12月定例議会代表質問

【石黒覚 質問】

1 令和2年度に向けた県政運営と予算編成の考え方について (知事)

 はじめに、令和2年度に向けた県政運営と予算編成の考え方について、改めてお伺い致したいと存じます。

 去る10月28日に行われました決算特別委員会総括質疑におきまして、「これまでの県政運営に対する評価について」吉村知事より、就任から10年間へのご自身の評価について述べて頂いたところでございます。ここで改めて申し上げることは致しませんが、時代の変化のスピードが極めて速い中での県政運営が求められ、そのスピードに遅れることなく施策展開がなされていることを改めまして高く評価致すものでございます。

 県は、去る10月に「令和2年度予算編成方針」を示され、そして先日、「予算要求概要」が公表されたところでございます。予算編成方針では「令和2年度県政運営の基本的考え方」に基づいた施策の展開と、財政の中期展望に掲げる財政健全化目標の達成の2つの柱を実施するための予算を編成することとしております。

この「令和2年度県政運営の基本的考え方」は、本県を取り巻く情勢を端的にわかりやすく捉え、国の政策方向を見据えた上で、「自然と文明が調和した新理想郷山形」の実現に向け、新たにスタートする「第4次山形県総合発展計画(仮称)」に沿って「やまがた創生」をステップアップしていくこととしており、令和2年度予算編成は、まさにその第一歩を踏み出すものでございます。

今年もまた大きな災害が発生致しました。こうした災害の復旧はもちろんのこと、県政運営の基盤にも掲げられております「県土強靭化」に向けた社会資本整備は待ったなしの状況であろうと思います。また、さる10月1日には、消費税増税が実施され、県民生活や県内経済を脅かし始めているのではないかと、懸念致しております。

 このような様々な県政課題を踏まえ、令和2年度においては、どのような視点を重視して県政を運営されようとお考えなのか、さらには財政調整基金が減少の傾向の中で、財政健全化を目指しながら、吉村県政12年目の新たな時代を切り拓いていく、予算編成をどのように考えておられるのか、吉村知事にお伺い致したいと存じます。

【知事答弁】

 来年度は、「令和」の新たな時代における県づくりの指針となる「第4次山形県総合発展計画(仮称)」のスタートの年であります。

 県民が本県で暮らす幸せを感じ、また、本県を訪れる人も幸せを感じられるような県づくりを力強く推し進めていかなければならないとの思いを新たにしているところです。

 また、東京2020オリンピック・パラリンピックが開催される年でもありますので、その後を見据えた県づくりの視点も大事だと考えております。このため、まずもって、今後の県づくりを担う人材の育成・確保に努めるのはもちろんですが、本県の経済活力を持続・発展させるには、県民総活躍を促し、あらゆる分野で付加価値や生産性を高めるイノベーションを促進するなど、地域や産業経済の活力維持・向上に全力を挙げるとともに、県土の有効活用を図りながら、国内外の新たな需要を積極的に取り込む地産外消や、インバウンドの増加など交流人口の拡大を強力に推進していく必要があります。そのためにも、総合的な少子化対策や若者の定着回帰をはじめ、人口減少対策にもこれまで以上に力を入れてまいります。

 これとともに、近年の自然災害の多発なども踏まえた県民の安全・安心な暮らしの確保や、高齢化を踏まえた医療・福祉の充実に努めてまいります。また、暮らしや産業を支えるICTなどの未来技術や交通ネットワークなどの将来の発展に向けた基盤づくり、 SDGsの理念も踏まえた環境と調和した持続可能な社会づくりにも努めていかなければならないと考えております。

 新年度の当初予算編成は、これらを踏まえつつ、また、持続可能な財政運営を確保していくことも念頭に置きながら、取り組んでまいります。

 具体的には、「第4次山形県総合発展計画(仮称)」の順調なスタートを切れるよ、「令和2年度県政運営の基本的考え方」に基づき、「施策の展開方向」に掲げる5項目に取り組むための予算要求特別枠を設定したところであり、既存事業の見直しを併せ行い、本県が直面している様々な課題の解決に向けて、メリハリの利いたより効果的な事業をしっかりと組み立ててまいります。

 

 また、近年、地震や台風、豪雨などの自然災害が全国的に頻発し、本県も大きな被害を受けておりますので、災害に強い安全安心な社会の構築や、産業を支え活力と魅力ある県土づくりに必要な事業が必要な箇所に適切に確保されるようにしてまいります。

