2022年9月定例会最終日10月7日 反対討論述べる

請願26号・28号「日本政府に核兵器禁止条約の署名及び批准並びに締約国会議へオブザーバーとして参加することを国に求める意見書の提出について」不採択とする委員長報告に対する【反対討論】

県政クラブを代表いたしまして、ただ今議題になっております、「日本政府に核兵器禁止条約の署名及び批准並びに締約国会議へオブザーバーとして参加することを国に求める意見書の提出について」提出された請願26号並びに同趣旨の28号は、極めて願意妥当とする立場から、これを不採択とする総務常任委員長報告に反対の立場から討論申し上げます。

世界で唯一の被爆国である我が国は、本年、被爆77周年を迎えました。去る8月6日及び9日、広島、長崎におきまして二度とあってはならない核の使用を、悲痛な叫びとして世界に発信されたことは記憶に新しいところでございます。特に私は、小学生の平和への願いを込めたスピーチに涙を流しながら、この子たちの時代に核を残してはならないと、強く強く思いを深めたところでございます。

今年2月24日、ロシアによる蛮行ウクライナ侵略戦争が始まって、すでに7ヶ月が過ぎました。この間、ウクライナの町並みはことごとく破壊され、人々は国を追われ長い避難生活を強いられています。子供たちから笑顔を奪い、安心して遊び、学ぶことすら奪われた状況を絶対に許すわけにはいきません。さらには、プーチンロシア大統領は、核の使用も有りうるような、あってはならない発言をするなど、世界を恐怖にさらしている行為は、断じて許すことはできないものであります。

岸田内閣総理大臣も、8月6日広島平和式典において「被爆地・広島出身の総理大臣として、核兵器による威嚇が行われ、核兵器の使用すらも現実の問題として顕在化している今こそ、広島の地から『核兵器使用の惨禍を繰り返してはならない』と、声を大にして世界の人々に訴える」と述べ「核兵器のない世界へ」という著書も発表し、実現に努めていくと、総理大臣として繰り返し述べています。

もう一度申し上げます。私たちは、次の時代を生き抜いていく、子供たち、孫たち、ひ孫たちの時代に核の脅威を残したまま、引き継ぐことなど許されないのです。

以上の点を踏まえ、「日本政府に核兵器禁止条約の署名及び批准並びに締約国会議へオブザーバーとして参加することを国に求める意見書の提出について」提出された請願26号並びに同趣旨の28号は採択すべきものであり、不採択とする総務常任委員長の報告には、強く反対するものであります。山形県並びに山形県民にとって、日本国民にとって、緊急性を要する請願であり、これを不採択にするなど言語道断と言わざるを得ないことを付して、反対討論と致します。

被爆77周年原水爆禁止山形県平和大会

黙祷

【立憲民主党山形県総支部連合会 挨拶】

被爆七十七周年原水爆禁止山形県平和大会が、日本のアンデルセンと称された童話作家「浜田広介」を育んだ「まほろばの里」高畠町で開催されますことに、心よりの敬意と感謝を申し上げます。 

さて、新型コロナウイルス感染症発症以来、これまでの当たり前の日常が奪われ、社会活動が一変するという、まさに地球的規模のパンデミックに襲われました。現在、我が国におきましては、第七派に入ったと言われ、重症化率は低いとは言われながらも、昨日、過去最高の十九万五千人を超える感染者が確認されました。まさに未だ収束の道筋は見えない状況と言わざるを得ません。

そうした中におきまして、今年二月二十四日、ロシアによるウクライナ侵略戦争が始まって、すでに5ヶ月がたちます。この間、ウクライナの町並みはことごとく破壊され、人々は国を追われ長い避難生活を強いられています。子供たちから笑顔を奪い、安心して遊び、学ぶことすら奪われた状況を絶対に許すわけにはいきません。さらには、プーチンロシア大統領は、核の使用も有りうるような、あってはならない発言をするなど、世界を恐怖にさらしている行為は、断じて許すことはできないものであり、強く強く断じるものでございます。また、「核共有」や「敵基地攻撃能力保持」「自衛隊の9条明記」などなど、こうした情勢に便乗するかのような政治家のあるまじき発言が相次ぐことへ、不快感を覚えるのは、私だけなのでしょうか。

さて、先に行われました参議院議員選挙におきましては、私たち立憲民主党に対しまして、大きなお力を賜りましたこと、改めまして深く感謝申し上げますと共に、議席を減らす結果になりましたこと、心よりお詫び申し上げなければなりません。この度の結果を真摯に受け止め、平和を希求する政党として、一から再スタートする覚悟でございます。皆様方の変わらぬご指導ご鞭撻をお願い申し上げます。

一方、選挙戦の中で、本来争点にならなければいけない「平和」に関する問題は、自公政権と補完勢力があいまいにしたまま、平和をないがしろにする勢力が三分の二を占める結果となったことは、我が国憲法が世界に誇る「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」の原則を脅かす、制定以降、最も危うい政治状況と言わざるを得ません。

しかしながら、私たちはこうした状況を跳ね返し、平和憲法を守り抜き、世界で唯一の被爆国として、我が国と同じ惨状を経験する国が未来永劫あってはならないことを、求め続けなければなりません。「ノーモア広島」「ノーモア長崎」そして「ノーモア福島」を叫び続け、子どもたち、孫たち、さらにはひ孫たちの時代に、核のない今よりもっと平和な地球を引継がなければなりません。

結びに、「被爆七十七周年原水爆禁止山形県平和大会」に結集されました仲間の皆様方のご活躍によりまして、一日も早く核のない平和な地球になりますことを、心より強くご祈念申し上げまして、立憲民主党山形県総支部連合会を代表致しましてのご挨拶とさせて頂きます。

 令和四年七月二十三日 立憲民主党山形県総支部連合会 石黒 覚  

2022年6月定例会◆代表質問◆6月7日

 県政クラブの石黒覚でございます。先日、新型コロナウイルス感染症発症以来、初めて「やまぎん県民ホール」にて、佐渡(さど)(ゆたか)指揮、反田(そりた)(きょう)(へい)ピアノ、新日本フィルハーモニー交響楽団50周年記念演奏会を聴くことができました。2時間、感動に震えながら、人が生きていく上でなくてはならないものの一つに、心震える芸術や文化、スポーツ、大好きな趣味や学びが欠かせないことを、改めて深く考えたところでございます。コロナ禍で疲弊しきった生活から、普通の生活ができるようになり、人の心の栄養が自由に取れる日が、一日も早く来るように人類の英知を結集しなければならないと、強く思った次第でございます。

 戦争をすることなど、許されないし、そんなことをしている時ではないのです。世界中の子供たちが、笑顔で歌い、グランドを走り、学び、家族と平和に暮らすことができる社会を、そして山形県を創るために、大いなる英知の結集で、本県の未来を切り拓いていかなければならないことを、肝に銘じながら、質問に入りたいと存じます。

【質 問】

1 沖縄復帰50周年と本県戦没者慰霊等について 

 沖縄が返還されたのは、1972年、昭和47年5月15日、太平洋戦争終戦から27年目のことでございました。今年は沖縄復帰から50年目の年となります。

 太平洋戦争最後の激戦地沖縄は、戦争など二度とあってはならないことを後世に伝えるには、あまりにも悲惨で、あまりにも多くの尊い命を犠牲にしたものと、改めまして全ての犠牲者に衷心より深く哀悼の誠を、そして戦後もその惨状を記憶に抱えながら生き続けてこられた方々に、ご心中をお察し申し上げる次第でございます。

 さて、先般、地元紙の特集記事でも触れられておりましたが、沖縄県と本県とは、実に深くかかわってきたご縁がある訳でございます。明治14年に第2代沖縄県令につかれた、米沢藩最後の藩主上杉(もち)(のり)県令は、志ある若者を東京に送り県費で学ばせる制度を創設し、この教育施策は後の沖縄に大きな実を結び現在に至ると言われています。こうした(もち)(のり)の施策を背景に、ほぼ私と同年代の米沢市の金城(きんじょう)利彦(としひこ)医師は、仙台で学び沖縄に貢献された後、縁あって本県の病院で診療にあたり、公立置賜総合病院副院長も務めた方でございます。

 一方、米沢市出身の我が国を代表する建築家、伊東忠太東京帝国大学教授は、大正12年に決定した首里城取壊しの危機を回避するのに尽力されたと伝えられております。この時の伊東忠太氏と共同研究者であった鎌倉芳太郎氏の調査・研究の功績が、太平洋戦争で焼失した首里城の再建に繋がり、記憶に新しい2019年10月31日に再び焼失した首里城が再建される原動力となっていることは間違いないところでございます。

 また、米沢出身の織物研究家、田中(たなか)(とし)()氏は昭和14年から沖縄織物の調査・研究を始め、氏が残された研究成果は、戦争を経てもなお沖縄織物が見事に現在に伝えられる原点になったと言われています。

 さらには、7年前、我が国で安全保障のあり方について大きく揺れていた時に、自民党の若手国会議員が「マスコミを懲らしめるためには広告収入がなくなることが一番だ」と発言したことに対して、報道・言論の自由に対する冒涜だとして、2015年6月28日付朝刊1面に「言論(げんろん)封殺(ふうさつ)の暴挙 許すな」の見出しで、山形新聞寒河江(さがえ)浩二(こうじ)主筆・社長による緊急声明が掲載されました。琉球新報は、上杉(もち)(のり)県令による県費留学制度の1回生で、のちに社長になる太田(おおた)朝敷(ちょうふ)が創刊に関わり現在に至る新聞社でありますが、2015年当時、琉球新報会長だった富田(とみた)(じゅん)(いち)氏は「沖縄の言論は山形に救われた」と、日本新聞協会役員退任の挨拶で山形新聞の緊急声明に触れられて、大いに勇気づけられたと謝意を示されたと聞いております。

 戦後77年、沖縄復帰から50年経過した今もなお沖縄には戦争の影響が色濃く残っています。昨今、沖縄の地で遺骨が混じる土砂を採取し、埋め立て等に使用することに反対する請願等が全国的に議論され、本県議会でも継続審査になっている状況もございます。

 先に述べました本県と沖縄との深いつながりの中で、さらに言及すれば、太平洋戦争末期、山形市の霞城公園を拠点としていた陸軍歩兵第32連隊・別名「霞城連隊」は、3千名のうち9割が戦死しておりますが、連隊の最後の地は、沖縄県糸満市でありました。その地には、1965年に本県が建立した「山形の塔」並びに残った戦友たちが建立した「鎮魂の碑」があり、私も5年半前に、手を合わせる機会がありました。世界平和を願う取組みでもある本県の戦没者慰霊については、戦争の惨状を繰り返すロシアの侵略行為を許してはならない今だからこそ、その歴史の重みとともに次の世代に受け継いでいくことが重要だと考えますが、吉村知事のご所見をお伺いいたしたいと存じます。

【知事答弁】

 先の大戦では、国内外で多くの方が亡くなられました。本県出身者につきましても、3万8千余名もの方々が尊い命を失い、このうち、国内で唯一地上戦が繰り広げられた沖縄では約800名の方々が亡くなられております。

 本県では、犠牲となられた戦没者の方々を追悼するとともに、戦争の悲惨さや平和の大切さを後世に継承するため、例年、春には山形県戦没者墓地「千歳山霊苑」拝礼式を、そして、秋には山形県戦没者追悼式、また、御質問でも触れられております沖縄慰霊碑「山形の塔」での慰霊祭を挙行しているところであります。

 「山形の塔」は、沖縄及び海外諸地域で戦没された本県ゆかりの方々のご冥福をお祈りするとともに、自らの命に代えて祖国日本の平和の礎となられた戦没者の方々を永く後世に語り継ぐために建立されたものであります。沖縄の本土復帰以降、コロナ禍により昨年と一昨年は中止となりましたが、建立地であります糸満市など現地の皆様の多大なる御協力のもと、毎年慰霊祭を開催してまいりました。戦後70年にあたる平成27年には、私自身も現地に赴きまして、花を手向けて戦没者の方々を追悼するとともに、平和への思いを次の世代に継承することをお誓い申し上げてまいりました。

 終戦から既に77年の時が過ぎようとしておりますが、たとえどれほど年月が経とうとも、我が国に計り知れない犠牲を生んだ悲惨な戦争の歴史があったこと、そして、今日の平和と繁栄が戦没者の方々の尊い犠牲の上に築かれていることを、決して忘れてはならないと考えております。

 現在、既に3か月以上に及ぶロシアのウクライナ侵攻により、未来ある子供達を含め多くの尊い命が奪われております。愛する故郷を追われる人々の姿が連日のように報じられており、私も心を痛めているところであります。我が国では、先の大戦を身を以って体験された方々が次第に少なくなり、記憶の風化も懸念されるところですが、このような時代だからこそ、改めて私たちすべての県民が戦没者の方々の思いに心を寄せ、平和の尊さを深く認識することが大切だと考えております。

 戦争の無い平和な世界を希求する声がかつてなく高まっている中で、これからの山形県、そして日本の未来を担う若い世代に平和への思いを継承していくため、将来にわたって戦没者慰霊の取組みを継続してまいりますとともに、県民の皆様がいつまでも平和で安心して暮らすことができる社会を守り続けていくために、これからも最善を尽くしてまいります。

