15.6.30《6月定例会予算特別委員会》石黒覚質問要旨
お疲れ様でございます、先の統一地方選によります改選後、最初の6月定例会予算特別委員会質疑の機会を頂きましたことに、感謝申し上げます。
さて、山形県議会議員選挙につきましては、ご承知のように過去2回の選挙におきまして、19選挙区のうち11選挙区が無投票という状況でございました。私自身も70年ぶりと言われました酒田市飽海郡区で無投票を経験いたしました。4月の選挙前、山形新聞社が「立候補予定者56人に聞く」という特集を組まれました。3月30日の紙面で「現行の県内19選挙区を再編すべきか」とのアンケートの結果が掲載されておりました。①再編すべきが、最も多い27人、②再編すべきでないが10人、③どちらともいえないが15人との結果でした。ちなみに、当選を果たされました現職44名の議員の状況は、①再編すべきが22人、②再編すべきでないが8人、③どちらともいえないが9人となっているようです。
また、現行定数の44に関するアンケートでは56人中、①適正が30人、②多いが7人、少ないが1人、④どちらともいえないが15人でした。
こうした様々な現状を真摯に捉え、頂きました任期4年間、精いっぱい努めていかなければならないと、改めて肝に銘じますと共に、民主主義の根幹でございます「選挙」の活性化に向けます、制度改正等も含めた議論が高まる、伝統ある山形県議会を皆様方とご一緒に、前に進めていかなければならないと考えるところでございます。
改選後初めての質問の機会でございますので、私見を述べさせて頂きました。それでは質問に入らせて頂きます。
1 やまがた創生の取組みについて
(1) 教育大綱に込められた子供たちの未来像について(知事)
本年2月定例会予算特別委員会におきまして、お尋ねをした経過があります「教育、学術及び文化の振興に関する施策の大綱」につきまして、改めてお伺いを致したいと存じます。先の定例会の質疑の時点では「大綱」の具体的骨格などが定まっていない中で、知事の目指すべき本県の教育、学術及び文化の振興についての基本的な考え方を承ったと思います。
その後、多くの協議あるいは県民の皆様方のお声を承りながら、5月18日に開催されました「第1回山形県総合教育会議」を経まして「山形県教育、学術及び文化の振興に関する施策の大綱」が策定されました。この日の会議は、本県の教育等の方向をこれまで教育委員会が担ってきた歴史から、大きく転換し、首長であります知事が、その方向を定めるという本県教育における歴史的場面であろうと思い、傍聴をさせて頂きました。示されました「基本的な方針7項目」に込められました吉村知事の思い、そして本県の未来を担う子供たちを、どのような子供たちに育て、その子供たちが未来の山形をどのように切り拓いていくのか。人口減少社会の中で、地方創生が叫ばれる現在、私たちが進めなければならない「やまがた創生」の観点から、改めましてご所見をお伺い致したいと存じます。
(2)財務省試算による教職員数の削減について(知事)
次に、教育の充実が我が国の発展の根幹であり「地方創生・やまがた創生」の基本であることは、どなたも否定されることはないところだと、認識を致すものでございます。そしてそのことの実現のために、教職員の果たす役割の重要性は申すまでもないところでございます。
そうした中で、去る5月8日の新聞各紙に掲載されました、財務省による公立小中学校の教職員数削減試算が公表されました。現在の教育環境を維持した上でとの、注釈を付して、2024年度までの9年間で2015年度の約6%に当たる、約4万2千人削減できるとの試算でございます。私の読んだ山形新聞の記事によれば、この試算を基に、別の教育予算や財政再建に財源を回すべきだと主張する構えだが、教員不足で増員を求める声が根強い教育現場からの反発が予想され、議論は難航しそうだとの見解が述べられています。さらに、この試算に対して文部科学省は、2024年度に必要な教職員数を約68万7500人としており、財務省試算との差は、3万5900人にものぼり、大きな開きがございます。また、財務省試算どおりに削減すると、人件費の国庫負担分が約780億円圧縮できるとしています。法律で定められた基礎定数が、少子化による自然減で2024年度までに3万7700人減となり、少人数指導の実施などで上積みしている加配定数に関して2015年度と同じ水準に据え置いても約4200人減らせるとしているのございます。