さらに、今年10月の消費税率引上げへの対応として、社会保障の充実のほか、一方、財政状況につきましては、調整基金残高の減少見込みに加え、災害復旧県独自に低所得世帯を対象とする冬季の灯油購入費等への支援や、私立高等学校等の授業料軽減の拡充、売上げが減少し経営に支障をきたした中小企業・小規模事業者向けの商工業振興資金の融資枠の確保などに取り組んでいるところです。政府の今後の動向も注視しながら、県民生活や産業活動に支障が生じないよう、対応してまいります。事業の追加計上などにより厳しさが増しております。このように、非常に厳しい財政状況の中で安定した県政運営を行うべく、事務事業の見直しなどをゼロベースで行いつつ、予算要求特別枠も活用して、新たな取組みにチャレンジすることで、さらに「やまがた創生」を加速していくための予算案を、次期定例会でお示ししたいと考えております。

【石黒覚 質問】

2 指定管理者制度の成果と課題について

 次に、指定管理者制度の成果と課題についてお伺い致します。本県における公の施設168施設の内、現在137施設に指定管理者制度が導入され、運営が行われております。平成29年6月定例会の総務常任委員会で私自身も質問致した経過がありますし、本年2月定例会におきまして、菊池議員からもご質問があったと記憶いたしております。

 平成29年6月当時、酒田港に外航クルーズ船入港や庄内空港へ海外からのチャーター便を利用して入ってこられる外国人観光客の皆様方に対して、指定管理者運営施設において、外国語が得意な若い職員の必要性についてお話を頂いたことがありました。しかしながら、指定管理者制度では一般的な入札制度等とは異なるものの、選定に際しては競争原理が働くわけでありますので、可能な限り低コストで受託することは言うまでもないところでございます。あるいは、社会的、経済的状況変化の中で、最低賃金の上昇や労使交渉による賃金改定、公務員等の人事院勧告による賃金改定など、賃金の水準が上昇する状況の中にあって、5年間等にわたる協定に基づいていることが、こうした状況に対応しにくいことになっていないかとのご指摘を頂いたこともございます。さらには、平成15年の地方自治法改正から16年以上が経過し、様々な課題が出てきているとの指摘があります。全国的な研究によると、①例えば、そもそも指定管理者制度を何のために導入するのか「サービス内容向上なのか」「コスト削減なのか」等その目的が明確でない事業が見られる。②行政の指定管理事業に対する事業者意識が低く、モニタリングすることなく指定管理者に全て委ねているケースや、書面に記されていない業務範囲を超えた業務まで指定管理者に依頼しているケースがある。③民間企業は、利益を得なければ企業として存続できないことは自明である。しかし、指定管理者が当該事業で利益を得ることに対して異議を唱えたり、利益を計上できないように予算の是正をしたり、収益の一部を行政に還元させるなど、民間企業が儲けることに対して誤解のある行政は少なくない。などの課題があるようでございます。

 本年2月14日に「指定管理者制度導入手続き等に係るガイドライン」が一部改正された経過もございます。これまでの議論も踏まえながら、公の施設の効果的・効率的運営を目的にする指定管理者制度が、県民サービスの一層の向上や行政経費の節減が図られることに加え、地域の活性化や雇用の確保等に繋がることに資することが、示されております。

 例えば他県の例ですが、指定管理者が、施設の利便性を向上させることや施設に親しみを持って頂くことを目的に、自主事業でイベントを実施し、入場者が予想よりもはるかに多かったために約百万円の利益が出たのだそうです。この利益の一部を臨時ボーナスとして職員に還元しようとしたところ、自治体から「自主事業で利益を上げるのは好ましくない。ましてや職員の臨時ボーナスにするということは、この自主事業がはじめから利益目的としたものであるとみなされてもやむを得ない。臨時ボーナスを出すのであれば、次年度以降、ボーナス相当分の指定管理料を減額する。」と通告されたケースがあったようでございます。指定管理施設の認知度アップや利便性向上のために指定管理内容以上の取組みをしたにもかかわらず、このような対応は理不尽と言わざるを得ないと考えてしまいます。

 本県におきましては、平成18年度の導入から13年が経過する中で指定管理者との間で、どのようなやり取りがなされ、課題をどのように解決しながら成果に繋げてこられたのか、賃金等の状況変化にどのように対応しているのか、自主事業展開から利用率向上や利便性向上が図られ、思わぬ利益につながった場合の対応、さらに本年2月のガイドライン改正を、次の指定管理期間の更新時に、どのように活かしていくべきなのかなど、課題と今後の取組みについて総務部長にお伺い致します。

