平成26年3月3日一般質問

《2月定例会一般質問3/3》石黒覚質問要旨

(はじめに)
県政クラブの石黒覚でございます。冒頭に、東日本大震災から間もなく丸3年が経過する中で、改めまして犠牲になられました多くの方々の御冥福をお祈り申し上げますとともに、今なお避難生活を続けられております皆様方に、心よりの激励を申し上げたいと存じます。そして、100年以上ぶりと言われました積雪地以外の地域での豪雪による被害に遭われました皆様にも、心よりお見舞いを申し上げたいと存じます。

1 地方分権の推進について
(1) 地方分権改革の方向について(知事)

はじめに、地方分権の推進をテーマとして質問させていただきます。
知事は、県政運営の二期目に当たり、本県の恵まれた地域資源を活かし、山形らしい、山形にしかできない新しい成長の姿をしっかりと実現していかなければならないという強い決意を込め、「自然と文明が調和した理想郷山形」の実現を将来ビジョンとして掲げておられます。知事の進める県政は、まさに「地域のことは、地域が決める、地域主権」の考え方そのものであろうと拝察申し上げ、私も同感であることを申し上げたいと存じます。
そこで、こうした考えのもと、本県のさらなる発展を加速させるためには、地方分権がどのような現状にあり、どのような進め方が必要であるのかについて、私たち地方を守り発展させる立場にある者が、常に検証することが重要であると認識いたすものでございます。
27日の代表質問では、我が会派の高橋議員が道州制について取り上げましたが、最近の状況を見ますと、遅々として進まない地方分権を尻目に「道州制ありきの強引な議論」になってはいないのか、と考えてしまうところでございます。
また、一方では、「中央集権」から「地方分権」への流れが停滞し、むしろ「中央集権」へ逆戻りの感さえ無きにしもあらず、と思えるところでございます。
本来、国から都道府県へ、都道府県から市町村へ分権が進み、基礎自治体に、より高い住民自治力、安定した財政、そして、人口規模等による格差の解消等が実現されるべきところでありますが、一向に進まず、むしろ悪化している中で、解決しなければならない課題は山積みです。かつて平成5年6月に衆参両院全会一致で決議された「地方分権の推進に関する決議」以降、20年が経過する現在、地方分権改革の現状をどのようにとらえ、地方の発展のためには今後、どのような方向に向かうべきか、吉村知事の御所見をお伺いいたします。

(2) 都道府県への権限移譲について(企画振興部長)

次に、都道府県及び市町村への権限移譲についてそれぞれお伺いいたします。まず、国から都道府県への権限移譲についてであります。
今ほど申し上げましたように、「地方分権の推進に関する決議」から20年が経過する中で、国から都道府県への権限移譲は、どのように進められ、現状どのような状況にあると言えるのか、そして、そうした都道府県への権限移譲について、本県はどのように対応しているのか、企画振興部長にお伺いいたします。

(3) 市町村への権限移譲について(企画振興部長)

また、県から市町村への権限移譲についてでありますが、本県におきましては、平成18年10月に「山形県事務・権限移譲推進プログラム~市町村自らの特色を活かした活力に満ちた地域社会の構築に向けて~」を策定され、昨年の平成25年3月に改訂版が示されております。改訂された内容を改めて確認させて頂きながら、進捗状況、成果、権限移譲に係る課題、更には今後の進むべき方向についての企画振興部長の御所見をお伺いいたします。
さらに、県内で進められた平成の大合併から10年ほどが経過するわけですが、地方分権改革による市町村への権限移譲を今後進める中で、県から市町村への人的支援など、県として権限移譲の受け皿となる市町村へのサポートをどのように行っていくのか、併せて企画振興部長にお伺いいたします。

(4) 優秀な人材の確保について
(人事委員会事務局長)