我が県は、今さら申し上げるまでもなく、山形らしい人材育成を目指して、さんさんプランに象徴される少人数教育による、きめ細やかな教育を進めているところでございます。現時点では文部科学省も、まさに本県の考え方と同様な考え方を訴えていると、記事は伝えておりました。このことにつきましては、去る5月30日開催の山形県開発推進懇談会におきまして、突然ではございましたが、本県選出国会議員の方々にも教育こそ我が国繁栄の根幹であり、財政議論のみから教育環境を議論しないで頂きたい旨のご要望を申し上げさせて頂いたところでございます。そこで、改めまして、財務省試算による教職員削減の考え方について、吉村知事のご所見をお伺い致したいと存じます。
(3)日本創成会議提唱「東京圏高齢化危機回避戦略」について (知事)
次に、今月6月4日に日本創成会議の首都圏問題検討分科会が発表しました「東京圏高齢化危機回避戦略」について、吉村知事が6月8日の定例記者会見で表明されました考え方について、改めましてお伺いを致したいと存じます。
日本創成会議は、東京圏の75歳以上の高齢者が、今後10年間で急増するとして、医療、介護の施設や人材に余力がある地域として山形市を含む26道府県の41地域に、高齢者の移住を促すよう政府や自治体に求めると提言しました。これを受けまして、吉村知事は「東京圏での高齢化の進展や高齢社会を支える医療、介護の慢性的な人材不足を考えると、高齢者が元気なうちから地方に魅力を感じ、自ら希望して地方に移住することを促す取り組みは極めて重要」と述べられました。山形新聞の記事は「評価する姿勢を示した」と書いております。団塊の世代の高齢化が、この10年で着実に進むことは避けられない事実であり、戦後の高度成長期に怒涛のごとく東京を中心にした大都市に、人、モノなどすべてが集中していき、国土の均衡ある発展を阻害する状況から、人口減少社会に転じ、地方が疲弊しきった中で地方創生が叫ばれ始めました。歴史をひっくり返すことはできませんので、この現実を国民全体で克服していくことは言うまでもないところでございます。しかしながら、最初に「41地域は医療、福祉など高齢者が生活するうえで素晴らしい地域だ」と褒めたたえ「後は任せます」的な押し付けであってはならないと、考えるところでございます。吉村知事の「この取組みは極めて重要」とお受け止めになられたお考えには、異論はございませんが、こうした取り組みが現実として、受け入れる側の県民の皆様、移住してこられる長年大都市で生活してこられた方々、両方が幸せな生活を送ることができるシステムづくりを、しっかりとしなければならないと考えます。まずは、吉村知事のご所見を改めてお聞かせ頂きたいと存じます。
(4)「東京圏高齢化危機回避戦略」の取組みの方向について(健康福祉部長)
さて、「東京圏高齢化危機回避戦略」に対する吉村知事のお考えをお聞きいたしましたので、知事も解決しなければならないいくつかの課題について、ご指摘されておられる点も含めまして、具体的な取り組みの方向について、健康福祉部長にお伺い致します。
日本創成会議首都圏問題検討分科会の議論と並行する形で、5月14日開催の「日本版CCRC構想有識者会議」において、健常時から高齢の要介護時まで、移転することなく継続して暮らせる複合型コミュニティの日本版となる「日本版CCRC」についての地方自治体調査結果を、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局が報告されたようであります。ちなみに、私もいまだよく理解いたしておりませんが、CCRCというのは、Continuing Care Retirement Community(コンティニュウイング ケア リタイアメント コミュニティ)の略称で、アメリカで普及している高齢者コミュニティのことだそうでございます。その報告によりますと、政府はこれを参考にした「日本版CCRC」により、東京から地方への高齢者の移住を促進し、地方創生につなげたいと考えていることから、本年3月26日から4月15日にかけて、全都道府県・市町村1788自治体を対象に調査したようでございます。調査結果によりますと、日本版CCRC関連の取り組みを推進する意向が「ある」のは202自治体(11.3%)で、「ない」もほぼ同数の199自治体(11.1%)。残りは、「今後考える」(77.6%)だったようであります。この件についての本県の考え方も合わせまして、「東京圏高齢化危機回避戦略」の取り組みの方向につきまして、健康福祉部長にお伺い致します。