【総務部長答弁】

 指定管理者制度は、公の施設の管理運営について、民間事業者等が有するノウハウの活用により、多様化する住民ニーズに応えるとともに、施設の効果的・効率的な運営を目指すものであり、本県では平成18年度に導入し、現在は137施設に導入しております。

 施設におけるサービスの向上や適切な管理運営を図るため、所管部局においては、定管理者と定期的に意見交換を行うとともに、毎年度、利用者アンケートなどにより管理運営状況の評価・検証を行い、公表しております。こうした取組みにより、利用者ニーズに応じた施設の利用時間の延長や利用日の拡大、利用料金割引制度の設定など、利用者サービスの向上が図られております。  

 指定管理料は、施設のサービス水準に直結するものであり、管理運営上、重要な要素であります。上限額の算定に当たっては、新たな業務を追加したときはそれに要する経費を加え、また、人件費につきましては実績及び県内の賃金上昇の状況などを勘案して積算しております。なお、指定管理者において各年度における収支差額が発生した場合、予め県との間で精算することを約したもの以外では、県から精算を求めたことはありません。

 制度運用の全庁的な指針であるガイドラインにつきましては、これまでも必要に応じて改定し改善を図ってきております。直近では、平成30年度の包括外部監査において、指定管理業務と、指定管理者が管理業務に影響しない範囲で自己の責任と費用により実施する自主事業の定義について、一部で理解が不足しているとの意見がありました。これを踏まえ、本年2月の改正では、定義の明確化や指定管理業務に係る収支と自主事業の収支を明確に区分すること、過度な管理経費の削減によりサービスの低下を招くことがないよう十分に留意すること、等を明示したところです。

 指定管理者制度については、全国的に様々な課題が指摘されていることから、

今年度は、ガイドラインの改正内容の徹底と更なる改善のため、所管部局のほか、指定管理者からも直接意見をお聴きし、制度運用上の課題を整理し対応策の検討を進めているところです。今後とも、サービス向上と効果的・効率的な運営が図られるよう、評価・検証をしっかりと行い、適正な制度運用に努めてまいります。

【石黒覚 質問】

3 本県における大学等の魅力アップについて

 次に、本県における大学等の魅力アップについてお伺い致します。

 我が国はあらゆる点において大都市集中と言う、偏り過ぎた構造から、人口減少という新たな時代の中で、特に地方において顕著な少子化、超高齢化による衰退への対応策の一つとして、地方の大学等の魅力アップによって、若者定着、雇用創出を図り、持続可能な地方創生につなげる極めて重要な施策であると考えます。

 去る10月2日、産業振興・人材活用対策特別委員会の研修会でご講演頂きました、山形大学国際事業化研究センター小野寺忠司センター長によれば、平成の30年間で世界の経済、企業構造には革命が起きたと表現、平成元年世界時価総額ランキング50社に、当時日本企業が32社入っていたが、平成30年にはトヨタ1社のみで35位と言う現実。

こうした現状を何とかしなければと考える中で、次の時代を創る新たな挑戦者を山形大学、米沢の地から育て、21世紀型シリコンバレー誕生を夢見る挑戦が始まったのです。NEC時代に世界を駆け巡って築き上げた人脈を基に、新たな価値創造「イノベーション」を生み出していくことだと力説されました。世界的な研究者、企業家などが手弁当で続々と本県に来てくれているそうです。そうした先生たちは「小野寺が東京の大学ではなく、地方の大学から世界に発信する」との新しい価値観に賛同してくれるのだともおっしゃっていました。

 また、先月15日公益ホールで開催されました酒田市新田産業奨励賞記念講演会で、「生き残る地域となるには~次代を担うリーダーの育成を考える」講演の中で寺島実郎先生が、「第四次産業革命」=「データリズム」の時代と表現した上で、アメリカのIT5社(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)の時価総額が約460兆円、中国のIT3社(バイドゥ、アリババ、テンセント)が約93兆円、東証一部上場日本企業上位5社(トヨタ、NTTドコモ、ソフトバンク、キーエンス、ソニー)で約58兆円という現状からデジタルエコノミー構造を指摘されました。我が国の工業生産性モデルによる生産人口思考から、高齢者の社会参加、女性の活躍する社会構造に変革することこそが、地方創生の道と説明。さらには、東京都や神奈川県に代表される1次産業からほど遠い食料自給率1~2%の地域の高齢化は、本県のような1次産業が目の前にある地域の高齢化に比べると、生きがいや暮らしやすさなどから、深刻さがより大きいともおっしゃっておりました。