【質 問】

2 新型コロナウイルス感染症対策のこれまでの取組みと今後の方向について

 次に、新型コロナウイルス感染症のこれまでの取組みと今後の方向についてお伺いいたしたいと存じます。

 約2年半前の2019年12月に中国武漢で発症したとされる新型コロナウイルス感染症は、人類と様々なウイルスによる感染症との長い闘いの歴史を振り返っても、極めて深刻な事態を引き起こし、世界中の国々で多くの犠牲者を数える状況でございます。6月6日現在、世界229ヵ国で発生し、感染者数は5億3千万人を超え、死亡者数は6百30万人を越えました。我が国におきましては、感染者数が8百94万人を超え、死亡者数は3万人を超えています。そして、本県におきましては、感染者数が28,908人となり、死亡者数が94人となっています。

 こうした状況の中で、本県のこれまでの新型コロナウイルス感染症に対する対応は、私は総じて評価できるものであったと認識いたしております。個別の対応は申し上げませんが、吉村知事の県民の皆様方に対する発信力は、不安な日常へ少しでも安心感を届けてきたものと存じます。また、医療従事者を中心とする方々への感謝や支援体制の構築、療養施設確保への迅速な対応、さらには経済支援対策の機敏な対応など、日常生活や社会情勢の不安を少しでも取り除くことに最善策を講じてきたものと思います。

 今定例会には、総額53億6千万円の補正予算のうち、コロナ禍における原油価格・物価高騰等への対応として、45億46百万円が提案されました。また、ウィズコロナでのチャーター便受入支援など、ウィズコロナ・ポストコロナへの対応として2億52百万円、医療機関等での資機材整備に対する助成など、新型コロナウイルス感染症への対応として5億32百万円が計上されています。

国におきましては、いよいよこの6月から海外からの旅行客の受け入れなど、ウィズコロナの政策展開に大きく舵を切る方向にあるようでございます。

 吉村知事におかれましては、直近の記者会見等において、基本的感染防止対策をしっかり進めながら、経済回復へ向けた施策展開が急務との考えをお示しされたようでございます。

今回の補正予算案は、そうした考え方の上に立って提案されたものと受け止めておりますが、経済回復を目指す上でも、感染症対策をどうしていくかは非常に重要だと考えます。改めまして吉村知事の新型コロナウイルス感染症対策のこれまでの経過と今後の方向について、お伺いを申し上げたいと存じます。

【知事答弁】

県内で新型コロナウイルス感染症が初めて確認されてから2年2か月が過ぎました。この間、私は、県内の感染状況を見極め、県内経済の動向も踏まえながら、時機を逃さず、効果的に感染防止対策と経済対策を講じてきたところです。

特に感染が急拡大した局面では、県境を越える移動の自粛や営業時間短縮など、県民や事業者の皆様の日常生活や経済活動に一定の制約をお願いすることで、感染拡大の抑制に努めてまいりました。

県内第1波では県境検温、第2波では「県民泊まって元気キャンペーン」などの一時停止、従来株とアルファ株が拡大した第3波・第4波では、県独自の緊急事態宣言や市町村との合同要請を発出するとともに、デルタ株が拡大した第5波では、感染拡大防止特別集中期間を設定し、短期集中の感染防止対策を実施するなどの取組みを行ってまいりました。

また、オミクロン株が急拡大した第6波では、県内初となるまん延防止等重点措置を実施するとともに、措置終了後も、リバウンド防止特別対策やクラスター抑制重点対策に取り組んだところです。

このような取組みの結果、本県では、これまで、医療崩壊などの最悪の事態を招くことなく、全国的にも低い水準で感染拡大を抑制することができております。これもひとえに、県民の皆様や事業者の皆様の御協力、医療従事者の皆様の御尽力のおかげであり、改めて御礼を申し上げます。

今後の取組みの方向につきましては、現在の主流であるオミクロン株は、デルタ株に比べ感染性・伝播性は強いものの、入院・重症化リスクは低いとの科学的知見が得られております。県内でも同様の傾向であり、多い時には1日に100名から200名台、最近では二桁台の感染者が確認される一方で、病床使用率は低い水準で推移しており、直ちに医療提供体制がひっ迫するおそれは少ないものと捉えております。

このため、私は、クラスター抑制重点対策を終了した3月下旬から当面の間を、感染再拡大を最大限に警戒しつつ、可能な限り日常生活を取り戻す期間として位置づけております。今後も引き続き、しっかりと感染防止対策を講じながら、県内経済の早期回復に努めてまいりたいと考えております。

感染防止対策が経済対策の大前提となりますので、市町村や関係機関と連携し、対策の要となるワクチン接種の推進や、無料PCR等検査などによる陽性者の早期発見、基本的な感染防止対策や業種別ガイドライン遵守の徹底の呼びかけなど、第6波の収束に向けた取組みをしっかりと進めてまいります。

【質問】

3 コロナ禍における生活困窮者への支援について

 次に、コロナ禍における生活困窮者への支援について、お伺いいたしたいと存じます。

 新型コロナウイルス感染症が本県で初めて確認されたのは、2020年3月31日でございました。2年2ヵ月ほど経過する中で、後遺症に悩む方々の報道もございますが、コロナ禍における県民の方々の生活状況、特に、生活に困窮されている方々の現状をどのように把握され、どのような支援が行われておられるのか、改めましてお伺いをいたしておきたいと存じます。

 私の所にも、時々、苦しい生活を訴えるメールなどが届いてまいります。コロナに起因するデータについては、中々集計が難しいものだと思いますが、例えば、私の住んでいる酒田市の状況を、社会福祉協議会にお尋ねをいたしましたところ「生活自立支援センターさかた」における新規相談者数実績の状況が、平成30年度208件、令和元年度218件、令和2年度490件、令和3年度249件、となっております。単純に判断できないものと思いますが、明らかに新型コロナが発症した令和2年度は相談が倍増している状況がございます。また、生活福祉資金緊急小口資金申請状況(特例含む)をみますと、平成30年度15件、令和元年度22件、令和2年度249件となっております。こうした状況の中、令和3年度から「新型コロナウイルス感染症生活困窮者自立支援金」の制度が始まり、酒田市では令和3年度中に、延べ383件の相談等に対応しております。

 また、4月下旬、感染後の後遺症に悩まれている方々の実態調査を始められたとの報道がございました。取組みの姿勢を大いに評価いたすところですが、生活困窮者の方々の中にも、後遺症により職場に復帰できないなどの状況があるのではないでしょうか。コロナ禍が長期化する中、生活に困窮する方々の状況をどのように捉え、支援をされておられるのか、さらに今後どのような方向で支援していかなければならないとお考えか、健康福祉部長にお伺いいたします。

【健康福祉部長答弁】

 新型コロナの発生以降、外出自粛や経済活動の停滞により、飲食業や宿泊・観光事業者をはじめ、幅広い業種の事業者が売上の減少等深刻な影響を受けたこともあり、失業や休業を余儀なくされたり、業務の縮小等で収入減となった方が増加しました。

 県では、市町村や社会福祉協議会等と連携し、各地域における自立相談支援機関での相談等を通して、生活に困窮されている方の支援に努めてまいりました。県内の自立相談支援機関における新規相談件数は、令和2年度が約5,700件、令和3年度は約3,400件で、コロナ禍前である令和元年度の約2,400件と比較していずれも増加しており、県民生活へのコロナ禍の影響が大きいものであることがうかがえます。

 また、生活に困窮されている方を支援するため、市町村等と連携し、生活福祉資金の特例貸付や新型コロナウイルス感染症生活困窮者自立支援金による支援等の取組みに加え、県独自の施策として、特例貸付を受けた世帯への県産米の提供等も実施してまいりました。なお、特例貸付は、令和4年4月末までの累計で約8,500件、約34億円の貸付を決定しており、自立支援金につきましては、3月末までに約6,500万円が支給済みとなっております。

 また、新型コロナの影響に加え、今般、物価高騰等に対応した政府の総合緊急対策において生活困窮者支援策が示されたことを踏まえ、6月補正予算において、自立支援金の申請期限延長への対応に加え、独自に県産米の提供やフードバンク活動を支援するための経費を計上したところです。

 県としましては、今後も市町村等と連携し、生活困窮者に対する緊急的な支援を継続するほか、今後償還時期を迎える特例貸付に関する猶予の取扱いを政府に対し提案するなど、実状に応じた支援に努めてまいります。

【質問】


4 本県エネルギー政策の進捗状況と目標達成に向けた取組みについて

 次に、本県エネルギー政策の進捗状況と目標達成に向けた取組みについて、お伺いいたしたいと存じます。

 吉村知事は2020年8月6日に開催されました全国知事会において「ゼロカーボンやまがた2050(ニーゼロゴーゼロ)」宣言をされております。

 政府においては、2020年10月に「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする脱炭素社会を目指す」ことを宣言するとともに、2021年4月には、  2030年度の新たな温室効果ガス排出削減目標として 2013年度比で46%削減する方針を示し、さらに50%の高みに向けて挑戦を続けていくという目標を掲げられました。

 また、2021年10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画において、再生可能エネルギーに関し、「主力電源として最優先の原則の下で最大限の導入に取り組む」と明記されております。今般のロシアによるウクライナ侵略のような事態も踏まえますと、エネルギー安全保障の確保の観点からも再生可能エネルギーの活用は極めて重要であることは、申し上げるまでもないところでございます。

 本県では、東日本大震災による福島第一原発事故を踏まえ吉村美栄子知事が、当時滋賀県知事でございました嘉田由紀子知事とともに「卒原発社会」の実現を目指すこととし、平成24年に「山形県エネルギー戦略」を策定し、2030年度までの再生可能エネルギーの開発目標を約100万kWと掲げ、これまで順調に推移していると認識いたしております。

 一方で、電源や熱源の種別ごとの進捗には、ばらつきが見られることも事実ではないかと考えます。

 特に庄内地域では、洋上風力発電導入の検討が進められており、昨年9月には遊佐町沖が「有望な区域」に選定され、今年1月には政府が主催する法定協議会が設置されたところでございます。再生可能エネルギーの賦存量をみると、地域によるばらつきもさることながら、太陽光、風力、地熱などの種別間のばらつきもあり、一律に開発・導入を進めるのは難しい面もあるため、各地域のポテンシャルを活かしながら取組みを進めていく必要があるものと思われます。

 本県エネルギー戦略に掲げる開発目標について、最新の進捗状況と、目標達成に向けた取組みについて、環境エネルギー部長にお伺いいたしたいと存じます。

【環境エネルギー部長答弁】

 本県では東日本大震災を契機として、平成24年3月に全国に先駆け「山形県エネルギー戦略」を策定し、20年後の令和12年度までに本県の目指すべき姿の一つに「再生可能エネルギーの供給基地化」を掲げ、再エネ資源を活用した新たな電源の開発を積極的に進めてまいりました。この結果、令和12年度末までの再エネの開発目標101.5万kWに対する令和2年度末の導入実績は、58万kW、目標の57.1%となり、また、令和3年度末については現在公表に向けた精査を行っておりますけれども、目標の約65%程度まで進捗する見込みとなっており、全体としては概ね順調に推移しているものと認識しております。

 県内の豊富な森林資源を活用したバイオマス発電や庄内地域の良好な風況を活用した風力発電など、これまで地域ごとの特性を活かして導入を進めてきておりますが、エネルギー種別毎に見ると、太陽光やバイオマス発電が順調である一方、風力や地熱発電は低調で、種別毎のバランスの取れた導入促進が課題となっております。

 このため、開発目標達成に向けては、今後、大規模な導入が期待できる洋上風力発電をはじめとした大規模事業の県内展開に加え、既存の温泉資源に配慮した技術を活用する地熱発電、陸上風力や中小水力発電など、県内各地に豊かに賦存する多様な再生エネルギーを最大限に活かした取組みを更に促進してまいります。

 また、最近の資源・エネルギー価格高騰の影響など、エネルギーを取り巻く環境が大きく変化する中で再エネへの期待がより一層高まっております。このため、こうした情勢の変化や開発目標の進捗状況、更には、カーボンニュートラル時代を見据え新たな資源として位置付けられている水素の社会実装や、蓄電池やEV等の分散型エネルギー資源の有効活用などを念頭に、来年度予定している「後期エネルギー政策推進プログラム」の見直しに適切に反映させて、再エネ導入拡大に向けてしっかりと取組みを進めてまいります。

【質問】


5 持続可能な地域医療体制を確保するための地域医療構想の推進について

 次に、持続可能な地域医療体制を確保するための地域医療構想の推進についてお伺いいたしたいと存じます。

 地域医療構想については、医療機関を中心に新型コロナの感染症への対応に全力を注いでいるため、実質的な議論が停滞している状況となっていましたが、令和4年3月に厚生労働省からコロナ禍においても構想の実現に向けた取組みを進めるよう通知されたところでございます。

 同時に、総務省からも公立病院経営強化の推進について通知され、「持続可能な地域医療提供体制を確保するための公立病院経営強化ガイドライン」が示されました。

 当ガイドラインを解説している記事によりますと、公立病院経営強化の必要性について、最大のポイントは、従前のガイドラインが「赤字解消」を主目的とする消極的な内容であったのに対し、「経営力強化」「機能強化」を目指す積極的な内容であるとされております。これまでも、公立病院は再編・ネットワーク化、経営形態の見直しなどに取り組んできましたが、医師・看護師等の不足、人口減少・少子高齢化に伴う医療需要の変化により、依然として、持続可能な経営を確保しきれない病院も多いとされています。また、コロナ対応に公立病院が中核的な役割を果たし、感染症拡大時における公立病院の果たす役割の重要性が強調されているようであります。

