2015年3月4日今期最後の予算質疑
2015.3.4《2月定例会予算特別委員会》石黒覚質問要旨
1 教育委員会制度改革(改正地方教育行政法施行)への対応について
(1)首長の権限拡大における知事の基本的考え方について(知事)
昨年6月13日参議院本会議で可決、成立した改正地方教育行政法が、いよいよこの4月から施行されることになります。この地方教育行政法の改正が必要と議論が高まったのは、2011年大津市で起きた「いじめ自殺問題」で指摘された教育委員会の対応の遅れや隠ぺい体質、責任の曖昧さを改善することが求められたものと認識致すところでございます。当時の論調によれば、教育委員会に教育行政の最終権限がある現行の大枠は変わらず、新制度が有効に機能するかどうかは、各自治体の運用に左右されるとの見方であったと記憶いたすところでございます。
現行制度における課題の整理としましては、①教育委員長と教育長のどちらが責任者かわかりにくい ②いじめ等の問題に対して必ずしも迅速に対応できていない ③教育委員会の審議が形骸化している ④地域住民の民意が十分に反映されていない、の4点が示されています。これまで教育における政治的中立性を確保する考え方から、教育においては首長の強権が及ぶことのない制度になっておりました。この度の改正法は、こうした点において大転換を図ったものと思います。これまで首長は議会の同意を得て教育委員を任命し、教育委員長並びに教育長は教育委員会により任命されておりました。改正法では、議会の同意を得て、首長が教育長並びに教育委員を任命する権限を有することになります。また、首長が設置する総合教育会議が、教育委員会とは別に設けられます。まさに首長がトップの会議であることは言うまでもありません。この会議の事務は知事部局が行うのが基本となる方向ならば、教育委員会との権限及び役割分担は、明確なものになっていくのでしょうか。さらには、教育等の振興に関する「大綱」の策定が首長において行われることになります。この大綱に予算や条例提案等の他に教科書採択の方針や教職員の人事異動の基準等についても記されることになれば、教育行政における首長の権限は、極めて大きいものとなることは、言うまでもありません。教育は100年の体系と申します。選挙で首長が変わるたびに教育の方向が変わるような社会であってはならないと、私は考えるところでございます。我が県は教育先進地であると自負致すところでございます。その一例が、国をも牽引してきた「さんさんプラン」に象徴される少人数学級制度、最近、国においては35人から40人に戻す議論が聞かれるようですが、こうした優れた我が県の教育に関する考え方を、更に充実強化するためには、この度の改正法をどのように運用していくことが、必要と考えていらっしゃるか、吉村知事にお尋ね申し上げます。
(2)知事が定める大綱と第6次山形県教育振興計画の策定
状況及び基本的方向について(教育長)
さて、次に具体的なところで、知事が定める「大綱」と「第6次山形県教育振興計画」の策定状況及びその基本的方向について教育長にお伺い致します。先ほど、知事にお伺い致したところでも触れましたが、「大綱」に盛り込まれる予定の具体的内容は基本的にどのような方向になるのか、また策定状況はどのようになっておられるのか。また、平成27年度からの本県の教育振興に係る第6次山形県教育振興計画の策定状況及び基本的方向についてお尋ねを致したいと思います。合わせまして、これら教育に関する2つの大きな柱が、どのように整合性を持ち、どのように役割分担が行われるのか、また先に述べました4つの大きな課題解決に、どのように寄与する「大綱」「計画」にしなければならないとお考えか、教育長にお尋ねいたします。
2 「子育てするなら山形県」における妊婦健康診査
の重要性と周産期医療の充実について
(1) 早産と新生児死亡等の現状と課題について
(健康福祉部)
次に、「子育てするなら山形県」における妊婦健康診査
の重要性と周産期医療の充実について、初めに「早産と新生児死亡等の現状と課題について」健康福祉部長にお伺い致します。
県勢の発展を担い、未来を築く子育て支援・人づくりの充実を進める吉村知事が「子育てするなら山形県」を目指し、合計特殊出生率1.7を目標に掲げ、様々な施策の展開によりまして、本県の子育て環境が着実に進展していることは、大きな評価を致すところでございます。