(1) 大学等の魅力アップへの取組みについて

 さて、昨年2月定例会の一般質問の中で「地方創生に向けた本県の大学等の魅力づくりについて」お尋ねを致しました。開会中の通常国会に提案されておりました、地方大学の振興や雇用創出策強化のために、東京23区内の大学定員増を十年間認めない法案審議が行われていた時だと記憶いたしております。こうした時代背景の中で、今まさに前に進めなければならない重要な施策が、本県の大学等高等教育機関の魅力アップによるイノベーションから、交流人口、関係人口拡大、若者定着、ベンチャー、そして持続可能な山形県創生へと果敢に挑んで行かなければならないことを共有いたしたいと考えます。本県には、国立、県立、公設民営、私立など多くの高等教育機関がありますが、こうした多くの高等教育機関の魅力アップづくりはどのように取り組まれているのか。現状についての認識と、今後の方向性について総務部長にお伺い致します。

【総務部長答弁】

 大学等の高等教育機関は、地域に若者をとどめる受け皿になっているとともに、地域の人材育成や産業、行政を支える基盤として、地方創生に向けて果たす役割がこれまで以上に重視されております。県内の大学等においては、それぞれの分野の専門的な教育に加え、コミュニケーション力や課題解決力といった社会人として求められる能力を身に付けさせる教育を行うとともに、大学の持つ機能を生かした地域活性化など、様々な観点から大学の魅力づくりに取り組んでおります。県としても、①東日本で有数の規模を誇る総合国立大学である山形大学への先端技術の開発や高度人材の育成に対する支援、②県立の機関については県民や産業界のニーズに応えた新たな大学・大学院の開学や新学科の開設を行っております。平成26年には県立米沢栄養大学の開学、平成30年には同大学への大学院の設置、平成28年には県立農業大学校への林業経営学科の設置などを行いました。③県が設立にかかわった大学に対する教育研究のための基金造成、私立大学との人材育成や地域活性化に向けた連携、県内高等学校との交流の実施などを行い、県内の大学等の魅力づくりを支援しております。今後も、人口減少の進展をはじめ、グローバル化や産業構造など社会全体の急速な変化の中で、高等教育機関が持続的に発展し、地方創生に向けた多様な役割を果たしていくことが求められると考えます。そのためには、大学の強みを生かした魅力づくりの取組みやそれに対する県の支援に加えて、大学と様々な関係者が地域の課題や求める人材などについて認識を共有し、地域の高等教育機関の将来像をめぐる議論を行っていくことが必要であると考えております。こうした中、文部科学省の中央教育審議会の平成30年11月の答申で、今後、大学が、地方公共団体、産業界等様々な地域の関係機関と一体となって、地域の高等教育機関の将来像に関し、恒常的に議論を行う場が必要であるとして、「地域連携プラットフォーム(仮称)」の構築が提唱されました。現在、文部科学省において構築に向けた検討が進められており、本年度内にこのプラットフォームの構築に関するガイドラインが策定される予定と聞いております。

 県といたしましては、引き続き、若者の地元定着や地域の雇用創出などの大学の果たす役割を踏まえ、地域連携プラットフォームの検討状況も注視しつつ、県内の大学等と連携などを進めながら、その魅力づくりに取り組んでまいりたいと考えております。

【石黒覚 質問】

(2) 産業技術短期大学校庄内校の活性化について

 次に、産業技術短期大学校庄内校の活性化についてお伺い致します。 昨年9月定例会の代表質問におきまして、産業技術短期大学校庄内校の活性化についてお尋ねを致しました。鶴岡の高校生と県議会との意見交換会において、参加者から県内高等教育機関の魅力アップについての意見を頂いたのがきっかけでした。

 その際、商工労働部長は、昨年6月に実施した庄内地域の企業や庄内校への入校実績のある高校を対象としたアンケート調査結果に基づいて、①認知度アップや入校メリットの理解促進のため、就職率の高さや学費の安さ、また、実業科以外の高卒者でも地元企業で活躍できる技術や資格を取得できるといったメリットのアピールなど、県内はもとより隣接県の高校を積極的に訪問し入校案内を行う。②地元産業界、教育・行政機関等による定員確保対策検討委員会を組織し、教育内容の充実や学科名の変更等について検討するなど、庄内校の魅力向上による活性化を進めると答弁されました。

 今年8月には、来年4月からの学科名変更が発表され、現在来年度の入校生募集の時期を迎えているわけでありますので、改めまして、産業技術短期大学校庄内校の活性化に向けた取組みの現状と今後の方向性について、商工労働部長にお伺い致します。