 そして、このガイドラインに沿った地方公共団体における公立病院経営強化プランは、令和4年度又は令和5年度中に策定し、期間を策定年度又はその次年度から令和9年度を標準とするとあります。「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者となり、医療需要が大きく変化する2025年問題が深刻に受けとめられ平成26年に「医療介護総合確保推進法」が成立しましたが、その目指すべき2025年まであと3年という現在、我が国における持続可能な地域医療提供体制の確保は、待ったなしの状況でございます。

 「公立病院経営強化プランに求められる内容」は、①役割・機能の最適化と連携の強化 ②医師・看護師等の確保と働き方改革 ③経営形態の見直し ④新興感染症の感染拡大時に備えた平時からの取組み ⑤施設・設備の最適化 ⑥経営の効率化 とあります。

 さらには、「都道府県の役割・責任の強化」では、都道府県が、市町村のプラン策定や公立病院の施設の新設・建替等にあたり、地域医療構想との整合性等について積極的に助言とあり、医療資源が比較的充実した都道府県病院等が、中小規模の公立病院等との連携・支援を強化していくことが重要としております。

 県は、置賜広域病院企業団や地方独立行政法人山形県・酒田市病院機構の構成団体の一員であり、加えて病院等への指導助言を担うという重大な役割を果たしていかなければなりません。同時に、県立病院の「資金不足等解消計画」に基づく経営改善も進めなければなりません。

 こうした状況の中で、「公立病院経営強化プラン」の策定にあたりましては、まず重要になるのは進行中の「第7次山形県保健医療計画」や「山形県地域医療構想」等、県の各種の計画、施策と整合性を図りながら、特に山形県地域医療構想についてこれまでの取組みに対する評価を、まずしっかりすることが重要と考えます。また、県内4地域に設置されている地域医療構想調整会議等においては、現場の実態や声をより一層反映させることが必要であり、日本海総合病院を核とした地域医療連携推進法人日本海ヘルスケアネットの先駆的取組みが、政府や都道府県の医療関係者から注目されていることも参考にしながら、地域医療構想の実現に向けた取組みを進めていく必要があると考えます。今後の地域医療構想の推進に向けた考え方について、健康福祉部長にお伺いいたしたいと存じます。

【健康福祉部長答弁】

 県では4つの二次医療圏ごとに地域医療構想調整会議を設置し、関係者の皆様と協議しながら、地域医療構想に示した目指すべき医療提供体制の実現に向けた取組みを進めております。

 これにより、病床機能ごとの病床数につきましては、構想策定時である平成28年9月と令和3年12月時点を比較すると、回復期病床への転換等により急性期病床は829床減少した一方で、回復期は603床増加するなど、一定の成果が上がっているものと認識しております。

 一方、今般、総務省から新たに示された公立病院経営強化ガイドラインにおいては、病院同士の再編・統合を中心とする従来の考え方から、病院間の役割分担や医師派遣等による連携強化を重視する考え方への見直しも示されているところです。

 これらの動きを踏まえ、今後は、各地域の基幹病院に急性期機能を集約し、それ以外の病院等は回復期機能を中心に担うなど、その役割分担を明確化するとともに、基幹病院からの医師や看護師等の派遣など、日本海ヘルスケアネットの取組事例のような、医療資源を有効活用し地域全体で連携する医療提供体制の構築について、地域医療構想調整会議等で協議していく必要があると考えております。加えて、この医療提供体制を実現するためには、今後、病院を設置する地方公共団体が策定する「公立病院経営強化プラン」と地域医療構想との整合性の確保が大変重要となります。県としましては、各病院の経営強化プランが、地域で果たすべき役割や機能を適切に評価・認識し、地域医療構想に沿ったものとなっているかといった観点から、地域医療構想調整会議等において積極的に助言を行いながら、協議を進めてまいりたいと考えております。

 持続可能な医療提供体制の確保に向けて、今後も地域医療構想の進捗状況や課題などに関する情報共有に努め、各地域での積極的な議論を促しながら、地域と一体となって取り組んでまいります。

【質問】

6 水道事業について

 (1) 「水道広域化推進プラン」策定の進捗状況と見通しについて

次に、水道事業についてお伺いいたしたいと存じます。

 まず1点目は、水道広域化推進プラン策定の進捗状況と見通しについてでございます。

 私も、これまで何度となくお尋ねを申し上げて参りましたが、中々難しい課題が多くあり、大変ご苦労をされているものと推察いたします。

 本県では、2018年3月に策定されました『山形県水道ビジョン』におきまして、「人口減少等の課題に対応しながら、県民への安全で安心な水を安定的に届け続ける山形の水道」と示されているように、命の源であります「水」を供給する事業者として、県民皆様方からご負担を頂く「水道料金」をできるだけ低価格でお届けすることも極めて重要な使命であると考えます。

 2018年には、この年の通常国会で「人口減少に伴う水の需要の減少、水道施設の老朽化、深刻化する人材不足等の直面する課題に対応し、水道の基盤の強化を図るため、責務の明確化として、都道府県は水道事業者又は水道用水供給事業者の間の広域的な連携を推進するように努める」とした水道法の改正がなされました。

 総務省が公表しました、令和3年11月30日時点での各都道府県における「水道広域化推進プラン」の策定取組状況をまとめた資料によりますと、既に策定済みの5団体を除く42団体のうち、進捗を示す3つの指標、即ち、「A現状把握」、「B将来見通し」、「C広域化シミュレーション」の全てが完了しているのは3県だけとなっており、本県はそのうちの1県になっております。関係各部署のご努力に敬意を申し上げる次第でございます。

 「水道広域化推進プラン」については、平成31年1月に、総務省並びに厚生労働省から、当時は平成34年度末まで、元号が変わりましたので本年度、令和4年度中に策定するようにとの通知がなされたと記憶いたしております。まさに佳境に入っているものと存じます。「水道広域化推進プラン」には水平・垂直統合等を含む、ブロックごとの工程並びに時期などについても記載されていくものと思いますが、現在の検討状況や進捗について、防災くらし安心部長にお伺いいたしたいと存じます。

【防災くらし安心部長答弁】

 本県の水道事業は、経営基盤が脆弱な小規模事業者が多いことに加え、今後の人口や水需要の減少等により水道事業の経営が一段と厳しくなることが予想されております。

 こうした課題は全国でも共通であり、政府では、経営統合や施設の共同設置、事務の広域的処理等の多様な広域化を推進するため、都道府県を「広域連携の推進役」と位置づけ、令和4年度までに「水道広域化推進プラン」の策定を要請しているところであります。

 「水道広域化推進プラン」には、①水道事業者ごとの経営環境と経営状況に係る現状と将来の見通し、②広域化のパターンごとに将来見通しのシミュレーションと広域化の効果、③今後の広域化に係る推進方針等を記載することとなっており、本県では、県、市町村等の水道事業者、並びに水道用水供給事業者である県企業局で構成する「山形県水道事業広域連携検討会」を県内4地域で立ち上げ、検討を行っております。

 検討会では、経営環境等の将来の見通しとして、急激な人口減少や水需要の減少に伴う料金収入の減少、水道施設の更新費用の増大、水道職員数の減少等を推計・想定し、課題解決のため県内4地域ごとに、広域連携シミュレーションを実施しています。

 その結果、施設の共同利用、資機材の共同購入、広域化による一体的な経営など、それぞれの地域での有効な広域連携の姿や課題が見えてきており、現在、こうした結果についてさらに精緻化を図っているところであります。また、費用削減効果だけでなく、費用に現れない安全性、災害対応、人材育成と技術継承等、多角的な観点から比較検証を行っているところであります。

 県といたしましては、県内4地域の検討会でこうした議論をしっかりと行い、今年度中に「水道広域化推進プラン」を策定したいと考えております。

 (2) 酒田工業用水道の塩水遡上対策の現状と今後の対応について企業管理者

 2点目は、酒田工業用水道の塩水遡上対策の現状と今後の対応について、お伺いいたしたいと存じます。

 さる4月中旬に、酒田にあります企業の前社長様とお会いして、様々なお話をお聞きする機会がございました。

 1985年に設立された当企業は、現在2000名を超える社員を有する、本県では数少ない大企業の一つでございます。

 酒田工業用水道の大口受水企業でもあり、酒田工業用水道を利用いただく30社の企業のうち、半導体を扱う当企業様と苛性ソーダをはじめとする基礎科学製品を製造する企業様の2社で概ね過半の利用をいただいていると聞いております。この2社においては、製品を製造する際に使用する工業用水道に塩分が混じることがあると、生産に影響が生ずるともお聞きしております。しかしながら、近年の気候変動や河川の土砂堆積などの影響で、酒田工業用水道の最上川取水口において、2018年、塩水が遡上し、工業用水の塩分濃度が上昇したことにより、大口受水企業では操業を停止した例もみられたところであります。先ほど申し上げました企業の前社長様との面談では、塩水遡上の緊急対応策の一つとして、上水道でバックアップすることも可能ではないかとのご指摘を頂きました。

 上水道を利用するとなれば、地元の水道事業者である酒田市にも対応が求められてまいります。塩水遡上に伴う企業活動への影響を最小化していくためには、ご指摘の対応策のように多角的な視点から、関係する様々な機関と連携した対応が重要になるものと考えます。

 そこで、県企業局は、これまで酒田工業用水道における塩水遡上に対する対策としてどのように対応してこられたのか、そして今後どのように対策を講じていかれようとしているのか、企業管理者にお伺いいたしたいと存じます。

【企業管理者答弁】

 酒田工業用水道は、昭和37年に市内大浜地区で給水を開始し、現在は酒田市と遊佐町の29事業所に用水を供給しております。

 この工業用水の原水は最上川の河口から8.3キロ上流の地点で取水していますが、これまで平成27年と平成30年の2回、取水口までの塩水遡上が確認されております。気候変動に伴う河川流量の減少や河川環境の変化などが原因と考えられますが、塩水が工業用水に入り込むと、電気の通し易さを示す導電率が急激に上昇し、企業によっては操業に支障が生じます。

 このため、河川流量が減少する時期には、取水口から下流域にかけて塩水遡上状況のモニタリングを1日2回実施し、受水企業に適時情報提供するとともに、取水口までの塩水遡上が予想される場合は、応急対策として取水口の800m上流に取水ポンプを仮設し、受水企業に影響が及ばないよう可能な限りの対応を講じております。

 しかしながら、毎年のように塩水遡上が発生しており、年によっては仮設の取水地点まで遡上することもあり、恒久的な対策が必要になっております。これまで「灌漑排水を利用する案」や「取水口を上流に移設する案」などを検討し、こうした対策の内容について、受水企業に対し定期的なユーザー会議で説明し、意見の聴取などに努めております。しかし、使途や使用水量の違いなどから、受水企業の水質に対するニーズが一様でないことや、多額の工事費に伴う費用負担の考え方も様々なうえ、水利権の調整が現状では困難なことから、いずれも実施が難しい状況にあります。

 工業用水の安定供給は立地環境に係わる重要なインフラ条件であるとの認識のもと、当面はモニタリングの精度を上げながら、企業活動に影響を及ぼさないよう応急対策に万全を期してまいります。併せて、水利権の調整や河川環境の改善に向けて河川管理者との協議を引き続き進めるとともに、受水企業の理解が得られるよう、有効性と経済性が両立する新たな恒久対策についても検討を進めてまいります。

【質問】

7 誘致企業に対するフォローアップについて

次に、誘致企業に対するフォローアップについてお伺いいたしたいと存じます。

地元庄内の誘致企業の経営者と意見交換した際に、企業として抱える課題についてもお聞きすることができました。その中で、いくつか気になる点がございましたので、お伺いいたすものでございます。

 大企業、中小企業問わず、世界経済状況の変化、そしてコロナがもたらした変化が、企業経営に大きな影響を及ぼしたことは言うまでもありませんが、その経営者の企業が誘致を働きかけられた当時は、好条件で行政からの誘致があったそうです。しかし、操業以来の経過・社会情勢の変化の中で、様々な課題が発生したり、近年では人口減少も相まって「人」が集まらないという課題があるそうです。100人規模で雇用したい計画があるにも関わらず、庄内地域において雇用確保が極めて厳しい状況だということでございました。他県においては、企業が行政の支援を受けて事業や雇用を拡大するなど積極的な投資を進めている例があるようでございます。都道府県や市町村の企業支援にどのような違いがあるのか、私には中々実態を把握することは、困難なところであります。

山形県においても、例えば、大企業、中小企業に関わらず、的確な企業振興策を進めるためには、県内企業の状況調査はもちろん行われていると認識いたしますし、様々な企業との協議の場や意見交換の場などは数えきれないほどあるものと思いますが、企業が抱える課題や必要な支援等は様々であり、時の経済情勢によっても変わってくるものと考えます。県では、40年、50年前の高度成長期に誘致された企業が立地後、どのような課題を抱えているかなど、細やかな把握はどのような形で行われているのでしょうか。   

近年は、新規起業や創業等のスタート支援に重点が置かれているように感じますが、これまでに誘致された企業の状況把握や支援等はどのようになっておられるのか、今後の雇用確保策も含め、産業労働部長にお伺いいたしておきたいと存じます。

【産業労働部長答弁】

 誘致企業は、県が本県産業の発展・成長を目指すうえで是非とも必要な企業と判断し、様々な支援を提案しながら、幾度となく交渉した結果、山形県を信頼して進出を決断した企業であり、その信頼・決断に対しては、県としてもしっかりと応えていく必要があると考えております。