(5) 地方への本社機能移転に向けた企業立地の取組みについて (商工労働観光部長)
次に、本県の企業立地の取組みについてお伺い致します。県内の工業団地の分譲状況をみますと、県全体では約9割の分譲率となっており、地域別に見ても県内4地域全てで8割を超える分譲率となっているようでございます。
庄内地域の工業団地においても近年、工場や大規模なコールセンターの立地が進んでおります。 また、経済産業省の調査結果によれば、平成26年の本県の工場立地件数は23件で、件数としては東北では宮城県、福島県に次ぐ第3位でございますが、これまで県や市町村が企業誘致に取り組んできた成果もあり、ものづくり産業の集積は着実に進んでいると感じております。こうした中で、政府では昨年来、「地方創生」を掲げ、東京一極集中を是正し、地方への企業分散、地域産業の活性化を強く後押しする方針を打ち出しています。その一環として、地域再生法を改正し、企業が地方の本社機能を強化したり、東京から地方に本社機能を移転したりする場合に、税の優遇を図る「地方拠点強化税制」を施行することとしています。この優遇税制により、地方の本社機能の強化や、地方への本社機能の移転が期待されるところであります。企業の本社機能が移転してきた場合、若者や女性の雇用の受け皿として、事務系の雇用に大きな効果があると考えられ、また、社員が移転してきたり、地元企業への発注が増加したりすることで、人口減少や地域経済に対する効果も大きいものがあると思われます。政府が地方創生により、企業の本社機能の地方移転を促進する方向にある中で、本社機能移転の本県への誘致について、どのように取り組むべきとお考えか、商工労働観光部長にお伺い致します。
2 酒田港の機能強化と利用促進について
(1)貨物増大に対応する港湾機能の拡充と周辺環境整備について (県土整備部長)
次に、酒田港の機能強化と利用促進についてお伺い致します。まず、コンテナ貨物の増大に対応する港湾機能の拡充と周辺環境整備について、県土整備部長にお伺い致します。
昨年の9月定例会一般質問で、増大する酒田港のコンテナ貨物に対する対応についてお尋ねをさせて頂きました。コンテナヤード内の最適な配置と3台目のリーチスタッカー導入というご答弁でございました。その後、さらに着実にコンテナ貨物が拡大している中で、先日の代表質問において、佐藤藤弥議員のご質問に、コンテナヤードの拡張も含めて検討していくとのご答弁でございました。コンテナ貨物がこのように順調に拡大しておりますことは、本県の経済活動に大きな元気を与えると同時に、海外戦略への弾みになるものと喜ばしく思うところでございます。 そこで、週6便化が実現された現在、そしてこの先の見通しなどから、酒田港の国際コンテナ埠頭の岸壁使用状況などから拡張の必要性、国に対する要望活動の現状はどのような状況にあるのか。また、臨港道路等の維持管理、整備などの状況ですが、たとえば冬季間の季節風によって、毎年飛砂によって臨港道路の通行を妨げる箇所があると聞いておりますが、今年3月の暴風時に、2~3日通行止めになるほどの、被害があったようでございます。あるいは、コンテナ輸送車であります、トレーラーが通過するのに困難な箇所等はないのか、利用者拡大あるいは荷主が酒田港視察などの折に、良くない印象を持たないための環境整備も重要な課題であろうと思うところでございます。こうした点についての現状と今後の対策について、県土整備部長にお伺い致します。
(2)コンテナ貨物の酒田港利用促進について (商工労働観光部長)