【商工労働部長答弁】

 産業技術短期大学校庄内校につきましては、近年の定員割れの状況を踏まえ、昨年9月に地域の産業界・教育・行政機関からなる「定員確保対策検討委員会」を設置し、現状と課題を整理するとともに、本年3月からは学識経験者も加え、庄内校の定員や学科構成など今後のあり方も含め、活性化策等について検討してきたところです。

 委員会では、地域における産業人材の確保は緊急な課題であり、 即戦力となる人材供給のため、庄内校の定員確保に向けた魅力向上策に早急に取り組む必要があること、また、定員割れの要因として、 ①企業や高校生のニーズと訓練内容にミスマッチがあること②応 援団となる企業や地域との連携、支援体制が弱いこと③学生募集に 向けたPRや対策が不十分であること等が指摘されたところです。

 こうした点を踏まえ、令和2年度の学生募集に向けては、定員を維持しながら、高校生に訴求力のある時代や訓練内容にマッチした学科名に変更(「制御機械科」を「生産エンジニアリング科」へ、「電子情報科」を「情報通信システム科」へ、「国際経営科」を「IT会計ビジネス科」へ)するとともに、工業高校では学べないIoTやAI等の高度な技術訓練の導入や、普通校からの入校生も即戦力となれる習熟度別訓練の拡大などカリキュラムの充実を図ったところです。

 また、学生が最先端の技術に触れる質の高い技術訓練を実施するため、地域の有力企業との「インターンシップに関する協定」の締結や、工業技術センターなど県内研究機関との連携による現場即応型の実習体験の充実に取り組むなど、庄内校の応援団となる企業や研究機関との連携拡大を図り、支援体制を強化してまいります。

 現在、こうした訓練内容の充実とともに、低廉な学費やきめ細かな少人数教育、各種資格が取得可能など、庄内校の魅力やメリットを高校生や保護者等にしっかり周知するため、新たに高校教員OBのコーディネーターを配置し、庄内総合支庁とも連携して、県内外の高校等を直接訪問するなど学生募集を進めているところです。

 県としましては、庄内校が今後も安定的に産業人材を育成し、地域の即戦力人材の確保に貢献できるよう、「技術も、資格も、就職も。自分の夢を2年でかなえる新しい挑戦!!」をスローガンに、教職員や学生をはじめ、地域企業や行政機関等と一体となって、庄内校の定員確保に向けた活性化策に取り組んでまいります。

【石黒覚 質問】

4 県内在来線の現状と課題について (企画振興部長)

次に、県内在来線の現状と課題についてお伺い致します。本県遊佐町出身で初代鉄道の助(次官)佐藤政養(正確にはまさよし)先生が陣頭指揮を執った、新橋~横浜間に我が国初の鉄道が開通されたのは明治5年、その後全国津々浦々まで鉄道網が張り巡らされる中で、我が国発展のツールとして現在に至るものでございます。時代の進展の中で、車社会を迎え、あるいは空路と言う高速輸送へと進化する。一方で、鉄路も新幹線の登場により大量輸送、高速化が急速に進展致しております。2027年、あと8年後には夢の超高速リニア新幹線が品川~名古屋間を40分で結ぶことになります。本県では奥羽、羽越新幹線の実現に向けまして、全県民をあげて運動を展開中でございます。

 しかしながら、主要な地域と地域を結ぶ足として開設以来、その役割を果たしてきました在来線の利用が、極めて厳しい状況にあるものと認識致すところでございます。本県には、仙山線、陸羽西線、陸羽東線、米坂線、左沢線、そして第三セクターフラワー長井線がございます。利用客の1日1㎞当たりの人数を一日平均通過人員と言うそうでありますが、仙山線は仙台~羽前千歳間で9000人/日を超え、左沢線は年々減少しているとはいえ、北山形~左沢間で3300人/日前後となっているようであります。さて一方で、陸羽西線は新庄~余目間で平成29年401人/日、米坂線は米沢~坂町間で384人/日で、JR東日本在来線全66線区の内、60位と61位だったようです。平成30年には陸羽西線345人/日、米坂線379人/日と逆転したようでございます。

 本県では現在、新潟・庄内ディスティネーションキャンペーンが実施されております。先日、県政クラブの政務活動現地調査で、庄内総合支庁をお訪ねし、DCの状況についてお伺いを致しましたところ、大変順調であるとのことでございましたが、こうして訪れて頂く観光客の皆様方を、新潟北部エリア、庄内エリアから内陸エリアへの誘導が必要であると思われます。