しかしながら、昨年の8月に行われました、知事と県医師会との懇談会におきまして、県医師会渡辺常任理事、県立中央病院副院長でいらっしゃいます渡辺先生から、県医師会提出議題の一つとして「妊婦健康診査の公費負担について」提起がなされております。その中で、まず、本県の新生児死亡がこの数年で全国最下位に近いという状態が続いているとのご指摘があります。原因は調査中ということのようでございますが、妊娠22週から24週の生存限界と言われる週数の分娩が全国に比べて非常に高くなっているとのことであります。資料によりますと、新生児死亡数が極端に増えているというよりは、例えば本県が平成17年出生1000人対で1.1に対して、全国が1.4で順位は42位だったものが、平成25年本県が1.7に増えている中で、全国が1.0に減少しているという状況のようでございます。また、乳児死亡率についても同様の傾向があるようにお聞きいたしているところでございます。ちなみに、渡辺先生は、この時期の妊婦健康診査に重点的に力を入れないと、全国最下位に近い新生児死亡率を改善させるのは難しいであろうとのご指摘をされています。
この点に関する現状と課題をどのようにとらえておられるのかお伺い致したいと思います。
(2) 妊婦健診の公費負担の現状と課題について
(子育て推進部)
さて次に、妊婦健康診査の公費負担の現状と課題について、子育て推進部長にお伺いを致したいと思います。昨年8月の知事と県医師会の懇談会で渡辺先生は、本県の妊婦健康診査に対する公費負担が全国で5番目に低いという現状であるとのご指摘をされております。日本産婦人科医会は標準的な妊婦健康診査の実施時期、回数、内容を示した上で、必要な金額は平成26年度、11万7660円に設定しているとのことでございます。本県の場合は8万2790円、全国平均が9万7494円だそうでございます。ちなみに、ワースト10は神奈川県、愛媛県、東京都、兵庫県、山形県、大阪府と続き、ベスト10は岐阜県、山口県、長野県、徳島県、高知県、福島県となっているそうでございます。
一概に金額の差が原因だと言えるものではないと思いますし、私のような不勉強なものが単純な話として申し上げることではないと思いつつも、本県におきます周産期医療の第一人者でございます渡辺先生が、ご指摘されているわけでございますので、極めて重いご指摘であろうと考えるところでございます。渡辺先生を中心に致します周産期医療グループの中で、様々な事案や調査に基づくご議論が行われ、現状のままの公費負担で、20週前後の妊婦健康診査にさらに力を入れるべきと言っても、中々難しいのではないかとのご指摘でございます。
生まれてくる命を失うことの無念さを思う時、加えて先ほど知事の目指すべき方向を改めて申し上げましたとおり、合計特殊出生率1.7を目指すためには、一人でも多くの生まれてくる大切な命を守らなければなりません。
そこで、本県における妊婦健康診査公費負担の現状と課題について子育て推進部長にお伺い致したいと存じます。
3 庄内~羽田便の5便化に向けた取組みについて
(企画振興部長)
次に、庄内~羽田便の5便化に向けた取組みについて、企画振興部長にお伺い致します。
平成3年に庄内33万県民の夢と希望をのせて開港した庄内空港は、当初、羽田便1便のみの空港でありましたが、順調に増便を重ね、現在では1日4便の運航となり、いまや、東京はもとより、羽田空港を経由して庄内地域と全国、さらには海外を結ぶ極めて重要な役割を担っております。
一方、開港以来順調な増加を続けてきた利用者数は、近年は、年間35万人前後で伸び悩む傾向にあり、庄内地域の市町や経済界により構成される庄内空港利用振興協議会では
かねてから、同便の5便化などさらなる利便性の向上を要望しているところでございますが、それらはなかなか実現に至らない状況にございます。
こうした状況の中、今年度は、10年ぶりの山形デスティネーションキャンペーンの実施や加茂水族館のリニューアルオープンのほか、新たな企業進出などにより、利用者が久しぶりに大きく増加しているようでございます。1月末現在で、前年度同期比103.5%の利用となっているとお聞きいたしているところでございます。増便を実現する好機が再び到来しているのではないかと考えているものでございます。
昨年6月、吉村知事は庄内地域の首長の皆様とともに庄内~羽田便を運航する全日空本社を訪問し、同社社長に対し「利便性の高い時間帯での羽田便の通年5便化」などを要望されました。
庄内空港利用振興協議会においては、各種利用拡大事業や航空会社等に対する要望活動などに懸命に取り組んでおります。
庄内地域においては、新たな観光需要の掘り起こしによる交流人の拡大や新産業の育成による雇用創出に本格的に取り組むこととしておりますが、これらの実現にあたっては、東京や全国との交流の基盤である庄内~羽田便の通年5便化が企業関係者や観光事業者からも強く期待されているところであります。