 誘致企業が本県に進出し、事業活動を展開していく中では、事業の拡大、雇用の確保といった様々な課題に関連して、県に対する提案・要望等も生じてまいります。このような誘致企業の実情に対応するため、県と誘致企業等で組織する 「山形県新企業懇話会」を設置しており、これまでも緊密に意見交換を行いながら、誘致企業の課題や要望等に最大限応えられるよう、関係機関とも連携・協力しながら親身に対応しているところです。加えて、企業誘致の担当職員が誘致企業に直接出向いて、随時、要望や意見等を伺っているほか、県外事務所と連携して、誘致企業の本社を訪問して意見交換を行うなど、きめ細かなフォローアップを行っております。

 誘致企業に対する支援につきましては、県の様々な産業振興に係る支援制度を活用いただくとともに、増設等の新たな投資を行う場合には、一定の要件のもと企業立地促進補助金の対象としております。また、雇用の確保についても、県が行う雇用確保対策に加え、新企業懇話会の事業として、県内大学等との交流会や高等学校の就職担当者を対象にした企業見学会を開催しており、今後とも雇用確保が図られるよう企業の意見や要望等もお聞きしながら、必要な事業を行ってまいります。

 企業誘致の基本は、相手企業との顔の見える関係づくりであります。誘致後も互いに顔の見える良好な関係をしっかりと築き、本県への進出を決断して本当に良かったと思っていただけるよう、誘致企業と山形県の相互の発展に向けて全力で取り組んでまいります。

【質問】

8 建設資材価格の高騰による公共事業等への影響と円滑な執行に向けた対応について

最後に、ウクライナ情勢を巡るロシアへの経済制裁などにより原油やガスといったエネルギー価格の高騰だけでなく、食品全般や飼料、建設資材など業界を問わず多種多様な分野で影響が広がっています。このような影響が広がることにより、コロナ禍からの経済社会活動の回復の足取りが大きく阻害されかねない中で、政府においても「コロナ禍における『原油価格・物価高騰等総合緊急対策』」を決定するなど、コロナ禍からの経済社会活動の回復を確かなものとするべく、今後は、実行の段階に移っていくものと思われます。

一方で、建設資材価格の高騰により、本県公共工事への影響が大いにあるのではないかと懸念しております。具体的には、道路や橋梁の整備・老朽化対策・予防保全工事など様々な社会資本の整備、機能維持に関する工事が、今回の価格の高騰と新型コロナウイルス感染拡大の影響に伴う物流の停滞により、事業の進捗、効果の発現にも多大な影響を及ぼす、あるいは、既に影響を及ぼしているのではないかという懸念でございます。

社会資本の整備は、我が県の発展になくてはならないものであり、老朽化対策などの機能維持も、県民の安全安心な暮らしに欠かせないものであります。今回の建設資材の価格高騰は、建設業界や公共事業にどのような影響をもたらしているのか、また、現在予定している公共事業を円滑に執行していくために、どのような対応策を講じているのか、県土整備部長にお伺いいたしまして代表質問とさせて頂きます。ありがとうございました。

【県土整備部長答弁】

 建設資材価格については、今年4月の資材価格を昨年同月と比較しますと、燃油や鋼材類が概ね2割から3割の上昇となっております。事業者からは、今後の価格動向や一部資材の納期遅延などについて、不安や懸念の声をお聞きしているところです。

 建設資材価格の高騰は、公共工事受注者の持続的な経営に影響を与えるとともに、県民の暮らしや産業を支える社会資本整備の遅れに繋がることも危惧されます。

 このような状況に対応するため、県では、主に三つの観点から建設資材価格高騰への対応策を講じているところであります。

 一つ目は、実勢価格を反映した、きめ細やかな設計単価の設定であります。設計単価は、通常、年4回、その時々の実勢価格を反映した単価に改定しておりますが、今般のような急激な建設資材価格の変動が確認される場合には、臨時の設計単価改定を行い、直近の価格動向を反映してまいります。

 二つ目は、工事受注後の建設資材高騰に対する変更契約の対応です。公共工事の契約約款では、急激な価格変動等に伴い請負代金が不適当となった場合の変更の規定、いわゆるスライド条項を定めております。この条項に基づき、適切に変更契約を行ってまいります。

 今月1日からは、各総合支庁へ県土整備部所管工事に関する「スライド相談窓口」を設置し、受注者からの相談に応じる体制を整えております。これらの取組みを建設関連団体や市町村などに広く周知し、円滑なスライド条項の適用に繋げてまいります。

 三つ目は、柔軟な工期の運用です。工事期間中の資材の納期遅延等、受注者の(せき)によらない工期不足の発生が予測される場合は、適切に工期を延長してまいります。

 これらの取組みにより、安心して受注できる環境を整え、本県の発展を支える社会資本の着実な整備を推進してまいります。

2022年2月定例会◆予算質疑◆3月7日

 

おはようございます。県政クラブの石黒覚でございます。

 まずは私からも、ロシアのウクライナ侵略によって子供たちから笑顔を奪い、未来を奪うことなど絶対にあってはならないことを申し上げたいと思います。更にプーチン大統領は、ウクライナの原子力発電所に砲弾を打つという、あってはならない暴挙にでたことは、人類史上に消すことのできない汚点を残すことになりました。一人一人の声は小さいかも知れませんが、山形県から、日本から、そして平和を希求する世界中の人々と一緒に、プーチン大統領の癲狂と言うしかない蛮行に、最も強い言葉で非難するものでございます。

 そして私たちは、もう一つ忘れてはならない日が近づいてきました。11年前の3月11日です。東日本大震災です。あれから11年が過ぎる現在でも、いまだに全国に3万8千人を超える、本県にも1400人を超える避難者の方々が、いらっしゃることを私たちは決して忘れてはならないと思うところでございます。

 ロシアの砲弾に倒れたウクライナの人々と東日本大震災で犠牲になられた人々のご冥福をお祈り申し上げますと共に、ウクライナに1日も早く平和が戻ること、そして東日本大震災から1日も早い完全な復興がなされますことを強く望むものでございます。

 また今年の大雪は、県内でも多くの犠牲者を出してしまいました。先日テレビのニュースでも報じておりましたが、白鳥が例年になく死んでいます。私の家の隣に飛鳥沼という小さな沼があるのですが、この周辺で、2月中頃から毎日のように死んだ白鳥が見つかり20数羽になっています。ニュースでは酒田地域で60羽ほど見つかり例年の7倍と伝えていました。大雪で田面が現れず、餌をとることができなかったために、餓死したのではないかと庄内総合支庁環境課の方がおっしゃっておりました。豪雨、大雪など近年の気候変動による影響は、こうしたところにも顕著に表れることを痛感した次第です。地球温暖化対策も待ったなしの状況です。令和4年度がコロナ禍が収束し、本県にとりまして穏やかな1年になりますことを願いながら、質問に入らせて頂きたいと思います。

《質問》

1 東北公益文科大学の公立化及び機能強化の進め方について

 東北公益文科大学の公立化と機能強化の進め方について、お伺いいたします。

 公設民営という形で設置されました、東北公益文科大学の公立化と機能強化につきましては、これまで何度となくご質問申し上げて参りましたし、先の12月定例会におきましても、代表質問の中で、具体的な公立化の時期などをご質問申し上げたところでございます。

 昨年12月定例会は、吉村知事ご不在という状況もございましたので、従来の答弁を踏まえながら、庄内地域2市3町の実務者との間で、基本的な考え方や県と2市3町との役割分担などについて、継続的な検討を進めており、一つひとつ、丁寧な議論を積み重ね、基本的な方針を定めることに注力していくとのご答弁をいただいたところでございます。

 今定例会におきましても、代表質問や一般質問で、複数の議員から本大学の公立化について質問がありまして、期せずして、この問題に対する県民の関心の高さが、現れているものと認識を致すところでございます。

 地域の持続的発展に向けまして、本大学への期待は極めて大きいものがあると考えます。また、これまでの関係者のご尽力により築かれた実績を土台にしながら、今後も地域活性化の担い手として、必要不可欠な存在であると確信いたすものでございます。

 これまでの答弁をお聞き致す限り、設置団体のあり方や、財政負担の在り方など、克服すべき課題について、この先の協議が見通せない事情もおありなのでしょうが、一方、こうした課題に対しましては、当面、目先の目標を共有しておく必要もあり、そこから一歩が前に進んで行く場合も多いのではないかと、感じるものでございます。

 そこで、これまで進めてこられた2市3町との実務者の協議を基本に、令和4年度の目途として、どのようなことを目指すのか、吉村美栄子知事のお考えをお伺いいたしたいと存じます。

 誠に蛇足ではございますが、この2月3月にドットJP主催の議員インターンシップで、インターンの学生さん2名をお預かり致しております。今年はたまたまですが、東北公益文科大学の2年生お二方でございまして、私と一緒に酒田から通っております。吉村知事の政策を前に進めるお力で、本県の未来を託す若者たちの学びを持続可能なものとして頂きますよう、ご期待申し上げるものでございます。

《答弁:知事》

 東北公益文科大学は、我が国で唯一の「公益学部」を持つ大学であり、本大学の設立宣言にありますとおり、人や心を本位とする時代に即した有為な人材を、庄内地域を始めとする県内各地域に向けて、多数輩出していただいております。

 また、コロナ後の社会を見据えて、昨年11月に政府が示した、新しい資本主義の実現に向けたビジョンでは、持続可能性や、「人」を重視して、新たな投資や成長につなげることとしておりますことから、本大学の設立宣言で掲げる理念は、このような視点を先取りしたものと考えております。

 本大学の公立化と機能強化に向けた総合的な検討につきましては、これまでお答えしてきたとおり、県と庄内地域2市3町との間で、基本的事項である公立大学法人の設立主体のあり方、法人の組織・運営の手法や財務の仕組みなどを始めとして、幅広く意見交換を行い、認識の共有を進めてまいりました。

 一方で、公立大学は、地方公共団体の高等教育施策に係る中心的役割を担いますことから、地域活性化の推進や若者の地元定着など、本県として解決すべき行政課題に対応した人材育成の機能等については、県内の高等教育機関それぞれの役割・機能を踏まえて考えていく必要があります。

 先週2月28日に開催された本大学の理事会におきまして、新たに、平山副知事が副理事長に選任されましたので、これを一つの契機として、大学とも連絡・調整を図りながら、目指すべき公立大学のあり方につきましても、検討も進むのではないかと考えております。

 また、本大学は、県と当時の庄内地域全14市町村が協力して設立した大学であり、私立大学ならではの柔軟な大学運営とするため、公設民営方式と決定し、今日に至っております。

 私立大学から公立大学に移行した他県の先行事例などを踏まえますと、代表質問や一般質問でもお示ししましたとおり、組織体制や、ランニングコストとして毎年度継続的に生じる財政負担の在り方など、将来にわたって、各自治体の運営に影響を及ぼす事項について、一つひとつ、丁寧に議論を尽くすことが求められております。

 こうした状況を踏まえ、令和4年度は、実務担当者よりも高いレベルでの議論も含め、大学運営に関する専門家の意見も伺いながら、公立化と機能強化に係る方向性をとりまとめてまいります。

《質問》

2 政府の看護職等の処遇改善政策における現場の対応と課題について 

 昨年10月の衆議院議員総選挙の後に再スタートを切られた岸田政権が、その直後の11月19日「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」の中で、「未来社会を切り拓く『新しい資本主義』の起動」と称し、分配戦略~安心と成長を呼ぶ「人」への投資の強化~として、公的部門における分配機能の強化等を掲げ、看護、介護、保育、幼児教育などの現場で働く方々の収入の引き上げを、閣議決定しました。

 また、この2月22日の衆議院本会議において令和3年度補正予算、令和4年度予算等が可決されました。前段申し上げました、新型コロナウイルス感染症への対応と、少子高齢化への対応が重なる最前線において働く方々の収入を引き上げることが盛り込まれたものでございます。

 看護職員等処遇改善では、地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関(※印で説明があり、救急搬送件数200台/年の医療機関及び三次救急を担う医療機関)に勤務する看護職員が対象で、収入を1%程度(月額4千円)引き上げる。

 また介護職員処遇改善では、賃上げ効果が継続される取り組みを行うことを前提として、収入を3%程度(月額9千円)引き上げる。

 また保育士・幼稚園教諭の処遇改善では介護職員同様に、賃上げ効果が継続される取り組みを行うことを前提として、収入を3%程度(月額9千円)引き上げる。

 例えば、看護職員処遇改善では、看護師、准看護師、保健師、助産師が対象となり、医療機関の判断で、看護補助者、理学療法士、作業療法士等コメディカルの賃金改善に充てることが可能となっているようでございます。

一方、県立病院において対象になるのは先ほどふれました救急搬送の台数や三次救急を担う病院という条件から、県立こころの医療センターの看護職員は対象外と伺っております。

 賃金水準を引き上げることに、異論を申し上げるわけにはいかないと認識しながらも、本来、賃金というものは労使交渉によって決められるものと認識致しておりますし、公務員の皆様方には人事院勧告制度がある訳でございます。何よりも同じ職場で働く方々が、今回の政策によって格差を助長し、あるいは同一職種においても賃金に格差が生じないのか、極めて疑問なところでございます。更には、この2月から本年9月までの期間となっていますが、その後は地方自治体や民間事業者に任せることになるのならば、継続が望めるのかはなはだ不透明だと、考えてしまうわけであります。

 申し上げましたように、看護職の処遇改善はとてもありがたいことだと思いますが、対象となる看護師と対象にならない看護師、医療機関の判断で、看護師のみ対象で他のコメディカルは対象外、病院によっては救急搬送条件を満たさない、例えば「県立こころの医療センター」は対象外など等、格差是正が叫ばれる現状において、格差を生み出す危険はないのか。また、処遇改善が実施される看護職においては、月額4000円はボーナスの計算対象になるのか、一般的に考えるならば、月額アップの部分がボーナスの対象外というのも矛盾に思えるわけですが、まずは現時点でどのように具体的な進め方をするのか、課題は何かについて病院事業管理者にお伺いいたします。