フル規格新幹線の実現や高速道路の全線開通、滑走路の2500m化の重要性は申し上げるまでもないところでございますが、一方で、こうした在来線の状況をどのように捉え、在来線のしっかりとした運営の確保と利用拡大をどのように図っていかれるのか、企画振興部長にお伺い致します。

【企画振興部長答弁】

 本県の在来線鉄道は、高齢者や学生を中心に地域住民の日常的な移動手段であり、また、観光客などの誘客手段として地域活性化にもつながるものであり、地域の重要な交通インフラであります。

 本県在来線鉄道の具体的な状況をみますと、仙山線及び左沢線は、沿線に山形市や仙台市といった人口の集積する拠点都市を有しており、通勤・通学利用を中心に、概ね一定の利用者数を維持しております。一方で、陸羽東西線や米坂線等は、沿線地域における人口減少や少子化等に伴い、減少傾向が顕著となっております。

 本県在来線鉄道が将来にわたり持続的に運営していくためには、まずもって、利用促進の取組みが必要となるものと考えております。 利用促進に向けては、地域コミュニティやNPO、地域の企業等の多様な主体が協働し、「地域で守る地域の鉄道」として意識の醸成を図り、地域住民自らが利用していくことが重要であると考えております。本県においても、こうした活動として、例えば、米坂線の羽前小松駅では、駅周辺活性化のためのNPOが、地元の高校生等と連携して、近隣の遊休施設をサロンに活用したり、駅前通りを歩行者天国として各種イベントの実施など住民の利用に結びつけるための取組みを進めております。これとともに、観光誘客による利用促進につきましては、沿線市町村と県で組織する協議会やJR等と連携し、沿線の四季折々の魅力ある資源等を活用したイベント列車の運行や地元高校生が案内する駅からハイキングといった特色ある取組みを進めております。

 これらの取組みを今後とも積極的に展開していくとともに、利用促進の前提となる安定輸送や機能面の強化をはじめ利便性向上等についても、地元協議会と一体となり、JR等に対する要望活動を引き続きしっかりと行ってまいります。加えて、今後は、環境にやさしい公共交通主体の交通ネットワークへの転換も重要となる中で、路線バスやタクシー、デマンド等の他の交通モードと効果的に連携した在来線の新たな利用促進策についても県と市町村とが一体となって検討を進めてまいります。

 県としては、こうした幅広い利用拡大策を積み重ねながら、在来線鉄道の持続可能な安定運営に結びつけていけるよう、しっかりと取り組んでまいります。

【石黒覚 質問】

5 地球温暖化対策の現状と今後の取組みについて

 次に、近年の災害発生には、本当に驚くばかりでありますが、今年も地震や台風、豪雨などの深刻な自然災害が頻繁に発生致しました。特に今年は台風19号による広範囲にわたる豪雨水害がもたらした被害が、被災者の生活を苦しめている現状にあります。こうした巨大化する台風や猛烈な雨は、日本近海の海水温の上昇が要因とみられ、地球温暖化が影響した可能性が指摘されています。

 さて、一月前ほどの山形新聞に「CO₂削減量2525トン分販売」と言う記事、「県民の意識向上、過去最多に」とも評されておりました。

 本県では、国の計画に基づいて、平成24年3月に「山形県地球温暖化対策実行計画」を策定致しております。計画策定を契機に、県民、事業者、団体、行政等の連携・協働により省エネルギーの推進や再生可能エネルギーの導入を中心に積極的に取り組んでいるものと認識致しております。しかしながら、平成23年3月の東日本大震災以降、火力発電のフル稼働などにより、その進捗が鈍化する状況から、平成29年3月に中間見直しが行われております。この見直しにあたって吉村知事は、「かけがえのない地球、そして四季折々の季節感豊かで美しい山形を将来の世代に引き継ぐため、ここ山形で暮らし続けたいという県民の皆様の願いや思いを何よりも大切にしながら、『自然と文明が調和した“新”理想郷山形』の実現を目指し、県民協働による取組みを推進します」と改めて述べておられます。

 最近、世界中で話題になりました「スウェーデンのグレタ・トゥーンベリさん16歳が、9月23日ニューヨークで開催された『国連気候行動サミット』で気候変動が緊急事態にある」と訴えたことは、記憶に新しいところでございます。彼女は「未来がないのに学校に行っても仕方がない」と、去年の8月から毎週金曜日に学校を休んで、スウェーデン議会の前に一人プラカードを掲げてストライキを始め、これに呼応した若者たちが、9月20日金曜日に世界160か国、400万人以上が参加したと報じられました。私たち地球上のすべての大人が、次の世代の地球を奪うことなど許されるはずがないことは、言うまでもないことでございます。

