートラルをわかりやすく学べる計7回のオンライン講座等の情報を提供するとともに、昨年度から開始したSNS「つなぐ環境やまがた」を活用し、広く県民に向け身近な環境情報をタイムリーに発信しているほか、本県出身のYouTuberを起用した動画を制作した結果、今年3月からの再生回数が5,000回を超えるなど環境に関する理解が進んでいるものと考えております。

 環境教育の内容は多岐に渡り、また年代毎に興味・関心も異なるため多様なニーズへの対応が課題であり、さらに次代をけん引する若者たちが環境に関心を持ち、率先して保全等に向けた行動を起こすよう育成し活躍できる環境づくりが必要と考えております。今年度から新たに始めた学生環境ボランティア制度は、意欲のある県内の大学生26名を「やまがたカーボンニュートラル・サポーター」、通称「やまカボ・サポーター」として任命し、「やまがた環境展」など県内各地の環境イベントで普及啓発活動を担っていただいており、今後さらに活動の場を提供し、環境教育の担い手として活躍できるよう取り組んでまいります。

 さらには、若者世代はもちろん、あらゆる世代に対し、気候変動対策や海洋プラスチック問題、生物多様性を守り・活かす自然共生社会の構築など、多様なニーズにきめ細かに応えられるよう環境教室のメニューを充実するとともに、ホームページやSNSを活用した情報発信を強化していきたいと考えております。

 今年度制定を予定している「山形県脱炭素社会推進条例(仮称)」においても、「脱炭素の学び・人材育成」を脱炭素社会の実現を目指すための取組みの柱の1つとして盛り込むよう検討を進めており、これらにより環境問題を「自分ごと」として捉え行動できる人材の育成に向け、環境教育・学習のさらなる推進にしっかりと取り組んでまいります。