《答弁:病院事業管理者》 

 看護職員の処遇改善の具体的な手法としましては、政府の補正予算に盛り込まれた看護職員等処遇改善事業を活用し、この事業の対象となるための所定の要件を満たす中央病院、新庄病院、河北病院の3県立病院に勤務する看護師、助産師、准看護師に対して、2月に遡って月額4,000円の特殊勤務手当を支給するものであります。この単価は、財源となる国庫補助金の「1人当たり月額平均」として示されたものと同額であり、今回はその全額を期末・勤勉手当の算定基礎とはならない月額特殊勤務手当として支給することとしております。

 この度の看護職員等処遇改善事業の課題としては、①県立病院の中でも支給対象外となる病院があること、②薬剤師以外のコメディカル職員を処遇改善の対象に加えることができるよう柔軟な運用が認められている一方で、財源となる国庫補助金の算定基礎にはそのコメディカル職員の人数が含まれないことなど、勤務する病院や職種による職員間の格差感や不公平感を生じさせかねない課題があると認識しております。また、看護職員等処遇改善事業終了後の、10月以降の処遇改善の制度内容が現時点で明確に示されていないことについても大きな課題であると認識しております。

 病院事業局としましては、政府の補助事業(看護職員等処遇改善事業)の趣旨に鑑み、2月から9月までの処遇改善については、中央病院、新庄病院及び河北病院に勤務する看護職員を対象として実施することとしますが、補助事業終了後の10月以降については、今後、診療報酬改定により診療報酬制度の中で措置されることになっておりますので、その議論の状況を注視しながら、どのように処遇改善を実施すべきか改めて検討してまいりたいと考えております。

《再質問》

 一方で、令和3年度新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業の医療分による支援のうち、病床確保料の一部は医療従事者に対して処遇改善を行うために用いることとすると、なっているようでございますが、県立病院では、こうした対応はどのようになっているのでしょうか。

3 本県における食品ロスの現状と課題について

 次に、本県における「食品ロス」の現状と課題についてお伺いいたします。

 実はこの質問は、昨年お預かりいたしましたインターン生2名が農学部の学生ということもあって、意見交換する中でお尋ねをする予定だったのですが、時間切れで質問できずに、一年後の今日になってしまったものでございます。今年のインターン生も「環境」という切り口で、地球の未来を考えたいという思いを持っていると聞きましたので、改めてお伺いすることと致した次第でございます。

 昨年だったと記憶いたしておりますが、NHKスペシャルでSDGsキャンペーンとして「2030未来への分岐点」という番組が放映されました。

1回目が「暴走する温暖化“脱炭素”への挑戦」

2回目が「飽食の悪夢〜水・食料クライシス〜」

3回目が「プラスチック汚染の脅威 ~新たな社会システムは構築できるか~」の2回目で取り上げられたものです。この番組が伝えた「食品ロスの現状」は、驚くばかりの状況でした。世界の食品ロスは、世界の食糧生産量の3分の1に相当する13億トンが捨てられ、日本でも食べられるのに捨てられるいわゆる「食品ロス」が、2017年度推計値で612万トン、(2019年度推計値で570万トン)捨てられています。これはほぼ東京ドーム5杯分になり、国民一人当たり毎日お茶碗1杯分捨てているそうです。一方世界では、9人に1人が栄養不足で、飢餓による死亡者も増加するばかりだと報告されています。

 さて、こうした状況の中にあって、本県では「第3次山形県循環型社会形成推進計画」が策定されています。これまでも「食品ロスの削減」を「ごみゼロやまがた県民運動」の展開方針の柱に位置付け取組んできていましたが、令和元年10月「食品ロスの削減の推進に関する法律(食品ロス削減推進法)」が施行され、県民運動の更なる強化が求められているものと考えます。

 県では、令和3年度事業として新規に、①協力店と連携したテイクアウトボックスの実証実験 ②高校生を対象とした環境にやさしい料理レシピコンテストの開催 ③専用ウェブページとSNSによる周知啓発などに、取り組まれたものとお聞き致しております。今月初めの山新記事によりますと、「テイクアウトボックス」による残った料理の持ち帰りが、飲食店に好評との報道がございました。

 そこで、本県における「食品ロス」の現状と課題をどのように分析され、今後さらにどのように対応、計画実現を目指すのか、環境エネルギー部長にお伺いいたします。

《答弁:環境エネルギー部長》 

 我が国では、まだ食べることができる食品が生産、製造、販売、消費等の各段階で日常的に廃棄されて大量の食品ロスが発生しており、家計負担や行政経費のほか、エネルギー・労働力等に無駄が生じ、CO2排出量増加にもつながっています。本県も同様の状況です。

 食品ロス発生量については、家庭や事業所のすべての食品廃棄物から食べ残しや売れ残りなどを分類することは不可能なため、政府では一定の推計方法で計算しており、本県でも準じて試算したところ、令和元年度の家庭系食品ロス発生量は約2万4千トンとなり、平成30年度より約1千トン減少したものと捉えております。

 このような状況を踏まえ、県では、より一層の食品ロス削減に向け、県民の更なる意識改革が必要と考え、昨年3月に策定した「第3次山形県循環型社会形成推進計画」を食品ロス削減推進法に基づく「食品ロス削減推進計画」としても位置付け、今年度から取組みを強化しているところです。

 具体的には、飲食店から残った料理を持ち帰るテイクアウトボックスの普及に向け、28店舗で実証実験を行い、お客さんへの勧め方や材質・形状等効果的な活用方法を検証しております。また、食材を無駄なく使う「環境にやさしい料理レシピコンテスト」の対象を次代の担い手となる県内高校生に絞って募集しましたが、過去最高だった昨年度の1.5倍となる199件の応募がありました。さらに、県ホームページに「みんなで減らそう食品ロス!」と銘打った専用ウェブページを開設するとともに、県SNSも活用して情報発信と啓発を行っております。加えて、未利用食品の有効活用を図るため、県庁と庄内総合支庁で初めてのフードドライブを計3回開催し、職員が持ち寄った食品をフードバンク団体に提供しました。また、小盛りメニューの設定や閉店間際の値引き販売等に取り組むもったいない山形協力店の登録数が昨年度末より89店舗増の424店となるなど、県民・事業者の意識は高まってきていると考えられます。

 来年度は、テイクアウトボックスについて、今年度の実証実験結果を踏まえ、協力店を約70店舗に拡大して本格展開を図ります。また、新たにコンビニ・スーパーなどで来店客が商品棚の手前に並べられている販売期限の迫った食品から積極的に選ぶ「てまえどり」の啓発資材を650店舗に配布するとともに、フードバンク団体に委託し、地域や職場でのフードドライブ活動の普及拡大に向けた講演会や研修会を開催することとしております。

 これらの取組みをさらに進め、令和12年度の食品ロス発生量を1万8千トンに削減する目標の実現を目指してまいります。

《質問》

4 小児の新型コロナワクチン接種について

 次に、先週3日の山形新聞に掲載されておりましたが、本県におきましても、5歳~11歳の新型コロナウイルスワクチンの接種が2日から始まったようでございます。この件に関しましては、先月の厚生環境常任委員会で、同僚議員でございます今野議員がお尋ねを致しておりましたが、私からも改めましてお伺いを致しておきたいと思います。

 私自身は、前期高齢者の仲間入りをしていますので、既に3回目のワクチン接種まで終了しております。1,2回目で副反応らしいものは全くなかったのでございますが、先月接種した3回目は、次の日の朝に38度の熱が出て、節々が痛いなどの状況になりました。これが副反応ということなのかと、改めて感じた次第でございます。また、私の妻は、3回とも次の日に熱や倦怠感を感じて、かなりきつそうでした。こうしたことを考えると、5歳~11歳の子供たちにおけるワクチン接種に関して、打つ、打たない、の判断をすることになる保護者の方々のご不安な気持ちはよくわかります。私の所にも、そうした不安を訴えてこられる県民の方がおられます。

 一番は、国内における治験がなく、厚労省のホームページ等におきましても、副反応に関する詳細なデータが少ない、山形県として県民に対する情報提供が少ない、などの事からとても不安なのだとお聞きしています。一方で、学者や医療関係者にも小児のワクチンに警鐘を鳴らす方々がいるわけでございます。そうしたことを踏まえると、これらに関する持っている情報を、副反応等のデータも含め、的確に県民の皆様方にお伝えすることが、重要だと考えるところでございます。小児へのコロナワクチン接種の判断をする保護者への情報提供について、健康福祉部長にお伺いいたします。

《答弁:健康福祉部長》 

 5歳から11歳の小児へのワクチン接種につきましては、確かに国内での治験データはございませんが、諸外国での治験データや接種の実施状況、また、医学の専門家の意見等も踏まえた上で、ワクチンとしての有効性・安全性が認められるとして、政府において1月21日に薬事承認が行われております。

 一方で、現時点で、オミクロン株に対する発症予防効果・重症化予防効果に関するエビデンスが確定的でないということから、接種の「努力義務」は適用されないこととなり、また、日本小児科学会では、保護者による主治医への相談を前提としながらも、基礎疾患のある子どもの重症化を防ぐことが期待されること、また、健康な子どもについては、メリットとデメリットを本人及び保護者が十分に理解した上で、接種を受けられるようにきめ細やかな対応が必要であることなどの見解が示されております。

 こうしたことから、委員ご指摘のとおり、小児のワクチン接種にあたっては、感染症予防の効果と副反応等のリスク双方について、正しい知識を持っていただいた上で、保護者の意思に基づいて接種の判断をしていただくことが重要であると考えております。厚生労働省では、2月上旬から順次、小児接種についてのお知らせのホームページで、5歳から11歳の子どもとその保護者向けの小児用ワクチンの効果や安全性などについて、わかりやすく解説したリーフレットや、保護者向けのワクチンの説明書、また、Q&Aなどを掲載しているほか、副反応に関するデータも同様に公表し、接種の判断の材料になる情報を提供しております。県におきましても、政府で作成したこうした広報資料や国立感染症研究所長へのインタビュー動画を県ホームページに掲載するとともに、県内市町村に対しても様々な媒体を通した周知・広報をお願いしているところです。

 また、小児へのワクチン接種につきましては、小児科医の確保が必要となります。市町村によっては、小児科医の確保が困難なところもございますので、地域によっては、私ども県も調整に入り、広域での接種体制を整えるなど、準備を進めてきたところです。なお、小児用ワクチンは、2月下旬から政府の供給が始まっております。県内の早いところでは3月初め頃から接種が始まっております。昨日までに、県内では3つの自治体で接種が開始されており、今月中旬以降、順次接種が本格化してまいります。

 県としましては、保護者の皆様が、科学的知見に基づく正確な情報をもとに適切に判断していただき、希望する方が安心して接種できるよう、市町村と連携し、情報発信に努めてまいりたいと考えております。

【質問者から教育長への意見】

 一方、保護者の方々のご心配は、ワクチンを打った、打たないについて、学校の中で話題になり、そのことが「いじめ」の原因にならないのか、との意見も届けられました。まさにあってはならないことでありますが、新型コロナウイルス感染症が本県でも確認された当初、「感染したのはあそこの家のだれだれだそうだ」「感染者の家に石が投げられた」「感染後、職場で嫌がらせにあって引っ越した」などの、噂話が絶えなかったことを振り返ると、子どもたちの中で、このことが決して「いじめ」のきっかけになってはならないと強く思うところでございます。教育長におかれましては、こうした保護者のご心配をしっかりと共有頂きまして、年度末、年度初めの行事慌ただしい中にも、緊張感をもって子供たちを導いて頂きますようお願い申し上げます。

《質問》

5 行政デジタル化の推進について(総務部長)

 最後に、行政のデジタル化に向けた取り組みについてお伺いいたします。この件に関しましては、今定例会におきましても、既に何名かの議員から質問があったところでございまして、まさに時代が大きく変化する只中にあるということを、痛感するものでございます。そして、その変革をより加速させる必要が、大きく求められるきっかけの一つが、新型コロナウイルス感染症の拡大であることも事実として受け止めなければならないと思うところでございます。

 さて、少子高齢化によりまして、我が国の労働力人口の減少は加速致しており、この対策として政府が働き方改革を提唱し、実行計画を定めて各種施策を実施するようになりましてから、既に5年が経過いたします。

 この間、労働者、特に若い労働者の意識に大きな変化があり、仕事と家庭生活の両立が可能な環境を整える「ワーク・ライフ・バランス」の推進は、企業が優秀な人材を集めるために必要な要素の一つになっているものと思います。

 民間企業では、WEB会議やリモートワークなど業務のデジタル化を図ることにより、この課題に前向きに対応しているところが多く見受けられます。

 多くの職員で組織される企業体の一つであります「県庁」でも、こうした課題に前向きに取り組み、優秀な人材を確保する必要があると考えます。

 そこで、働き方改革の観点から県庁全体の行政デジタル化に、どのように取り組んでこられたのか、総務部長にお伺い申し上げます。

《答弁:総務部長》 

 質の高い行政サービスを提供するため、県行政のデジタル化を進めることは極めて重要であると認識しております。このため、県では、職員のテレワークやWEB会議などを推進してまいりました。