さて、地方分権の進展に伴って、県の事務は裁量の幅が広がる一方で、専門化や多様化が進み、複雑で質的に難しくなっております。
こうした事務を担うのが職員の皆様であり、地域の実情に応じた住民本位の行政サービスを提供していくためには、職員一人一人により高い資質と能力が求められるものだと考えます。
本県においては、昨年3月に「山形県行財政改革推進プラン」を策定し、今後の本県発展に向けて、責任感を持って、県民の視点に立って自ら考え、主体的に行動する職員を育成すると共に、職員が能力を発揮できる環境の整備を図り、自主性・自律性の高い県政運営を支える基盤をつくっていくことが示されております。
ベテランの職員はもちろんのこと、能力のある若手職員がいきいきと意欲的に働くことができる県庁であってほしいと考えます。
このような中で、近年、公務員をめぐっては人員削減や給与の削減など、大変厳しい情勢が続いていることは、御承知のとおりでございます。言うまでもなく、安定した職業として人気の高い公務員志向も、時代の流れの中で変わることもまた事実であります。
とりわけ、技術系職員につきましては、東日本大震災以降、被災地自治体におきましての、復興支援のためのニーズが高くなったという事情もあり、本県の職員採用にも影響が出ているとの状況も伺っているところでございます。
また、民間企業においては、景気の上向き傾向を背景に、雇用情勢が改善している中で、全国的には公共投資の増加などの影響と思われる、建設業を中心にした求人数が増えているとの報道もございます。このようなこと自体は大変歓迎すべきことでございますが、反面、本県職員採用への影響も懸念されるところであります。
そこで、本県の将来を担う優秀な職員を確保するために、採用試験を実施する人事委員会としてどのような考え方で取り組んで行かれるのか、最近の採用試験の応募状況を含め、これを踏まえた今後の取組み方針について、人事委員会事務局長にお伺いいたします。

2 東北公益文科大学の振興について(総務部長)

次に、平成26年度予算における施策展開の第一の柱に掲げられております「県勢の発展を担い、未来を築く子育て支援・人づくりの充実」に関係いたします、東北公益文科大学の振興についてお伺いいたします。
昨年の夏に、大変悲しい事件が発生いたしましたことは、誠に残念なことでありました。以来、役員、教職員、学生たち上げて、そのことを乗り越え、大学の発展のために強い意志を持って取り組む姿勢には、心打たれるものがございます。
平成13年4月に開学されました東北公益文科大学は、間もなく丸13年を経過するところでございます。開学間もない時点から、定員割れの状況が続く中で、経営基盤の再構築、学生たちの学びの更なる充実、その名のとおり地域に貢献する人材の輩出を目指して、一昨年4月に大きな組織変革に取組み、新田嘉一理事長、町田睿学長の新体制のもと、新たな歩みを進めていることは、誠に頼もしくありがたいことでございます。
さて、そうした取組み強化の中で、昨年、文部科学省が平成25年度新規事業として、全国の大学などを対象に公募した「地(知)の拠点整備事業」の採択を勝ち取りました。この事業は、地域の課題解決に向けてさまざまな人材や情報・技術を集積することで、大学を地域コミュニティーの中核的存在として機能強化を図ることを目的にしております。
本大学は、教職員一丸となって取組み、「地域力結集による人材育成と複合的課題の解決―庄内モデルの発信」をテーマに申請をし、申請総数319件のうち52件が採択された中で、東北・北海道の私立大学では唯一の採択という、快挙を成し遂げたものでございます。2017年度までの5年間で合計2億5100万円の事業を展開することになります。本県庄内地域の大いなる発展、活性化に寄与してくださるものと、大きな期待を致すところでございます。
「地(知)の拠点整備事業」採択に寄せて、新田嘉一東北公益文科大学理事長は、「公益大を卒業すると、世界のどこに行っても生活できる、どの民族とも協和できる、言葉も2か国語ぐらいは十分話せるグローバルな人材をつくることが最終目的。人材育成こそ、この地域が生き残る唯一の道、公益大が庄内に存在する理由」であると、述べられており、その人づくりへの理念に敬意を表するものであります。
さて、こうした東北公益文科大学の地域再生に向けた取組みに対して、本県としてどのような認識をされ、また、県として情報を共有しながら、今後どのような支援が必要なのか、県が担うべき役割などについて、総務部長にお伺いいたしたいと存じます。

3 慶應義塾大学先端生命科学研究所の研究成果の産業化について
(副知事(商工労働観光部長事務取扱い))