 気象庁が、先月11月に発表した「地球温暖化に関する知識」と言う、一般国民に分かりやすく地球温暖化問題を伝えるためにホームページに記載したものがございます。15ページのとても分かりやすい資料です。この中で、①現在の地球は過去1400年で最も暖かくなっています ②世界平均の海面水位は1901年~2010年の間に19㎝上昇したと見積もられています ③日本の平均気温は、1898年(明治31年)以降では100年あたりおよそ1.1℃の割合で上昇しています ④気温の上昇に伴って、熱帯夜、猛暑日は増え、1日の最低気温が0℃未満の冬日は少なくなっています ⑤1日に降る雨の量が100ミリ以上の大雨日数は増える傾向にあり、地球温暖化が影響している可能性があります、と書かれております。さらに、温室効果ガスの大幅な削減を行った場合と、温室効果ガス排出量が続いた場合の比較で、排出が続いた場合 ①21世紀末には、海面水位が45㎝~82㎝上昇すると予測されている ②今世紀中頃までに北極海の氷が夏季には完全に溶けてしまう可能性が高いと予測されています、とあります。恐怖以外の何物でもありません。

 16歳のグレタ・トゥーンベリさんが「未来がないのに学校に行っても仕方がない」と言った、そんな未来を私たちは作ってはならないことを、改めて肝に銘じなければなりません。私も何かできないかと考えて、本当に小さいことですが、議会に来る日は少し早めに出発して、高速道路ではなく、ガソリンを1リットルでも減らすように、できる限り一般道をゆっくり走るようにしました。これを公共交通に変えることが、さらに次の世代の地球を守ることに繋がることを、教えてくれたのが16歳の少女だったのだと思います。

 そこで、計画策定、中間見直しを踏まえて、本県の地球温暖化対策はどのような現状にあり、次期計画策定を含め今後の取組みをどのように進めていかれるのか、環境エネルギー部長にお伺い致します。

【環境エネルギー部長答弁】

 近年、地球温暖化による気候変動の影響と考えられる異常気象や、それに伴う災害が頻発し、本県におきましても、地球温暖化問題への対応は喫緊の課題であると認識しております。このため、県では、「山形県地球温暖化対策実行計画」に基づき、地球温暖化の原因である温室効果ガスの排出量を削減するため、 2020年度に2013年度比で19%削減という目標を定め、温室効果ガスの排出量が多い、家庭・事業所・自動車の3部門に重点を置き、省エネ県民運動の展開や再生可能エネルギーの導入促進などの取組みを進めてまいりました。その結果、2016年度実績は20%削減となり、順調に削減が進んでいるものと考えております。

 一方、全国的に、異常気象による災害、農作物の品質低下、熱中症リスクの増加など、地球温暖化による気候変動の影響が顕在化していることを受け、温室効果ガスの排出を抑制する「緩和」の取組みに加え、「緩和」に取り組んでも気候変動の影響が避けられない場合に備える「適応」の取組みを推進する「気候変動適応法」が、昨年12月に施行されました。法施行を受け、市町村や事業者、県民の皆様の「適応」についての理解を深めるとともに、「適応」は「自分ごと」との意識を普及するため、東北地方環境事務所や山形地方気象台等と連携し、説明会や講演会を開催しているところです。本県の農林水産分野では、従来から、農作物の高温耐性品種の開発や、すだちなど暖地型作物の試験栽培等、地球温暖化に備えた先進的な取組みが行われてきております。今後は、農林水産分野はもとより、自然災害、水環境、自然生態系、健康、産業・経済活動等多様な分野における「適応策」について、県関係部局や気象庁等政府関係機関と連携して検討を進め、来年度予定している「山形県地球温暖化対策実行計画」の改定に併せて「地域気候変動適応計画」を策定してまいります。また、本県における気候変動への適応に関する情報の収集、整理、分析等の拠点となる「地域気候変動適応センター」の設置についても検討してまいります。