 働き方改革の視点では、紙中心の業務スタイルを見直し、自席にとらわれないワークスタイルを推進するため、フリーアドレスの実証に取り組み、書類を6割削減するなど、執務環境の改善につなげるとともに、若手職員の意見を取り入れながら、執務時間中はモバイルワークや小規模打合せを行うスペースとして、時間外は業務外の活動スペースとして多目的に利用できるミーティングスペース(「そららぼ」)を、県庁舎16階に整備し、1月下旬から利用を開始しているところです。

 また、WEB会議についても、一人1台パソコンからZOOMへの接続にいち早く取り組み、在宅勤務を含め積極的なモバイルワークの推進により、WEB会議の開催回数は、令和元年度実績の年間319回から令和3年度は1月末現在で既に約7,000回と、20倍以上に拡大しております。

 更には、AIを活用した会議録作成支援システムの導入拡大により、利用回数は、昨年度のおよそ2倍となる374回を数えており、アンケートによれば、作業時間がおよそ半減されたとの評価を得ています。また、パソコン入力の作業を自動化するRPAの導入においては、7割から9割もの作業時間の削減効果がありました。

 令和4年度は、これらの取組みを更に拡充するとともに、デジタル技術をより積極的に導入・活用することで、柔軟で自律性の高い働き方を実現し、生産性の向上に結びつけてまいりたいと考えております。

《再質問》

 私は、ハード面を含めて県庁全体でデジタル社会に対応した県行政事務の基盤づくりを整えることが必要であると考えます。 さらなるデジタル社会の進展が見込まれる中、将来を見据えて、県行政のデジタル化にどのように取り組んでいくべきと考えておられるのか、職員育成の観点も含めて、お伺いいたしたいと思います。

 また、大瀧部長におかれましては、平成31年4月に山形県に来られ、企画振興部長、みらい企画創造部長、令和2年7月からは総務部長と、3年間、山形県のために御尽力を賜りました。人事についてはまだわかりませんが、いずれは総務省に戻られると思います。本省に戻られても引き続き山形県の応援をいただきたいと思っております。

個人的には、昨年の秋に秋田県のご実家でコンバインを運転して稲刈り作業をされているSNSの投稿が、とても身近で親しみ深く心に残っております。地方の時代は、大瀧部長から開かれていくと言っても過言ではないと思います。

 そこで、大瀧部長は、各地の自治体を経験されてこられたと思いますが、山形県の感想や今後に期待することなどについてお伺いできればと思います。

2021年12月定例会◆代表質問◆12月7日

 県政クラブの石黒覚でございます。

 私からも県政クラブを代表致しまして、質問を申し上げたいと存じます。

 さて、師走に入り、間もなく令和3年も残すところ1か月足らずになりました。昨今の異常気象は、本県においても様々な災害、被害をもたらしております。今年は春先の凍霜害、雹害による農産物への被害が130億円を超える、極めて甚大なものになりました。さらには、実りの秋を迎え作柄も良好の中で、コロナ禍の影響による米価下落が明らかになりました。

 また、夏には東京オリンピック・パラリンピックが開催され、コロナ禍という厳しい中でアスリートたちの頑張りが勇気と元気を生み出した一方で、8月には新型コロナウイルス感染者がピークに達し、医療崩壊に近い状況となりました。 

 第6波があることを前提に、これまでの教訓を生かした体制整備を急がなければなりません。こうした極めて厳しい状況を直視し、そこを乗り越え、県民皆様の「命と暮らしを守る」県政運営についてお伺いを致したいと存じます。

《質問》

1 令和4年度予算編成における県政重要課題と方向性について

 最初に、令和4年度予算編成における県政重要課題と方向性についてお伺い致します。去る10月に「令和4年度山形県予算編成方針」並びに「令和4年度県政運営の基本的考え方」が示されました。

 予算編成方針によれば、①「人と自然がいきいきと調和し、真の豊かさと幸せを実感できる山形」の実現に向けた「令和4年度県政運営の基本的考え方」に基づく、ウイズコロナ・ポストコロナの県づくり、②「財政の中期展望」に掲げる財政健全化目標の達成及び中長期的な財政の諸課題への対応、という2つの柱を実現する、と示されております。

 「令和4年度県政運営の基本的考え方」には、「新型コロナの感染拡大が社会経済環境を大きく変え、第4次山形県総合発展計画に掲げた基本目標や政策の柱は、引き続き本県の重要な課題」としつつ、「計画を策定した令和2年3月以上に加速もしくは深掘りすべき分野・施策が明確になった」と示されております。目指す先を①社会のレジリエンス(強靭性)を高める、②分散型社会を先取りする、③SDGs実現に貢献すると打ち出し、施策展開にあたり重視・強化する視点として、①「子育てするなら山形県」の実現、②「健康長寿日本一」の実現、③県民幸せデジタル化、④「1人当たり県民所得」の向上、⑤やまがた強靭化、の5つを掲げています。

 誰の責任でもない訳でありますが、新型コロナウイルス感染症によって拡大したこの2年間の支出は、まぎれもなく今から先の県政運営に必要な予算に想像を超える、多大な影響を及ぼすものと考えられます。そうした点を踏まえると、これまで当たり前に進めてきた施策展開の方法や施策効果を、より科学的根拠に基づき、より緻密に予測し、一つの無駄も出さない覚悟で進めることが求められるものだと認識するところでございます。

 例えば、「子育てするなら山形県」の実現に、〇安心して子育てできる環境の整備、〇質の高い教育環境の整備、〇地域資源を活用した移住・定住の促進、関係人口の拡大など5つの施策が並んでいます。これらの施策は、おそらく、都道府県、市町村のほぼ全てが掲げる施策であり、本県が、一歩抜け出るためには、既成概念や前例にとらわれることなく、柔軟な発想で具体的な事業を考えていく必要があります。

 職員皆様方の意欲を高め、高い能力を最大限引き出しながら、令和4年度当初予算の編成において県政重要課題にどのように取り組んでいかれるのか、知事の考え方について副知事にお伺い致します。

《答弁:副知事》

 令和4年度予算編成における県政重要課題と方向性について、知事に代わって答弁させていただきます。

 今年度は、4月に2度の臨時会を開催するなど、これまで7度にわたる補正予算を編成し、新型コロナの感染拡大防止と地域経済の回復・再生や、春先に発生した凍霜害・雹害、そのほか様々な県政課題への対応に全力で取り組んでまいりました。

 現在、県政が直面する重要課題といたしましては、本県の中長期 的かつ構造的な課題である人口減少、そして、その背景にある若者、 とりわけ若い女性の県外流出、さらには、スタートアップ支援の必 要性や、産業の高付加価値化、デジタル人材の育成などがあります。

 新型コロナの感染拡大と長期化が社会経済環境を大きく変えている中、ウィズコロナの対応として、感染拡大防止と経済活動の両立にしっかりと取り組む必要があります。あわせて、ポストコロナを見据え、デジタル化の動きや地方への関心の高まりなど、本県が持続的に発展・成長していくうえでプラスとなり得る変化を積極的に取り込み、成長の力に変えていくことが重要であると考えております。

 こうした考えのもと、令和4年度の施策展開にあたりましては、先般お示しいたしました「令和4年度県政運営の基本的考え方」に基づき、5つの視点を重視・強化しながら、県民の皆様の声や現場の実情をしっかりとらえた取組みを進めてまいります。

 新年度の予算編成方針におきましては、この5つの視点で新たに取り組む事業について、「施策展開特別枠」を設け、職員の自由な発想を取り入れながら、ウィズコロナ・ポストコロナの県づくりを推進いたします。特別枠を活用した予算要求状況については、現段階において全11事業、要求総額は約9億円であり、いずれもその趣旨を踏まえ、デジタル化や県民所得向上など、県政の重要課題へ対応したものであります。個別事業の内容については、今後の予算編成過程の中で議論を深め、しっかりと磨き上げてまいります。

 令和4年度の県財政を取り巻く環境を展望しますと、社会保障関係経費の増加等に加え、新型コロナの感染拡大が長引いたことや、それに伴う県税収入への影響が不透明であることから、依然として厳しい財政状況が続くものと見込まれます。産業の振興により、県民所得の向上、県内経済の成長につながる好循環を生み出し、県税収入の増加を図っていく一方で、引き続き、事務事業の見直し・改善や行政経費の節減・効率化による徹底した歳出の見直しに取り組むとともに、実質的な県債残高を減少させることにより、持続可能な財政運営に努めてまいります。

 先般、政府が閣議決定した経済対策では、危機管理に万全を期すとともに、ウィズコロナの下で、一日も早く通常に近い社会経済活動の再開を図るとの方針が示されました。本県においても、政府と足並みを揃え、感染拡大リスクを適切に管理しながら、一刻も早い地域経済の回復・再生を実現していかなければなりません。県としましては、「ワクチン・検査パッケージ」をはじめとする政府の経済対策を有効に活用することで、コロナ克服・山形経済再生を実現するとともに、「第4次山形県総合発展計画」に定める基本目標「人と自然がいきいきと調和し、真の豊かさと幸せを実感できる山形」の実現に向けて、県民の皆様お一人おひとりが幸せを実感できるような県づくりを進めてまいります。

《質問》

2 東北公益文科大学公立化に向けた取組みの現状と工程について

 次に、東北公益文科大学公立化に向けた取り組みの現状と工程について、お伺い致します。

 本大学は、2001年4月、21世紀の始まりと共に開学して、我が国初の公益学を専門とする大学として、その歩みをはじめてから、今年でちょうど20年を迎えました。

 これまで、何度となく本大学について質問を申し上げて参りました。昨年の12月定例議会の代表質問でも同じような質問を申し上げたところでございます。本大学の公立化については、今から2年11ヵ月前の1月に、庄内若者定着促進シンポジウムで出された一つの意見から始まったと記憶いたしております。それ以前の大学経営は、人口減少社会に転じた我が国の社会状況や、大学乱立などの状況の中で、学生確保に苦慮する状況でした。しかしながら、経営努力が実を結びはじめ、学生数も定員を上回るようになったタイミングだったと思います。その後2市3町による検討の経過等を踏まえ、昨年の12月定例会での私の質問に対して、総務部長から『東北公益文科大学の将来の在り方につきましては、9月定例会において、少子化が今後一層進むことを踏まえれば、関係者が知恵を持ち寄り、検討を行う時期に来ており、さらなる機能強化や選択肢の一つである公立化も含め、総合的な検討をしっかり前に進めていく旨、知事からお示しをしたところです。この方針を踏まえまして、課題の洗出しなどを進めるとともに、2市3町と検討の視点や項目、進め方等についての協議を、開始をしているところです。検討に当たりましては、本大学が、若者の県内定着を進めていく上でどのような役割を果たしていくべきか、そのためにはどのような在り方が最善なのかという観点から、幅広く検討を進めていく必要があると考えておりますし、その先にある県と2市3町の役割分担や財政負担の在り方などにつきましても、こうした検討の過程において、議論を尽くしていくことになるものと考えております。いずれにいたしましても、本大学が本県の教育研究や人材供給の重要な拠点として、永続的に存続していけるよう、その在り方について、着実に、かつ速やかに検討を進めてまいりたいと考えております。』とのご答弁でございました。またその後行われました知事選におきましては、4選を果たしました吉村知事の県民に示されました政策集の1丁目1番地と言っても過言ではない5つの柱の「1子育てするなら山形県の実現 質の高い教育環境の整備の1番目に 東北公益文科大学の早期公立化と機能強化」が謳われております。

 本大学理事会において歴代副知事が副理事長を務めてこられた経過を踏まえますと、平山雅之副知事の御就任は、新型コロナウイルス感染症などの対応により、少し停滞気味の本大学公立化の議論を加速させる、良いきっかけとなるのではないでしょうか。人口減少、超少子化の進行は待ったなしの状況です。また政府においては、「教育未来創造会議」を設置するとのこと、今日における高等教育機関のあるべき姿が熟議されるものと期待します。本県における高等教育の充実は、50年後、100年後の本県を担う人材を育成するための極めて重大なものと考え、今後の工程を含めどのように進めていかれるのか、総務部長にお伺いいたします。

《答弁:総務部長》

 東北公益文科大学の公立化に向けた取組みにつきましては、県として、これまで様々な機会を通してお示ししてきましたとおり、本大学の関係者が互いに知恵を持ち寄り、その信頼関係のもとで、公立化と機能強化に向けた基本的な考え方について、総合的な検討をしっかりと前に進めていくこととしており、現在においても、その姿勢に変わりはありません。

 具体的な取組みとしまして、昨年度からの議論に引き続き、庄内地域2市3町の実務者との間で、組織体制や財政負担の在り方など、将来にわたって各自治体の運営に大きな影響を及ぼす事項を含めて、公立化と機能強化に向けた基本的な考え方や、県と2市3町との役割分担などについて、継続的な検討を進めているところであります。

 しかしながら、この間においては、新型コロナの相次ぐ感染拡大に伴い、実際に対面で意見交換させていただく機会を設けることが難しい時期が続くなど、当該感染症の度重なる状況変化によって影響を受けておりますが、その中にあっても、一つひとつ丁寧に議論を積み重ねているところであります。

 たとえば、先月11月の、県と2市3町の実務者との協議では、公立大学の運営の実例として、本県が設置している米沢栄養大学や米沢女子短期大学などの現状をお示しするとともに、鳥取県と鳥取市により設置された公立鳥取環境大学について、実際に公設民営型から公立へと移行した先行事例として紹介しております。また、基本的事項である公立大学法人の設立主体のあり方や、法人の組織・運営の手法、財務の仕組みなど、さらには機能強化の視点も含めて幅広く意見交換を行い、県と2市3町との間で、認識の共有を進めたところであります。