次に、平成26年度予算における施策展開の第三の柱に掲げられております「強みと特色を活かした産業振興・雇用創出」に関係いたします、慶応義塾大学先端生命科学研究所の研究成果の産業化についてお伺いいたします。
2001年、21世紀の幕開けと共に開設されました「慶応義塾大学先端生命科学研究所」は、開設からわずか13年間の間に、世界最先端のバイオ技術の開発に数多く成功し、そうした技術の実用化により、本県の産業振興はもとより、文字通り私たちの生命を育て守るための医療や食料生産、更には皆様ご承知のとおり、世界初の量産化に成功したスパイバー社の合成クモ糸繊維など、まさに未来に大いなる夢が広がる実績を拡大し続けております。
県民の血税を私立大学の研究開発費に投ずる是非について議論のあることも承知いたしておりますが、教育は国家百年の大計と言われますように、多くの技術革新の歴史には、並々ならぬ研究者のあくなき挑戦を支える、公的私的を問わず強い支援や投資が不可欠であることも、歴史が物語っているものと考えます。
私は、本県が十数年にわたり先端生命科学研究所に対する支援を続けてきた成果が、着実に表れていることに大いに評価を致すものでございます。
一方で、世界的な研究成果から、実用化によって画期的な産業形成へと発展する可能性があることを承知しながらも、これまでの行政的感覚からすると、実用化から生産拡大等においては、民間が進めればよいという程度の取組み姿勢故に、実際に研究開発された地域や国ではないところに生産拠点が築かれるような、不合理がたくさんあったのではないかと思うのであります。
例えば、先ほど触れましたスパイバー社の合成クモ糸繊維の本格的生産活動が進むと、航空機や自動車の部品、人工血管など医療分野、宇宙開発など、限りなく応用が広がるものと確信します。
そうした意味において、現在、本県及び慶應先端研やスパイバー社等が、国が進める国家戦略特区制度に対して「次世代基幹産業創生特区」として共同で提案し、果敢に挑戦していることは、極めて高い評価を致すものでございます。
昨年11月の決算特別委員会の庄内空港に関する質疑で、庄内地域を中心に本県が、スパイバーによって画期的な産業革命を興し、アメリカのシリコンバレーから、次世代の基幹産業集積地スパイバーバレー誕生へ動き出したことをお話しさせて頂きました。スパイバーの可能性は数兆円規模の産業と言われているそうであります。次世代産業振興にとりましては、今からの投資こそが重要なものであるという認識のもとに、これまでの成果に対するご所見と、平成26年度予算による新たな展開がなされていく方向、合わせましてこの3月に具体的地域の決定がなされる予定の国家戦略特区指定の状況につきまして、副知事(商工労働観光部長事務取扱い)にお伺いいたします。

4 米政策の見直しへの対応について
(農林水産部長)

次に、平成26年度予算における施策展開の第四の柱に掲げられております「高い競争力を持ち、豊かな地域をつくる農林水産業の発展」に関係いたします、米政策の見直しへの対応についてお伺いいたします。
戦後日本の農業政策は、「ネコの目農政」と揶揄されるほど、コロコロと変わりながら今日まで来たものでございます。本県の米づくり農家の方々にとりましては、今から43年前、減反政策という屈辱的な政策によって、作付面積の自由を制限されました。しかし、農家の皆様方は国の政策を受け入れながら、私たち日本人の主食でありますお米を、より美味しく、より安くするため惜しみない努力を続けてこられました。
このいわゆる減反政策を5年後を目途に廃止することも含めた米政策の見直し案が昨年11月6日に農林水産省から自民党に説明され、同11月26日には、政府の「農林水産業・地域の活力創造本部」で正式決定されました。まさに青天の霹靂、寝耳に水でありました。
こうした経過を、本県米農家の皆様方はどのように受け止められたのか、一つだけ間違いないと思われるのは、米の直接支払交付金が来年度から半減となり、5年後には廃止されることから、主食用米の作付規模の大小にかかわらず、農家の皆様方は、一様に目の前が真っ暗になるような不安になったのだろうと、思うのであります。
昨年3月15日、政府はTPPにより関税を撤廃した場合の影響試算を公表しておりますが、それによれば、日本の国内総生産(GDP)が3兆2千億円押し上げられるが、農業分野の生産額は3兆円減少すると推計されております。
その一方で、「農林水産業・地域の活力創造プラン」において、農業・農村全体の所得を今後10年間で倍増させることを目指すとし、さらに経営所得安定対策の見直しにより、平均的な農業集落における所得が13%増えるとしており、疑問を感じます。
本県産業の基盤は農業であるとの自負を持ち、吉村知事の重要施策でございます「農林水産業を起点とする産出額3000億円のさらなる拡大」を目指す本県農業に、この度の農政大転換は大きな影響を与えると思います。本県農業にとって、水田農業は基幹であります。このたびの米政策の見直しを受けた今後の水田農業を中心とした本県農業のあり方について、農林水産部長にお伺いします。
なお、この農政大転換の中において、最も不安にさらされているのは、言うまでもなく農家の皆様方です。中でも、耕作面積の小さい農家の皆様、ご高齢で後継者がいないなどの弱い立場の皆様です。そうした皆様の現場の声を、丁寧にお聞きする仕組みも大切だと考えます。県、市町村、関係団体が一体となった相談機能を構築していただきたいと御要望をいたしておきたいと存じます。