県としましては、安全・安心で持続可能な社会の実現に向け、地球温暖化防止のための「緩和」と気候変動影響への「適応」を車の両輪として、しっかり取り組んでまいります。

【石黒覚 質問】

6 洋上風力発電の導入に向けた取組みについて

 最後に、本県における洋上風力発電の取組みについてお伺い致します。

 国や都道府県におけるエネルギー政策は、8年9ヵ月前の2011年3月11日に発生した東日本大震災が、施策展開の大きな転換点となりました。本県においては、吉村知事の「卒原発」と言う強い思いに押され、国の動きを先取りする形で東日本大震災からちょうど一年目の2012年3月に「山形県エネルギー戦略」を策定致しました。この戦略が掲げました大きな目標は、2020年度まで67.3万kW(電源としては57万kW)、策定から20年、2030年度まで、概ね原発一基分に相当する101.5万kW(電源87.7万kW)の再生可能エネルギーを生み出すとするものです。当時、環境省が平成22年度再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査によって、本県の風力における期待可採量は全国7番目となっており、風力に対する期待が極めて大きかったことが、目標値にも表れていたものと認識致しております。

 また、2017年3月には、2015年12月の「パリ協定」の合意など、世界と日本の動向や本県の導入状況と顕在化した課題を整理し、県エネルギー戦略の前半10年間の具体的政策の展開方向を定めた「エネルギー政策推進プログラム」の中間見直しが行われました。この見直しの中で注目したのは、当初の戦略では表現されていなかったと思われる「洋上風力発電の可能性の研究」と言うことが明記された点でございます。背景には、太陽光発電については2018年度末進捗率が稼働、計画の累計で30.8万kW、101%であるのに対して、風力発電目標である45.8万kWに対して、2018年度末現在で、稼働分2.2万kW、計画決定分6万kW、あわせて8.2万kW、進捗率17.9%と言う、中々進まない状況があること、国内あるいは隣県等で洋上風力発電の議論が高まり、実証実験等が動き出したことなどに起因したものと考えます。

 先月、県政クラブの政務活動で本県漁業振興と酒田港振興の現状について現地調査をさせて頂きました折に、山形県漁協の参事さんから、洋上風力発電における漁業への影響について、いわゆる海中部分の魚礁利用などによる新たな漁業振興という点について期待するお話を承りました。

 また、国は、地球温暖化対策の柱の一つとして、再生可能エネルギーの「主力電源化」を掲げ、様々な施策を展開しておりますが、私は、洋上風力発電が、まさにその切り札になりうるのではないかと考えます。

 こうした中、卒原発と言う強い思いから策定された、本県エネルギー戦略を推進していくに当たって、洋上風力発電の導入に向けた検討の現状と今後の取組みについて、環境エネルギー部長にお伺い致します。

【環境エネルギー部長答弁】

 県では昨年7月に、「山形県地域協調型洋上風力発電研究・検討会議」を設置し、遊佐町の沿岸域を想定し、地域と協調した洋上風力発電の導入に向けた研究・検討を進めてまいりました。今年度は、再エネ海域利用法に基づく「促進区域」の指定に向け課題となる、漁業者や地域住民の更なる理解促進、系統の確保といった課題への対応に重点を置き、取組みを進めてまいりました。

 まず、①漁業者の理解促進につきましては、漁業者にも参加いただき、漁業と協調した洋上風力発電の先進地である長崎県五島市への視察を行ったほか、洋上風力発電と漁業との協調策等に関する研究会を設け、具体的な議論や検討を通して漁業協調策等をとりまとめ、イメージの共有を図りました。また、今年度は特に、遊佐町沖で操業する酒田地区の漁業者の理解を得るため、酒田地区の漁業者にも視察や会議に参加いただいたところです。

 こうした結果、漁業者の理解が進み、促進区域の指定に向けて関係者の調整等を行う法定協議会への県漁協の参加について、近く開催される県漁協の理事会に諮られることとなりました。

 次に、②地域住民の更なる理解促進につきましては、昨年度に引き続き今年度も、県として遊佐町と連携し、町内全6地区の住民に対して検討状況等を説明のうえ、膝を交えて意見交換を行ったほか、遊佐町からも、住民向けの啓発チラシの配布や各地区の公民館まつりの機会を活用した啓発パネルの展示などに協力いただいたことにより、地域の住民の方々にも理解が広がりました。

 さらに、③系統の確保ですが、現状では、想定される事業規模に見合った系統の空き容量はありませんが、事業化を検討している発電事業者からの聞取り調査では、増強工事を行うことにより系統接続は可能であり、その費用も、投資を行う上で妥当な金額と見込まれることから、系統の確保にも一定の目処が立ったところです。こうした取組みの成果が、先月22日に開催した研究・検討会議の遊佐部会で報告され、今年度中にも、法定協議会の設置を経産・国交両省に要請していく方向性が確認されました。

県としましては、今月23日に開催予定の研究・検討会議で了承を得たうえで、地域と協調した洋上風力発電の導入に向け、法の枠組みに基づく新たな段階の取組みを進めてまいります。