 今後につきましても、私立大学が公立化した全国の先行事例を比較、検証を行い、検討の参考にしてまいります。また、幅広く、地方大学の活性化に成功した事例の研究を重ねることも重要と考えております。一例として、本大学開学後の平成16年に、隣県の秋田県が設置した国際教養大学は、少人数かつ英語による授業の徹底や、1年間の海外留学の義務付けなどの取組みで、一時的ブームに留まらず、現在でも全国から多数の優秀な志願者を集めており、こうした特徴的な取組みの検討を進めることなども含めて、公立化と機能強化に向けた理解を深めてまいりたいと考えております。

 このように、まずは関係者との間で、引き続き幅広い視点から、一つひとつ丁寧な議論を積み重ね、基本的な方針を定めることに注力してまいります。本大学が、庄内地域に一層深く、また広く根を張り巡らし、本県全体の教育研究や人材供給における重要な拠点として、ますます発展していけますよう、県と2市3町との信頼関係のもと、公立化と機能強化の在り方などについて、検討を進めてまいります。

《質問》

3 慶應義塾大学先端生命科学研究所の研究成果を活用した産業振興について 

 次に、慶應義塾大学先端生命科学研究所の研究成果を活用した産業振興についてお伺いいたします。

 本研究所は、今ほど申し上げました東北公益文科大学及び大学院の開学と同じ2001年4月に開設され、本年まで20年にわたる研究の蓄積はもちろん、そこからスパイバーに代表されます、多くのベンチャー企業を生み出す原動力として、21世紀の最先端のバイオテクノロジー研究の中心的役割を担っている、本県の誇りとも言うべき学術機関でございます。2021年3月策定の第4次山形県科学技術政策総合指針に示されているとおり、科学技術政策には、研究開発や技術開発の推進、そしてその成果が社会で実装されることにより、県内各地域の特色、強みを活かした産業競争力強化による持続可能な活力ある社会の実現、心の豊かさや質の高い生活を実感できる安全安心な社会の実現、国際的な課題解決のためSDGsの実現などへの貢献が期待されるとあり、基本理念を「イノベーション創出による山形と世界のウェルビーイング【幸福】の実現」としています。

 さて、本県では1999年度から2020年度まで、開設前の施設整備や本研究所が行う教育研究活動に対して、鶴岡市などと共に、全体で185億7,500万円、うち県が107億8,700万円ほどの支援を致しております。その成果は、様々な分野において画期的な実績を積まれているものと認識致しております。本年7月16日には、本研究所の冨田勝所長が、システムバイオロジーの先駆的研究とその産業化による地域振興の業績が評価され「第5回バイオインダストリー大賞」を受賞されました。

 一方、スパイバー社においては、「構造たんぱく質素材の発酵生産設備としては世界最大級」というタイのラヨン工場が完成、本年3月29日に開所式を開催、試運転の後、来春には商業生産を始める予定との報道があります。さらには、アメリカイリノイ州の穀物メジャーの1社と契約したとの報道もあります。

以前の一般質問では、世界的な研究成果から、実用化によって画期的な産業形成へと発展する可能性があることを承知しながらも、これまでの行政的感覚からすると、実用化から生産拡大等においては、民間が進めればよいという程度の取組み姿勢故に、実際に研究開発された地域や国ではないところに生産拠点が築かれるような、不合理がたくさんあったのではないかと指摘させて頂いたこともあります。

そこで、本研究所発のベンチャー企業の動向も含めた本研究所の研究成果を活用した産業振興、その成果と課題、今後の対応について産業労働部長にお伺いいたします。

《答弁:産業労働部長》

 慶應義塾大学先端生命科学研究所では、世界最先端のバイオテクノロジー研究に取り組み、医療、農業・食品、環境など幅広い分野で応用研究を展開し、先導的な研究成果を挙げてきております。県では研究成果から生まれるベンチャー企業や、県内企業との共同研究を地域産業の発展に活かしていきたいと考えています。

 現在、同研究所からは7社のベンチャー企業が誕生し、健康・医療分野で事業化したヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ、構造タンパク質素材の開発を進めるスパイバーなどをはじめ、今年7月には、メタボローム解析の性能向上を図る製品を扱うインセムズテクノロジーズが誕生するなど、着実にその数を増やしてきております。

 また、同研究所と県内企業との共同研究は、ここ10年で庄内地域を中心に170件を超え、最適な熟成期間を探索し開発された生ハムなど、新たな製品の誕生に結びついています。

 この同研究所のメタボローム解析は、様々な分野で活用できる非常に汎用性の高い技術であり、今後、県内企業による一層の活用が期待されるところであります。そこで、県では、鶴岡市、慶應義塾と現行の第5期協定を締結し、今期を「これまでの研究成果の活用により地域産業の振興を加速させる」期間と位置づけ、取組みを進めているところです。

 具体的には、同研究所の研究教育活動への支援により高度な産業人材の育成を図るとともに、新たなベンチャー企業の創出や事業拡大を支援し、地域経済をけん引する企業に発展させることを目指してまいります。

 またさらに、県が設置するコーディネーターにより県内各地の企業と積極的にマッチングを行い、共同研究を支援することで、新たな技術・製品の開発や事業化を推進し、県全域へと波及させていきたいと考えております。

《質問》

4 庄内沖における洋上風力発電の推進について

 次に、庄内沖における洋上風力発電の推進について、お伺い致します。

昨今、毎日のように「気候変動」の話題が世界中で取り上げられ、その影響は、我々の日常生活や経済活動の中でも様々な場面で生じており、その対策は全ての人々に関係する喫緊の課題となっております。

  政府においては、昨年10月に「2050年までに脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言するとともに、2021年4月には、2030年度の新たな温室効果ガス排出削減目標として2013年度比で46%削減する方針を示した。

 ご承知のように、吉村知事におかれましては、政府に先んじて昨年8月6日に開催されましたオンラインによる全国知事会において「ゼロカーボンやまがた2050(ニーゼロゴーゼロ)宣言」をなされました。

こうした中、今年10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画には、再生可能エネルギーに関しては、「主力電源として最優先の原則の下で最大限の導入に取り組む」と明記されており、その中でも洋上風力発電は、再生可能エネルギー主力電源化の切り札として位置付けられております。

本県における洋上風力発電につきましては、遊佐町沖が今年9月、有望区域に選定され一歩前進したところでございます。この遊佐町沖での取組みでは、県による地元関係者等との丁寧な地域協調策の研究・検討に向けた取組みや、多くの事業者が別々に現地調査を行うことでの地元混乱を回避するため県が主導し事業者による共同調査を行ったことが、政府の高い評価を得ていると伺っております。

また、今後は、政府が主宰する法定協議会が設置され、更に検討が進んでいくものと承知致しているところでございます。

加えて、酒田市沖については、今年7月に、政府主導により実施する洋上風力発電調査研究事業の調査海域として選定されており、庄内沖における洋上風力発電の検討に向けた機運がさらに高まっているものと感じております。

こうした取組みを進めていくためには、同じ海域を生活の場とする漁業者との共生に向けた丁寧な調整など、地域と協調しながら進めていくことが重要であると考えます。

これまでも、陸上風力発電など再生可能エネルギーの導入にあたっては、地元住民に対する丁寧な説明が少し欠けていたのではないかと言う声も聞かれており、この洋上風力についても、丁寧な説明と、しっかりとご意見をお聞きする対応が大切だと考えます。

県では、これまで遊佐町沖における洋上風力発電導入に向けた検討をどのように進めてこられたのか、また、酒田市沖についてはどのように進めようと考えているのか、環境エネルギー部長にお尋ねいたします。

《答弁:環境エネルギー部長》

 本県では、平成24年3月に山形県エネルギー戦略を策定し、2030年度までに約100万kWの再生可能エネルギー等の開発目標を掲げ、再エネの導入促進に向け様々な取組みを進めているところです。

 こうした中、洋上風力については、庄内沖の良好な風況や政府の動向も踏まえ、導入に向けた研究・検討を進めているところです。

 具体的には、洋上風力発電事業の検討にあたり、庄内沖の漁業実態調査など、漁業関係者の理解と認識を深めていくことから始め、平成30年度に地域と協調した洋上風力発電のあり方について研究・検討を進める会議を組織しました。この会議には、漁業関係団体を始め、県内産学官金の団体や有識者に参画いただき、研究・検討を進めています。加えて、遊佐町沖での具体的な議論を行う「遊佐沿岸域検討部会」を立ち上げ、遊佐町内全6地区の「まちづくり協議会」の代表者にも入っていただき、協議を進めております。

 さらに、平成30年度から毎年、遊佐町内6地区での地区別住民説明会を開催し、洋上風力発電事業の概要や検討の進捗状況等について説明を行うなど、丁寧に手続きを進めてきたところです。

 こうした手続きを経て、遊佐町沖については、今年9月に政府が促進区域の指定に向けた「有望な区域」と整理し、今後は、法に基づく協議会で事業実施区域や事業者の公募にあたっての留意事項等について検討されることとなります。県としては、これまで地元の皆様と研究・検討を重ねてきた成果を、地元の遊佐町とも協力し、地域の意見としてしっかりと伝えてまいりたいと考えております。

 また、酒田市沖については、昨年度、酒田市からいただいた要望等も踏まえ、今年度から、新たに酒田市沖での洋上風力発電の導入検討に向けて調整を進めており、まずは、漁業者の理解促進を図るため勉強会や公開セミナーを開催したところです。今後は、酒田市沖での具体的な議論を行うための検討部会を立ち上げるとともに、酒田市とも連携し、地元の漁業者や地域住民の理解浸透を図りながら、丁寧に進めてまいりたいと考えております。

5 コロナ後の酒田港活性化の方向について

 酒田港は、約350年前、河村瑞賢が開いた西回り航路の時代、北前船の寄港地として栄え、幾多の困難を経験しながら、ここ10数年で劇的な発展を遂げてきました。2010年には国の重点港湾に選定され、翌2011年には日本海側拠点港に選定されました。2016年には国際コンテナ便が最大で週7便化されました。2017年にはポート オブ ザ イヤー2016に選定され同年初の外航クルーズ船コスタ ネオロマンチカが寄港しました。2018年には外航クルーズ船3隻が寄港し、2019年は何と5隻の外航クルーズ船が寄港し、いよいよ酒田港が外航クルーズ船寄港地として認められました。海外からも高い評価を頂く中で、さらに利用拡大に意気込んでおりましたが、新型コロナウイルス感染症によって、この2年間は港の元気が後退する状況になっております。そこで、コロナ後の酒田港活性化に向けまして、4点お伺いいたします。

《質問》

(1) 取扱貨物の状況及び増加に向けた取組みについて

 まず、取扱貨物の状況等についてお伺いいたします。今さら申し上げるまでもないことでございますが、酒田港の取扱高の52%は酒田共同火力の石炭輸入です。一方、国際コンテナ貨物の主要品目は花王の紙おむつです。少し気になるのは、分類上紙おむつなどが含まれる「その他日用品」が、令和2年の貨物量が令和元年比で20%の減少となっていることです。昨年12月定例会代表質問で石炭火力発電のフェードアウトについてお尋ね致しました。早いものであれからもう1年がたってしまいました。この点につきましては、また別の機会に致しますが、中国を中心に爆発的に拡大した花王の紙おむつにつきましては、花王酒田工場増設を含み、酒田港の国際コンテナ貨物拡大に大きな期待が集まっていたところでございます。以前、中国はいいものをまねて製造することを普通にする国なので、紙おむつも何年かすると、国内品にシフトしかねないことを前提に、市場拡大の取組み強化や国際コンテナ貨物の多品目化などの取組みが急務との、ご提言を申し上げたことがございます。こうした点も含めまして、県では酒田港の取扱貨物の状況についてどう捉えているのか、また酒田港の国際コンテナ貨物量の増加に向けて今後県ではどのように取り組んで行くのか、産業労働部長にお伺いいたします。

《答弁:産業労働部長》

 酒田港における令和2年の取扱全貨物量は、前年比16%減の279万トンとなり、300万トンを割り込んだ状況にあります。その主な要因は、石炭火力発電の稼働率の調整などの影響により、一時的に石炭の輸入量が減少したものとお聞きしております。

 一方、国際コンテナ貨物につきましては、平成29年に過去最多の貨物量を記録して以降減少傾向となり、令和2年は輸出入の合計で前年比14%減の21,879TEUとなっております。その主な要因は、新型コロナの感染拡大に伴う輸出先国の経済事情の変化などの影響により、主要な取扱品目である日用品等の輸出が減少したものとお聞きしております。

 このような主要品目の動向による影響を低減させ、貨物量を確保するためには、取扱貨物の多品目化が必要であると認識しております。そうした視点も踏まえて、県では、これまでも“プロスパーポートさかた”ポートセールス協議会において、関係者と連携しながら、新規荷主の掘り起こし等に取り組んでまいりました。その結果、コロナ禍などの影響を受け貨物量が減少する状況にありながらも、荷主数は増加しているところです。

 今後、酒田港の取扱貨物を増加に転じさせるため、釜山と最短2日でつながる航路や、荷役(にやく)企業によるきめ細かなサービス対応など酒田港利用の利便性をアピールするとともに、県内企業の海外取引や物流の動向を詳細に分析し、酒田港以外の港湾を利用している企業の物流権限を有する担当者に対して、助成制度の活用によるメリットを示しながら酒田港利用を強力に働きかけることにより、取扱貨物の増加と定着を図ってまいります。