次に、コンテナ貨物の酒田港利用促進について、お伺い致します。酒田港の国際定期コンテナ航路につきましては、平成7年に開設以来、本県の国際物流の拠点として、海外との貿易に大きな貢献を致してまいりました。最近の取扱コンテナ貨物量の増大はめざましく、就航便数もこの6月には国際定期コンテナ航路が開設されて以来、初めて週6便となりました。大変明るい、うれしいニュースであります。酒田港の利便性が高まったことは、利用荷主の方々への大きなアピールになるものと考えるところでございます。しかしながら、県内企業の酒田港利用率は、国土交通省の「平成25年全国輸出入コンテナ貨物流動調査」によりますと23.3%と、まだまだ低く、満足できる水準ではないように思われます。県では利用荷主に対する助成制度を設け利用拡大を促進していますが、先日、ある企業経営者と、酒田港についてのお話しの中で、助成制度についてはよくわからないと申しておりました。航路の拡充や助成制度についての企業への周知が少し不足しているのではないでしょうか。今般のコンテナ貨物取扱量の増加や増便により、酒田港の注目度も大変高まってきている今こそ、県内はもとより、近隣県においても狙いを絞った効果的なポートセールスや助成制度により、利用荷主の増大につなげるチャンスではないかと考えます。 そこで、酒田港の国際定期コンテナ航路が、多くの荷主の皆様から利用され、より一層拡大するように、今後のポートセールス活動にどのように取り組んでいかれるのか、商工労働観光部長にお伺います。
3 農業の6次産業化の促進について(農林水産部長)
次に、農業の6次産業化の促進について、お伺い致します。食料供給県として、わが国の「食」を支え、本県の基盤産業であります農業を発展させていくことは、県民の所得の向上や雇用の創出、さらには地域の活力向上をもたらすものでございます。人口減少等による国内需要の縮小や、米の生産調整が平成30年に廃止されるなど、現在、農業を取り巻く環境は大きな転換点にさしかかっております。こうした中、農産物の生産に加え、加工、流通・販売にも一体的に取り組んでいく6次産業化を進めていくことは、新たな付加価値を産み出し、これからの本県の農業の安定・発展を実現するために不可欠なことであると考えております。身近な6次産業化の例としては、県内各地で展開されている産地直売所があげられます。新鮮な農産物を手軽に購入することができることもあり、消費者からも人気のある施設となっております。農業者にとっても、流通コストの削減等により所得の向上にもつながっているという声もお聞き致します。こうした農業者自身が自らの所得向上のために主体的に取り組んでいくことを応援し発展させていくことは、大切であると認識致すところでございます。一方、農林水産省の事例集では、農家が、生産から加工品づくりまでの力や、販売力をつけ、個々の農業者が農産物の生産に加え、加工や販売までを一手に行い、徐々に発展している例が取り上げられておりますが、実際の農業の現場を見ると、現実的には労力や資金面等多くの課題を抱え、簡単には進まない場合が多いのではないでしょうか。今、地域の農業に必要とされているのは、より多くの農業者の努力が、それぞれの所得の向上や地域の活性化につながるようにしていくことだと考えます。そのためには、食品製造業など食に関わる他産業とも連携し、農産物の生産拡大や付加価値の創出に結び付けるような取組みを進めていく必要があると思います。所得の向上や地域の活性化に向けた農業の6次産業化の取組みの現状と課題、それらの今後の推進方向について農林水産部長にお伺い致します。
4 こころの医療センターの現状と課題について (病院事業管理者)
最後に、こころの医療センターの現状と課題につきまして、お伺いいたします。
老朽化が進んでおりました鶴岡病院につきましては、鶴岡市郊外の山合いの高坂地区から、月山や鳥海山、出羽山地を見渡せます市街地の茅原(ちわら)地区に移転・改築されまして、本年3月に「こころの医療センター」として開院されたところでございます。市街地に移転・改築した理由と致しましては、精神科医療がこれまでの入院医療主体から、地域保健・医療・福祉などの連携によります通院医療主体に大きく転換していること、そして、ストレスを起因とするうつ病や不登校、発達障害など子供たちの心の病、さらには高齢社会を反映した認知症など、多様化するニーズに適切に対応するためとお聞き致しております。この医療センターは、重症の精神科救急患者を集中的に治療する「精神科救急入院病棟」、子供の精神疾患への専門的治療やストレスによるうつ病などの治療に対応する「子ども・ストレスケア病棟」などが新たに整備されており、県民の精神科医療の質の向上が期待されるところでございます。開院から3ヶ月ほど経過いたしまして、今後は、整備されました新病院の機能を十分に発揮し、本県の精神科医療の基幹病院として、大きな役割を果たしていくことが求められますが、現在の運営状況とともに、今後の課題と対応について、どのようにお考えか、病院事業管理者にお伺い致します。