航空会社に対し増便を強く働きかけ、庄内~羽田便の増便に向け本格的に取り組むときと考えますが、今後どのように取り組んでいかれるのか、企画振興部長にお伺いいたします。
4 高齢者を守るための消費者教育・啓発の推進について(危機管理監)
先日、全国における振込め詐欺などの特殊詐欺の被害額が昨年1年間で約559億円に上り、過去最悪を更新したとの報道がなされました。被害額が500億円を超えたのは初めてで、高齢者が被害に遭うケースが深刻化しているとの内容であります。
これに対し、本県の被害額は昨年1年間で約1億8千万円であり、過去最悪だった平成25年に比べ、約5千万円減少したとのことであります。件数も56件から48件に減少したとのことで、警察、金融機関、県や市町村、関係機関・団体が、懸命に被害防止策に取り組んでいただいた成果であると評価しているところであります。しかしながら、依然として、県内において、オレオレ詐欺などの被害に関する報道が後を絶たないのも事実であります。
消費者が被害に遭わないためには、賢い消費者になることが必要ではないかと考えるところです。
今、私が危惧しているのは、今後高齢化がますます進み、高齢者がだまされるケースが増えてくるのではないかという点であり、何とかして高齢者を守る取組みが必要になってくるのではないか、また、高齢者自身も自ら身を守ることが必要であると考えるところです。
最近の報道でも、市役所職員をかたる還付金詐欺、不動産投資等の金融商品詐欺等の被害が報じられ、悪質業者も悪知恵を働かせ、いかに消費者をだますか、あるいは強引な手口で買わせるかについて、専門的に知恵を絞っているようにも思えます。
高齢者が増えていく中で、今後、高齢者の被害や消費生活のトラブルが益々増えることが予想されます。高齢者を守るための教育や啓発が必要であると思いますが、県としてどのような取組みを行っていくのか、危機管理監にお伺いします。
5 庄内海浜県立自然公園計画策定状況について
(環境エネルギー部)
最後に、庄内海浜県立自然公園計画策定について、環境エネルギー部長にお伺い致します。
今さら申し上げるまでもないところでございますが、自然公園における「公園計画」は、公園の保護と利用を適切に行うため、「特別保護地域」「特別地域」「普通地域」に区分けして、それに応じて規制の強弱を定めるものだと理解致しております。庄内海浜県立自然公園は、昭和23年に県立自然公園に指定されて以来、その全域が普通地域となっており、その後区分けがなされておりません。ちなみに、山形県立自然公園6か所の内、未設定記区域は庄内海浜県立自然公園のみとなっております。
平成24年3月に策定されました、第3次山形県環境基本計画において「優れた自然の風景地として指定されている自然公園内には、風力発電の適地も多いことから、その導入を促進するため、自然公園の価値を著しく損なう恐れのある地域や貴重な動植物の生息・育成に重大な影響を及ぼす恐れのある地域を除き、風力発電施設の整備に配慮すると共に、公園計画未決定の自然公園については、その早期の策定を目指します」と書かれております。
現在、県企業局と酒田市が計画する風力発電事業の環境影響評価が進められております。本事業は、吉村知事が目指します「卒原発社会実現」への大きな柱として位置付けられるものと認識致しております。これまでも多くの機会を設け説明会を開催しながら慎重に進めておられます。先日も50名を超える県民の皆様が熱心にご議論されたとお聞きいたしております。今後は、準備書、評価書段階へと進み、評価書手続きが終わると、県立自然公園条例に基づく手続きがなされていくことになります。
これらの経過を踏まえながら、私くしは、本県が目指します、再生可能エネルギーによる環境共生社会の構築のためには、今回の風力発電事業は極めて重要な事業であるとの認識を持ち、本事業を県民皆様の理解のもと、スムーズに進んでいくためにも「第3次山形県環境基本計画」に示す公園計画の早期策定が必要であると考えるところでございます。そこで、計画策定の進捗状況及び策定の時期はどのように考えておられるのか、また、今回の風力発電事業で公園内での開発の是非を問うことなく、しっかりと公園のあり方を議論すべきと考えるが、いかがでしょうか。さらには、県には、森林保全、野生生物保護などの知見が蓄積されており、専門知識を持つ職員も大勢います。事業を行う部局だけで進めるのではなく、「開発」と「保護」両面から部局を超えて、知見を結集し、知事が目指します環境とエネルギーが調和した「卒原発社会」の実現に向けて進むべきと考えるところでございますが、環境エネルギー部長にお伺い致します