《質問》

(2) 外航クルーズ船への取組みについて

 次に、外航クルーズ船への取組みについてお伺いします。新型コロナウイルス感染症が発生した昨年は、外航クルーズ船が酒田港に6回寄港予定でしたが、全て中止となってしまいました。このことは残念ですが、世界中のクルーズ船が全て中止という、やむを得ない事態でございました。先ほども申し上げましたが、2017年にコスタ ネオロマンチカ号が外航クルーズ船として、初めて酒田港に寄港して酒田市を中心に県を挙げての歓迎を申し上げ、次の年には3回、さらに3年目には5回の寄港が実現し、いよいよクルーズ船による観光が本県の目玉になるスタートラインに立ったところでございました。市民、県民の皆様の外国人客を迎える対応が、他の港よりも高い評価を頂き、高校生たちが外国語の勉強も兼ねながら、心豊かな「おもてなし」が芽を出したと、期待を大きくしたところでございました。

 こうした市民、県民に芽生えた港を基点とした、新しい時代の観光誘客に一人一人が積極的に取り組む気運の高まりを、コロナ禍で失うことは極めて残念なことでございます。

 コロナ終息を願いつつ、コロナ後ただちにお迎えできる態勢整備が必要と考えますが、外航クルーズ船を取り巻く状況と、誘致活動を含めた受入再開を見据えた取組みの現状について、観光文化スポーツ部長にお伺いいたします。

《答弁:観光文化スポーツ部長》

 外航クルーズ船は、寄港地を中心に一度に多くの観光客が訪れ、地域での消費が生まれるとともに、外国人観光客との交流が進展するなど、地方創生に大きく寄与するものと考えています。

 外航クルーズ船を取り巻く状況といたしましては、本県では平成29年の初寄港から毎年順調に伸びておりましたが、新型コロナウイルス感染症の影響によって、昨年予定されていた6回の寄港全てが中止となり、それ以降、寄港がない状況となっております。

 外航クルーズ船の運航は、現在、観光客の渡航制限が続いているため、日本においてはできない状況となっております。

 受入再開を見据えた取組みとして、現地での船会社の招請を行っており、本県の魅力ある観光地や感染対策について紹介し、船会社から新たなニーズの聴取なども行いました。この中では、「乗客は、コロナ禍を経て、そこでしか体験できない上質なものを求める傾向が高まっている。出羽三山などの精神文化や山形の多様な食などはさらに魅力的なものになる」等の意見もいただいたところです。

 これまで酒田港は、魅力ある観光資源と官民一体となった山形らしいおもてなしで、船会社や乗客から高い評価を得てきたところでありますので、ポートセールス協議会においてこれを磨き上げるとともに、地域の皆様と一緒にコロナ感染症対策に配慮した山形らしい温かいおもてなしを検討してまいります。今後、再開に向けたセミナーを2月に開催し、地元の機運醸成を図ってまいります。

 県といたしましては、外航クルーズ船の運航や受入に必要なガイドラインの発出を全国の関係自治体等で構成する「全国クルーズ活性化会議」を通じて政府に対し働きかけを行ってきましたが、再開後、ただちに受入ができるよう、今後も、さらに魅力ある観光ルートの提案などポストコロナの受入態勢を確かなものとし、運航再開を見据えた準備を進めてまいります。

《質問》

(3) 基地港湾の指定並びにカーボンニュートラルポートの形成に向けた取組みについて

 次に、洋上風力発電の拠点となる基地港湾の指定並びにカーボンニュートラルポートの形成に向けた取組みについて、お伺いいたします。

 去る6月定例会におきまして、議論になったところでございまして、記憶に新しいところでございます。

 本年6月8日と記憶いたしておりますが、酒田港の基地港湾の指定に向けた取組みが急務であるとの考え方から、酒田市長とともに吉村知事にお会いし、改めて知事と認識を共有させていただきました。

 2050カーボンニュートラルは、言うまでもなく人類の命運をかけた取り組みと言っても過言ではありません。その命運をかけた取り組みの一つが、再生可能エネルギーによる発電です。我が国ではようやく洋上風力発電が注目され、国を挙げて取り組みが始まったものと認識いたすところでございます。コロナ前の年に長崎県五島市の浮体型洋上風力発電の実験を現地調査させて頂いたことがありますが、極めて有力な再生可能エネルギーであることを認識致したところでございます。先に遊佐町沖を含めた洋上風力発電事業の取り組みの現状をお尋ね致しましたが、これらが順調に進行するためには、酒田港が国土交通省から基地港湾の指定を受けることが重要となります。その上で、酒田港が「ゼロカーボンやまがた2050」実現の原動力となり、将来のカーボンニュートラルポート形成を確実なものとしていくため、本県の取組みがどのように進められているのか、県土整備部長にお伺いいたします。

《答弁:県土整備部長》

 1点目の、国土交通大臣による酒田港の基地港湾指定に向けた、本県の取組みについてお答えします。

 洋上風力発電の設備の建設、そして建設した後の運営と維持管理には、拠点となる基地港湾が必要となります。基地港湾が必要となる理由は、発電機を支える支柱等の発電設備が非常に大きくて重いため、頑丈な岸壁と広くて強固な地盤を持つ港湾が、洋上風力発電の設備の建設に必要だからです。

 このため、国土交通大臣による酒田港の基地港湾の指定を目指した県の取組みを二つお答えいたします。

 一つ目は、洋上風力発電の事業実施の可能性の確認であります。県は6月に酒田市と連携会議を立ち上げて、洋上風力発電事業者の事業計画や収支見通しに関するヒアリング等を行っております。

 二つ目は、基地港湾として必要な岸壁や船舶の停泊地、埠頭用地などの様々な港湾施設の規模や配置等の検討です。

 県としましては、これら二つの取組み等を進めることによって、酒田港が国土交通大臣による基地港湾の指定を受けられるよう、取組みを進めてまいります。

 2点目の、将来の酒田港のカーボンニュートラルポート形成に向けた取組みについてお答えします。

 「カーボンニュートラルポート」とは、脱炭素化に配慮した港湾機能の高度化を進め、将来の港湾の産業集積に繋げることを目指す国土交通省の施策です。9月に国土交通省酒田港湾事務所が「酒田港カーボンニュートラルポート検討会」を立ち上げました。この検討会では、国土交通省、県、酒田市、地元企業が連携して将来の酒田港におけるカーボンニュートラルポートのあるべき姿を探るべく、主に二つの取組みを進めております。

 一つ目は、水素等の次世代エネルギーの利活用の実施可能性の追求です。これは、次世代エネルギーに関連する企業と企業の間での密な情報交換を国土交通省が促しているところです。

 二つ目は、港湾施設と一体的に機能する荷役(にやく)機械等の電動化等の、エネルギー効率の向上の検討です。

 県としましては、将来の酒田港のカーボンニュートラルポートの形成に向け、国土交通省を含め、官民の関係者と連携して取り組んでまいります。

《質問》

(4) 鳥海南工業団地に進出予定のバイオマス発電所建設に伴う周辺道路の整備について

 本年4月、カーボンニュートラルポートをめざす酒田港周辺の遊佐町鳥海南工業団地に「鳥海南バイオマス発電所」建設が発表され、東北電力が出資参画するとのことが話題になったところでございます。この発電所は、輸入木質ペレットを主燃料とする施設で、出力規模は5万2,900キロワット、年間推定発電電力量は3億7,000万キロワットアワーのようでございます。

 私には、この発電に使用する木質ペレットが、どの程度の量なのか全く想像もできませんが、かなりの頻度で貨物船が入港し、港から発電所まで相当な台数の大型トラック等で運搬することになるものと想像いたします。この計画がまだ水面下で動き始めた時、港湾道路から国道7号を経由して工場に燃料運搬するルートの道路改良が必要との要望を受けたことがございます。今回の計画では、周辺道路の整備が必要なのか否か、必要であるとするとどのような整備で、工期は発電所稼働に間に合うのか、県土整備部長にお伺いいたします。

《答弁:県土整備部長》

 3点目のバイオマス発電所建設に伴う周辺道路の整備のご質問についてお答えします。

 本件については、すでに、県の工業団地の所管部局を通じて、燃料となる木質ペレットの酒田港から鳥海南工業団地までのトラックによる輸送計画の概要を把握しているところです。

 この内容は、例えば、バイオマス発電で使用する燃料である木質ペレットを酒田港から荷揚げして臨港道路、国道7号、県道 比子(ひこ)八幡(やわた)線を経由して鳥海南工業団地に輸送するルートの計画や、概ねのトラックの規格や台数などです。

 輸送ルートのうち、港湾管理者である県が管理する、酒田港から国道7号までの区間の臨港道路 大浜(おおはま)(みや)(うみ)線については、平成9年度までに4車線に拡幅し、国道7号には立体交差で接続して供用しております。

 道路管理者としては、その先の国道7号から県道 比子八幡(ひこやわた)線を通じて鳥海南工業団地への輸送ルートにおいて、燃料を運ぶ大型のトラックが走行することによる道路利用者への影響を検証する必要があると考えております。

 今後、燃料を運ぶ大型のトラックの走行時間帯など、詳細な輸送計画を確認しながら、国道7号の道路管理者である国土交通省と県道 比子(ひこ)八幡(やわた)線の道路管理者である県が対応方針を協議したうえで、関係機関を含めて、整備の必要性などを検討してまいります。

《質問》

6 コロナ禍がもたらした子どもたちの心への影響について

 最後に、コロナ禍がもたらした子どもたちの心への影響について、お伺いいたします。

 去る11月2日政府は「2021年版自殺対策白書」を閣議決定しました。その中で、2020年は児童・生徒の自殺者が499人で過去最多となったとあります。

 また、10月13日に文部科学省が、2020年度の児童生徒の問題行動・不登校等調査を公表しました。全国的な傾向として、パソコンやスマートフォンなどによる誹謗中傷といった「ネットいじめ」の認知件数が1万8,870件と過去最多。「GIGAスクール構想」で児童に一人1台配布されたタブレット端末のチャット機能を悪用したいじめも確認されており、対策が急務としています。また、小中学校の不登校児童生徒数は19万6,127人と過去最多とあります。

 さて、本県におきましては、小学校1万363件、中学校1773件、高校263件、特別支援学校46件、いじめの千人当たりの認知件数が114人で全国最多になったようです。全国最多と聞きますと残念ではありますが、県教委が述べておられるとおり「独自の調査などで行為の大小に関わらずに対応している」ことは、むしろ評価できるものと考えます。事実を明らかにした上で、しっかりとした対応、対策を講じることが重要であることは、言うまでもないところでございます。また自殺については、児童生徒の統計数字として認知できませんが、酒田市の中学生のことが、とても悲しく残念でなりません。改めましてご冥福をお祈り申し上げたいと存じます。

 県教委では、コロナ禍がもたらした子どもたちの心への影響をどのように分析され、今後どのような対応が必要と考えておられるのか、教育長にお伺いいたしたいと思います。

 また、一方で、コロナのプラス面の影響もあります。例えば、リモート授業が可能となる態勢整備が進み、不登校の児童生徒がリモート授業によって、前向きに学習に取り組めるようになれた、という話を聞くことがあります。この例については、リモート授業が受けられるので学校には行かなくていい、ということではないと思いますが、社会が大きく変化する中で、教育も急激な時代の変化を的確に捉え、対応していくべきと考えます。コロナの感染状況に関わらず、プラス思考で、整いつつあるリモート授業システムを活用し、不登校児童生徒の学習意欲向上を図り、学校に通うことも含め、社会的自立に向けた支援の一助とすることも必要ではないかと、思うところでございますが、教育長にお考えをお伺いいたします。

《答弁:教育長》

 最初に、亡くなられた生徒の方のご冥福を心よりお祈りいたします。

 コロナ禍では、全ての児童生徒が何らかのストレスを抱えていると捉え、一人ひとりを注意深く見守り、対応する必要があると考えています。このため、昨年の一斉臨時休業後から、小中学生を対象に心のケア等に関する調査を定期的に実施しております。それによると登校再開直後は、小学校では友人関係に関する相談が多く、時間の経過とともにいじめに関する相談が増えました。中学校では、学校生活に加え、学習や進路に関する相談が多くなっております。

 このことは、県独自のいじめ調査にも表れており、今年度、小学校は認知件数が増え、特に低学年で顕著でありました。その他、いわゆる「ネットいじめ」にも注意していく必要があると考えております。低学年の児童については、ストレスや不安がいじめに直結する傾向が見られることから、子ども同士のふれあいを大切にするため可能な限り体験的な活動や行事等の機会を確保するように努めております。中高生につきましては、未然防止に向けた生徒会による主体的な取組み等もありいじめが減少しておりますが、悩みや不安が内在化していないか丁寧に対応する必要があると考えております。

 これらを踏まえ、県教育委員会としましては、スクールカウンセラー等の活用に加え、児童生徒の発する小さなサインを見落とさないよう、市町村教育委員会とも連携しながら、引き続き、チェックリストやアンケートを活用した、悩みや不安の早期発見と解消に向けた取組みをより一層丁寧に進めてまいりたいと考えております。 一方、コロナ禍によりGIGAスクール構想が前倒しされ、1人1台端末の整備等が進み、不登校や保健室等の別室に登校している児童生徒に、授業の様子を配信するといった、オンラインを活用した対応も行われ始めております。そうしたことによって、子どもたちは、教室の様子を感じることができ、少しずつ教室に足が向くようになってきたという報告も受けております。今後、このようなICTの効果的な活用により、個別最適な学びを一層推進し、児童生徒一人ひとりを大切にした指導を一層充実させてまいります。