5 酒田港の機能強化について(県土整備部長)

次に、平成26年度予算における施策展開の第六の柱に掲げられております「地域活力を生み出し災害に強い県土基盤の形成」に掲げられております、酒田港の機能強化についてお伺いいたします。
私が、山形県議会に議席をお預かりいたしましてから約3年の間に、本県唯一の貿易港「酒田港」の担うべき役割と機能強化の重要性に関しましては、機会ある度にご議論をさせて頂いております重要課題の一つでございます。
東日本大震災発災後は、太平洋側被災港湾の代替港湾としての役割を担いました。また、伸び代に大きな期待を頂き、国の重点港湾、日本海側拠点港に選定されました。リサイクルポート指定と合わせた、21世紀の新しい港湾の在り方を模索しながら、着実に整備が進められておりますことは、高い評価を致すものでございます。
平成25年度は、2基目のコンテナクレーンを設置し、既設のコンテナクレーンの維持修繕が行われ、文字通り機能拡充強化が図られました。
酒田港管理者であります山形県のこうした取組み強化の方向を、民間企業の皆様方も、しっかりと受け止めて下さり、例えば、花王酒田工場に紙おむつ拠点化のための工場拡張が図られ、間もなく動き出すところでございます。こうした多くの関係者のご努力が積み重ねられまして、酒田港と韓国プサン港を結ぶ定期便が週3便に拡大されますことは、本県経済の発展、中でも吉村知事が自ら全霊をかけてトップセールスを続けておられます、海外との経済交流拡大が、着実に進展していることの証であることは、言うまでもないことでございます。
さて、平成26年度予算における酒田港機能強化施策の具体的な方向と、今後の更なる課題について、でございますが、平成26年度は荷役機械でありますリーチスタッカ―の整備などが予定されております。こうして荷役機械が充実される一方で、最近、製品の一時貯留等の施設であります上屋が不足している状況にあるとの、お話をお聞きしたことがありますが、どのようになっているのかお伺い致したいと思います。
また、長年にわたる懸案であります、石炭輸入の効率化に関する港内航路の水深改善の課題など、酒田港のポテンシャルを上げる課題については、どのような状況になっておりますか、最近の物流データを含めて、県土整備部長にお伺いいたします。
蛇足ではございますが、港湾運営という分野は、長い歴史に支えられて維持発展がなされていることは言うまでもありません。しかしながら、21世紀の港湾経営は、ハード面の整備充実強化はもちろん必要なことではございますが、併せて港湾荷役の効率化や、上屋等物流倉庫の稼働率のさらなる効率化のためのソフト面の充実が求められる時代であろうと考えます。21世紀の新たな港湾運営を酒田港から構築するための、新たな議論の展開によって、酒田港が益々活性化することを、願うものでございます。

6 大工職人育成事業について(県土整備部長)

最後に、同じく第六の柱に掲げられております「大工職人育成事業」についてお伺いいたします。
私は、もともと一級建築士として建築生産という仕事の現場で、多くの先輩方から育てていただいた者でございます。特に、独立以降は、在来工法による木造住宅や大型木造建築物など、木にこだわった建築物を設計して参りました。一方で、我が国における伝統技術を継承する職人不足が極めて深刻な状況にあることを危惧してきたところでございます。長年の取組みにも関わらず、国においても未だその改善策が見えていない状況であります。
先日、酒田飽海建設総合組合酒田大工支部総会に出席させていただき、挨拶に立ち、伝統的木造建築技術の担い手育成の重要性について、例えば、世界的にはドイツが誇る「職業教育とマイスター制度」があることに触れながら、本県独自の施策を皆様方と知恵を絞り、創り上げていかなければならない時代であると、お伝え申し上げたところでございます。
様々な文献を見ますと、ドイツのマイスター制度が、現代社会の技術継承の完全なるモデルであるとは言えない部分があることも指摘されております。しかしながら、職業教育の充実や伝統技術継承者の育成なくして、我が国の伝統的建築技術・技能を維持発展させることはできないと考えます。
御承知のように、一つの建築物を造り上げるには、大工、左官、瓦、板金、塗装、畳、建具、家具、電気、設備など多くの職人・技術者が必要です。
来年度は、大工職人育成の取組みとのことですが、この新たな事業の具体的な内容と今後の進め方、関係団体との連携の取組みや目指す目標値などについて、県土整備部長にお伺いいたします。

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